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トップ > シゴタノ! > 概念構築について | Aliice pentagram




倉下忠憲

» 前回:要素を入れ替えること | Aliice pentagram



前回までで、知的生産の五芒星における「情報摂取」「記録管理」「知的作用」の3つが紹介できました。今回は4つ目の「概念構築」です。

前回までで膨らませていったものに、一定の方向性を与えるのがこのプロセスとなります。

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知的生産のベクトル

まず確認しておきましょう。知的生産とは、

頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら──情報──を、ひとにわかるかたちで提出すること
『知的生産の技術』(梅棹忠夫)

です。情報の向きを矢印で表現すれば、最初は内側に向かっていた矢印を、最終的には外側に向ける行為が知的生産なのです。

これまで紹介してきた「情報摂取」「記録管理」は、完全に内向きの矢印でした。中間地点にあたる「知的作用」に関しては、半分が内向きで、もう半分が外向きです。なぜでしょうか。皆さんも少なからずの経験があると思いますが、アイデアがいろいろ膨らんでくると、「誰かに言いたくなってくる」のです。ねえねえ、ちょっと聞いてよ、と。

むしろ、そのようなベクトルが一切生じないままに行われる知的生産は苦痛でしかないでしょう。誰かに知らせたい、という情動こそが知的生産活動の(後半の)エネルギー源となります(※)。そして、そのベクトルに乗る形で行われるのが、後半の「概念構築」と「表現制御」です。
※前半は、知的好奇心及び知的遊戯心でしょう。

この二つの行為は、外向きの矢印を持っています。もし誰にも伝えないのであれば、アイデアを綺麗にまとめる必要はありません。発展したアイデアをそのままにしておき、「なんとなくわかった」状態でいれば十分でしょう。もちろん、どんな風に伝えるのか(表現するのか)を悩む必要もなくなります。

つまり、「知的作用」の後半と、「概念構築」&「表現制御」が、知的生産の〈生産〉の部分を担当していると言って過言ではありません。アイデアを広げて遊んでいるだけでは、知的生産ではないのです。

なぜ概念構築か

では、なぜ「概念構築」を行うのでしょうか。もちろん、アイデアを「ひとにわかるかたち」に整えるためです。

私は最近「情報カード」をたくさん書いています。これは「頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら」を生み出す行為です。しかし、そのカードの束をポンっと渡して、「わかりました?」と聞いても、望む答えは返ってこないでしょう。「ひとにわかるかたち」にはなっていないのです。

この「ひとにわかるかたち」には、内容と形式(あるいは表現)の二つの種類があります。「概念構築」が担当するのが内容であり、「表現制御」が担当するのが形式です。もちろん、これほど綺麗に切り分けられるわけではありませんが、概ねはこの理解で良いでしょう。

この二つの行為によって、〈頭をはたらかせて〉生み出した〈なにかあたらしいことがら〉を、〈ひとにわかるかたち〉に整えていくのです。

概念構築とは何か

ということを考えた上で、「概念構築」とは何かを考えます。定義を後から持ってくるのは話が逆な気がしますが、むしろその行為の意義を見据えてから定義を決めた方が収まりはよいものです。

「概念構築」(concept making)は、名前通り概念を構築することです。そして、なんのためにそれを行うのかと言えば、〈ひとにわかるかたち〉に整えるためです。逆に言えば、それをする前は、〈頭をはたらかせて〉生み出した〈なにかあたらしいことがら〉は〈ひとにわかるかたち〉にはなっていないのです。

ここで問題になるのは、〈ひとにわかるかたち〉が何を指すのかでしょう。そこで、少し具体例で考えてみます。

たとえば、私は以前「本の買い方・選び方」についてのアイデアを思いつきました。といっても、たいしたものではなく「こういう本の買い方をすればいいんじゃないかな」という小さなアドバイスです。

で、そのアドバイスは複数の文脈を有していました。たとえば、「初心者のための読書術」であったり、「フィルターバブルの破り方」であったりしたわけです。

今、わかりやすいように、「初心者のための読書術」や「フィルターバブルの破り方」のように文脈に名前を与えましたが、実際の私の頭の中では、もちろんそんな形になっているわけではなく、一つの着想が複数の要素とリンクしているような感覚がしていただけです。

その「複数の要素とリンクしているような」感覚を、そのままアウトプットとして出すことはできませんし、仮にできたとしても他の人がそれで「わかる」かと言えば怪しいでしょう。だから、〈ひとにわかるかたち〉に整える必要があるわけです。

そして、まさに先ほど例に挙げた「初心者のための読書術」や「フィルターバブルの破り方」という言い方は、〈ひとにわかるかたち〉になっています。少なくとも、私の頭の中にある乱雑なリンクよりも、はるかにわかりやすいはずです。

つまり、「初心者のための読書術」や「フィルターバブルの破り方」こそが、概念(concept)というわけです。さまざまに発展したアイデアを、一つの大きな文脈に位置づけたり、織り込んだり、並べたりして整えることが「概念構築」であり、その目的は〈ひとにわかるかたち〉にすることにあります。

さいごに

今回は、4つ目にあたる「概念構築」について紹介してみました。内容的にも後半戦の匂いが漂ってきますね。実際、この行為はアウトプット生成に直接的に関わってきます。概念構築が得意な人は、アウトプット作りにも適性があると言えそうです。

次回は、もう少しこの「概念構築」を深掘りしてみます。

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▼編集後記:
倉下忠憲



現在は「かーそる」の第二号制作に入っております。制作+編集、というところでしょうか。またまたハイボリュームな雑誌になりそうな予感で、うまく行けば5月には発売できる……かもしれません。ご期待ください。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。



▼「R25世代の知的生産」の新着エントリー

» 「R25世代の知的生産」の記事一覧

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06月10日(土) 新しいプロジェクトをサッと始めて着実に進める方法

タスクカフェ
今回のテーマは、

新しいプロジェクトをサッと始めて着実に進める方法

です。

前回に引き続き、プロジェクト管理について掘り下げます。
前回の続きですが、今回初めて参加する方にも優しく解説します。

タスクカフェ講師の1人、佐々木正悟はこれまでに50冊以上の書籍を執筆していますが、一度たりとも原稿を落としたことがないと言います。つまり、締切に遅れることなく、1冊分の原稿を仕上げているのです。

これは、たとえて言うなら卒業論文を50回連続で期限までに提出しているようなものです。

書籍の執筆という仕事は、一冊ごとにそれぞれにテーマも背景も事情も異なる、言わば定型化しにくいプロジェクトです。もちろん、50回も繰り返していれば、その勘所は押さえられるがゆえに、初めて本を書くという人に比べて圧倒的に効率よくスピーディーに進められるということはあるでしょう。

それでも、佐々木にも1冊目の本の執筆という機会があったはずです。そこからいかにして「今」に至ったのか? これまでの経緯をひもときながら、新しいプロジェクトをサッと始めたうえで、これを着実に進めていく方法をお伝えします。

特に、見通しの立ちにくい仕事になかなか着手できずにお困りの方はぜひご参加ください。

好評いただいている個別相談の時間もご用意していますので、知識としては理解できているとは思うものの、なかなか実践に結びつけられず苦戦している、という方は、ぜひこの機会にブースターとしてご活用ください。


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