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「情報を記録する装置」としてEvernote

倉下忠憲
以前のエントリーで「Evernoteってすごい」と感じる理由をいくつか書きました。その中の一つとして、さまざまな使い方ができることをあげたわけですが、それが逆に「どう使ったらいいのか」という疑問を作り出してしまうのも確かです。

北真也さんの『EVERNOTE情報整理術』にある「Evernote達人インタビュー」を見れば、シゴタノ!を執筆されている方々が多様な捉え方で、Evernoteを利用しているのを発見できます。おそらくノートやノートブックの数だけではなく、どのような情報を入れているのかについても大きく違うはずです。

ただし、まったく共通点がないかというと、そうでもなさそうです。おそらくは「情報を記録する装置」としてEvernoteを使っている、というのがポイントになりそうです。

今回はその「情報を記録する装置」としての機能を担うEvernote以外のツール、つまりノートや情報カードについて考えてみることにします。


ノートの自由度

一冊の大学ノートを想像してみましょう。買ったばかりの新品のノートです。そのノートは大学ノートという分類ですが、もちろん大学の講義以外にも使う事ができます。

例えばどのような使い方があるでしょうか。

議事録、業務日報、タスク管理、読書記録、日記帳、家計簿、写真アルバム、などさまざまな使い方が考えられます。小説を書くことだってできますし、スケッチブックとして使う事もできます。

これは別段珍しい使い方ではないでしょう。日常的にいろいろなノートの使われ方を目にしていると思います。

ちなみに、ある種の機能に特化したノートは、その用途においては便利に使えますが、それ以外の用途には使えません。それぞれの使い方にたいしてとびきり便利ではないものの、使い方に制限がないというのが普通のノートの魅力です。このあたりにEvernoteと共通する点がありそうです。

その普通のノートの使い方に「べき論」は存在しません。どんな使い方をしてもまったく自由です。ただし、こういう使い方をするならば、こういう工夫ができる、というノート術は存在します。

情報カードの自由度

『知的生産の技術』の中で、梅棹忠夫氏が情報カードを使ったシステムについて、次のように書かれています。

知的生産の技術としてのカード・システムは、さまざまな場面で、さまざまな方法で、つかうことができるだろう。研究の過程も、結果も、着想も、計画も、会合の記録も、講義や講演の草稿も、知人の住所録も、自分の著作目録も、図書や物品の貸出票も、読書の記録も、かきぬきも、全部おなじ型のカードでいける。

一枚のカードというフレームに情報を書き込む事で、それをデータベース化できるのがカード・システムの魅力ですが、単に情報収集だけではなく、上に引用したような使い方もできます。

研究日誌(業務日誌)を書き綴ったり、住所録を構築したり、出費記録を残していくこともできます。

結局の所、ノートと同じように、「何を書かなければならないか」という「べき論」は存在しません。

ただ、使い方として共通しているのが、「情報」を「記録」している事です。

「記録」すること

そもそもノートにせよ、情報カードにせよ、一体何のために使っているのかというと、

「記憶するかわりに記録する」

この一言に尽きます。

もう一度『知的生産の技術』から引けば、

その点、カードはコンピューターににている。コンピューターも、人間のかわりに機械が記憶するのである。たしかに、この二つの「装置」には、どこか共通点がある。どちらも、知的生産の道具としては、いわば「忘却の装置」である。

とあります。

「忘却の装置」とは、「忘れても大丈夫なようにする装置」です。もう少し言えば「人間は基本的に忘れっぽい」という事を前提とした装置です。

記憶というのは本当に不確かで、完璧に信頼できるシステムとはいえません。その不確かな脳の記憶に留めておかずに、外部に記録すること。これがノートや情報カード、そしてEvernoteに共通する機能です。

そのような外部に記録を置いておかないと、私たちの脳はいろいろなものを失い続けていきます。

「情報」とは何か?

では、その失い続けている「いろいろなもの」とは何かと言うと、それが「情報」です。

この場合の情報とは、「新聞記事」「雑誌」といった情報ソースと呼ばれる狭い情報だけではありません。誰かの電話番号や住所も情報です。仕事関連の資料も情報ですし、取扱説明書も情報といえます。

自分の頭の中に浮かんできた着想や思考も情報です。あるいは、とある日常の風景とその時感じた感情も対象に入れることができるでしょう。最近では音楽ですらファイル化して情報として扱うことができます。身の回りにはありとあらゆる所に「情報」が存在しています。

そういった広い意味での「情報」を記録しておくというのが、ノートや情報カード、そしてEvernoteの使い方です。もちろん、それぞれに特性があり、得意なもの、不得意なものがって一長一短です。ただし、「情報」を「記録」するという点では共通です。

さいごに

身の回りにあるさまざまな「情報」を、自分の脳で記憶するのではなく、クラウド上にある第二脳たるEvernoteに記録する。こう書くと簡単そうですが、実はいろいろ難しい問題が眠っている事になります。

自分にとっての「情報」とはなんだろうか。「忘れても大丈夫な仕組み」になっているだろうか。そもそもそれらを「記録」していく意味とは何だろうか。そういう事について、すこし考えてみる必要があると思います。

どんな情報を入れるのかによってEvernoteの形というのは変化してきます。そしてそれに正解はありません。ただし、ノートと同じようにある種の使い方においての工夫や便利な方法というのはあります。

この連載でも、そのあたりをアナログツールの対比の中から紹介できたら良いなと考えています。

▼参考文献:

シゴタノ!金曜日の連載をご覧の方は、「あぁ、この人が書いたEvernoteの本だな」ということがすぐにわかる内容です(いろいろ詰まっていて、細かく丁寧な解説ということ)。もちろん、前半のベック君&ラシタさんの絡みなんかはありませんので注意してください。

しつこいぐらいに紹介していますが、何度でも紹介します。Evernoteをぼちぼちと使っている方には、何かしらの示唆がある本だと思います。

▼関連エントリー:

私が感じる、Evernoteというツールのスゴさ 

▼今週の一冊:

これからの時代はどうなっていくのだろうか、を現実に起きているさまざまな変化を土台にしながら、鮮やかに提示した一冊。マスが有効に機能しなくなった世界で、どのような情報発信や在り方が効果的なのかを考えるために有用なヒントがちりばめられています。


▼編集後記:
倉下忠憲
 休みというのは大切だなと近頃痛感しております。

連日仕事をしていても、仕事をしているときには特に違和感を感じないのですが、一度休んでみると「大いに」疲れていたことに気がつきます。ペース配分を自分で決める必要がある状態にいるので、ガチガチにならないようにタスク配分していくのが当面の課題です。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。

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» 集めただけで終わらせない!Evernote情報活用術 Part 2