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やる気を思い出すための仕事日記

By: Shane AdamsCC BY 2.0


佐々木正悟 人は、忘れる生き物です。

大事なことは忘れない、という人もいますが、人間の記憶の性質から考えると、やや疑わしい言い方です。もちろん、そう言っている本人の意見は、尊重するべきでしょうが。

いずれにせよ、多くの人は忘れます。だからこそ、目標の達成とか、期限内に仕事を済ませるのは、難しいのです。

たとえば、締め切りをきちんと守り、本を出す。
本を出したい人にしてみれば、そんなこと簡単にできそうです。
本が出せるなら、すべてを優先して、本を書くに決まっている。

そういう人に私は何度かであってきましたが、そのうち九割は、途中で本を書くことなど、やめてしまいました。

なぜなら、最初に考えたこと、決めたときの感情を、忘れてしまうからです。

忘れるのはコンテクストが変わるから

記憶の状況依存効果というものがあります。いろんな面白い実験が為されているのですが、たとえば、バンジージャンプをさせられるときに、複雑な足し算をさせられたりします(できない人もいるんじゃないかという気もしますが)。

その人は、一年もすれば、複雑な計算をしたこともその中身も、すっかり忘れてしまいます。

しかし、再びバンジージャンプをすると、その時の計算内容を、すっかり思い出したりできるのです。

なぜ私たちが年初の計画を完遂できないのか、これでわかります。年初は、年に1度しかないからです。年初の計画を思い出すのは、翌年の年初、ということになるわけです。

忘れないためには

忘れないためには、コンテクストを変えなければいいのです。すなわち、毎日一月一日のカレンダーにするとか、夢を叶えることを決意したセミナー会場を出ずに、ずっと会場にいたまま実作業を開始するとか。

しかしそういうのは現実的ではない。または、効果がない。

残るは、変わらないコンテクストに依存する方法でしょう。

使うツールを変えないとか、作業場を変えないということです。

おそらく、夢を叶えるために日記というツールが役立つというのも、このような理由からでしょう。

夢のこと、計画のことを思い出すために、同一のコンテクストに依存するわけです。

私の仕事でいえば、ほとんど経験はありませんが「カンヅメ」で仕事にかかりっきりになる、というのはそういうやり方です。冒頭の非現実的な「セミナー会場から出ない」のと似たような方法です。

仕事をどうしても終わらせたい人が、好きでやってるわけではないにせよ、なかなか会社から出たがらず、終電ギリギリまでオフィスにいるのも、コンテクストを変えないという意味があるのでしょう。

タスクシュートを使って「今やっていることは何か?」「今日はあとどのくらいの時間があるか?」を耐えず意識しながら仕事を進めるというのも、やはり同じ目的のためです。

コンテクストを変化させないためです。

生きていれば、場所、関わる人、気分、気候などのコンテクストはどんどん変化します。時には数分おきに変化します。そのたびに、私たちは、何を重視するか、何をするべきか、どんな気分か、何に緊急度を感じるかなどが無意識のうちに変化し、無意識の中で記憶の内容が書き換わります

それを全部成り行き任せ、無意識任せにしたまま仕事をしていたら、重要な仕事を終わらせるつもりでいながら、何もしないまま数時間を、時には数日を過ごすことになりかねないのです。

だから、大事な仕事や、どうしてもやりたいことを決意するときには、いつ、どこでそれをするかに十分注意します。そして、どんなツール、または何のノートにそういう決意を書くのかも、慎重に決定する必要があるわけです。