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クリエイターの新しい仕事術



佐々木正悟 先日、こちらのセミナーにお邪魔してきました。

漫画を描いて電子書籍を出版したい人へ ~「あたらしいマンガ道」を開催します! | 2020年に人気漫画家になるまでの軌跡


懇親会にも行きました。大変楽しかったです。この場を借りてお礼申し上げます。

さて、表題です。

「創作者として、フリーとして生きる」ということ

藤子不二雄さんの『まんが道』にはどこか、漫画家の話というよりは、修行僧みたいな様相があります。

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個人的に、「創作者として、フリーとして生きる」ことを志す人は、このまんがは必読書だと思っています。思ってはいますが、正直、「ここまで大変なものなのか…自分にはとうていムリだ」と思うくらいなら、読まない方がいいのでは、とも思うのです。

何事にも、程度というものがあります。何でもかんでも大変だ深刻だ命を賭けねば…と思えばいいというモノではないという気がします。

実際『まんが道』くらいの思いをしなければフリーランスとして生きていけないというならば、自分なんかはとっくに死んでいます。

しかし、同時にツッコミも入ります。イヤおまえは物書きだから、生きていけるんだ。漫画家はつらいぞ…(物書きの人ごめんなさい)。

というわけでちょっと「あたらしいマンガ道」には興味があったのです。どんだけつらいのか。どんだけムリをしているのか。それを実際、どうしているのか?

タスクシューターで、クリエイター

セミナー全体は、「絵がまるで描けない」私にはまったく向かないものでしたが、「どれだけムリをしないとならないのか?」に対しては、かなり突っ込んだ答えが得られました。

私は特に主催者の一人だったぞえさんの方法論に感銘を受けました。その理由の1つとして、ぞえさんが完全にタスクシューターだったからです。



タスクシューターが「クリエイター」として仕事を進めるとき、どんな「秘術」がそこにあるのか。

答えは、他のタスクシューターとまったく同じ、でした。

ココにポイントがあります。

ぞえさんはまるで、大橋悦夫さんのように、作画という仕事を一種のルーチンワークにしてしまい、あたかもチェックリストをチェックしていくかのように、見積もった時間の中で、高速に「処理」していっていました。

「それで絵が描けるのか?」という疑問がわいたなら、タスクシュートというものへの理解が不十分です。

「絵を描く」ということもまた、まぎれもなく「ロボット」の統合的な作業です。どんな活動も、突き詰めればそうなのです。身体を、手や腕を、脳の記憶を刺激して、パターンに沿って動かすのです。テニス、スキー、運転、そして文筆。すべて同じです。

パターン化すれば、見積もり時間どおりに仕事が本当に終わるか?という疑問が、特に創作となると、すぐに発されます。終わることもあれば、終わらないこともあります。今日はとにかく15分だけということもあれば、つい1時間やってしまう、ということもあるでしょう。

ある行動は、直前の行動と、直後の行動の間の時間に行われます。その行動に費やした時間次第で、他の行動に費やすことのできる時間が、短くなったり長くなったりします。それによって食事を急いだり、早く寝たり、たくさん寝たり、お風呂で少しゆっくりしたり、ドライヤーで急いで髪を乾かしたり、様々な行動の変化が生じるでしょう。

そのうちのいくつかの変化が、特定の行動を取るための「ロボット」操作に、影響を与えます。漫画家であれば、作画に影響を与えるわけです。これは、睡眠不足のおかげで、運転中眠くなったりするのと基本的には同じことです。

そんな数多くの行動の、相互の影響すべてについて、完全に予測し、最適な結果だけを得るのは、非常に困難です。しかしながら、そのような1日の活動の大半は、同じような時間帯に何度も繰り返してきたものであるため、朝食はふつう、朝に食べるように、ふつうに実行する限り、予測可能な範囲内に収まるはずです。

さらに、そのすべての制御を補助するためのツール、すなわちタスクシュートを使うことで、特定の作業に関する「ロボット」、繰り返し作業を司る記憶のパターンを、よりよい状態で活用することが可能になります。

もっとも運転しやすい時間帯に、なるべくベストコンディションで、しかも前回より上手に運転しようとして、運転ノートなどを生かせば、運転はいまよりきっとうまくなります。

好きなことを嫌いにならない方法

毎日を可能な限りその方向へ向けてデザインし、しかもなるべく毎日特定の「ロボット」を、適切な時間の長さで、正確に予測しつつ、支障なく使い続けていけば、「まんが道」にある苦行のような活動も、耐えやすい身体操作に変えていくことができるということです。

ぞえさんが紹介してくれたような、高機能のタブレット機やアプリの助けがあれば、特定の「ロボット」をむしろ使わなくてすむので、ますます苦行的要素を遠ざけることができるわけです。

ぞえさんは「ペン入れがしたくて、漫画を描いているわけではないので」と説明してました。幅寄せがしたくて、運転しているわけではないということです。運転はしたくても、渋滞に巻き込まれたくはない、といってもいいでしょう。

もちろん、運転に渋滞も幅寄せもつきものですが、技術の進歩次第では、将来はどちらも運転と無縁になります。そうしたら、運転はしたいけど・・・という人も、ますます運転好きになれるはずです。

まんがを描くすべての人がこのように考えるかどうかは、私にはわかりません。しかし、こういう人もあり、こういう可能性もあるということは、心強く、私には大いに共感させられるものでした。

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