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時間の上手な使い方は、シミュレーションしないと見えてこない



佐々木正悟 認知心理学の実験などに、いかにも認知的なゲームを用いることがよくあります。たとえば「テトリス」などがそうです。

スキマなく並んだ行は消すことができるけれど、そうでないとブロックがどんどん積み上がっていき、やがてゲームオーバーを迎える積み上げ式のパズルゲームです。

私はテトリスが大好きで、たった一度だけ、ゲームセンターでカウンターストップまで行ったことがありますが、それが「テトリス」でした。

ゲームのレベルが最高の難易度まで到達すると、一瞬で下までブロックが落ちてくる感じになるので、「3回転させつつ、右から3番目の端にオレンジのブロックを差す」などという判断を、0.2秒くらいで終わらせなければならなくなります。でもそれも「ロボット」のおかげでそう苦もなくやれるようにはなるのです。

シミュレーションとは「無駄な動き」

こうした熟達者は機械のように正確で、無駄な動きをせずにゲームを行っているのだろうか。実はそうではない。彼らは無駄な回転をさせたり、必要のない移動をよく行うらしいのだ。

なぜだろう、何の目的があってそんなことをするのだろうか。それは、実際に回転させたピースを見れば、それがどの部分にマッチするかはわかってしまうからである。これはだいたい0.1秒程度でできるらしい。一方、頭の中で仮想的にそのピースを回転させれば、だいたい1秒程度かかるらしい。こんなことをしていれば、ゲームの終盤ではあっという間にピースが上まで積み上がり、ゲームオーバーになってしまう。

そう言われると、確かにそうです。つまり、回転させてみるとか、左右に若干「振って」みることで、「ブロックの置かれるべき位置」がよりわかりやすくなるから、「無駄な動き」をするのです。

この「無駄な動き」こそがシミュレーションです。頭の中でもできるけれど、実際にやってみて、目で見たほうがずっと速い。ゲームは速度を要求されるから、少しでも速いほうを自然と選択するようになるわけです。

もっと具体的に言うと、ゲームセンターの筐体ごとに、使い込まれ方によるボタンやレバーの「クセ」が若干違っていたりするし、回転などの反応までにかかる時間も微妙に違いますから、押してみてどんな感じで回転していくのかを「実地に試してみる」ことも必要だったりします。

「タスクシュートで1日のシミュレーションをする」のも、全く同じ目的です。

つまり、具体的にタスクを「実行してみた結果」を先取りすることによって、そうしたらタスクAをやった後はどうなるか、タスクBをやり終えたらどうなるかを、目で見て確認できます。そうすると、その後にはどんな「タスクがマッチするか」をすばやく、正確に判断できるのです。

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こういうリストがどれほど認知を助けてくれるかは、テトリスのメンタル・ローテーションの比ではありません。頭の中でテトリスのブロックを回転させるくらいであれば、訓練すれば1秒足らずでやれるでしょうが、シゴタノ!を書いてから、住所変更届の処理をして、買い物を終えると何時何分になるかは、かなりの努力をしてみないと、ぜんぜん計測できないものです。

まして、そこに家族からの用事を追加して、代わりに買い物をあきらめ、住所変更届をいつもの80%の時間で終えたらどうなるかを改めて計算し直すなどとなったら、とてもやっていられません。でもタスクシュートはそのどれにも瞬時に答えてくれ、それどころか、そのやり方で12:30のテニスの準備には間に合うか。さらにその後、昼食は何時頃とることになるか。夕食は。お風呂は、などにもリアルタイムで解をはじき出してくれます。

タスクシュートの有無というのは、4桁同士かけ算を暗算でやるのと、電卓を使うくらいの差があります。ものすごくがんばれば、4桁同士のかけ算を暗算ですることだって可能でしょうが、電卓があるならそうする意味はほぼありません。

白紙に、最初からいきなり「正しいスケジュールの答え」を出そうというのは、4桁同士のかけ算を、筆算もせず、右から答えを書けというようなものです。特殊な能力を持つ人でない限り、そんなことはできないでしょう。ああでもない、こうでもないといじくり回してみて、想像ではなく目で見ているうちに、「これならいけるし、これだけはやりたい」というしっくりくる「答え」が見つかるのです。

これをまず見つけるのが、時間管理において必須なのです。