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好きな仕事ばかりを続けられない理由とその対策



大橋悦夫誰しも、やっていて面白い仕事と、日銭を稼ぐために(ある程度)義務的に取り組んでいる仕事があると思います。

僕自身、フリーランスになってからは、ある程度自分で仕事を選べるようになったため、気の進まない仕事は自然と淘汰されていくようになりました。

そうなると、好きな仕事ばかりが残って、楽しい毎日になりそうです

…が、意外とそうでもありません。

クラス替えをしても、必ず一人や二人「イヤなヤツ」というのはいるもので、クラス全員と仲よし、ということはなかなかないのと同じように、「楽しい仕事」ばかりを残したつもりでも、その中で相対的に「他と比べると楽しさの少ない仕事」というものが、“悪役”になってしまいます。

ところが、そういう“悪役”と取っ組み合っている間にこそ、多くの得るものがあります。

その仕事を通して、悩んだり、無理をしたり、背中を押されるように新しいことに挑戦したりすることによって、他の「楽しい仕事」をより楽しくするためのヒントやアイデアやエネルギーが得られるのです。

そういう意味では、気の進まない仕事は「楽しい仕事にたどり着くうえで避けて通れないプロセスなのだ」と言えるかもしれません。

気の進まない仕事にいかに取り組むかを考え続けざるを得ない仕組みが、あらゆる仕事に“ビルトイン”されている。

そうであるなら、この仕組みに対抗する術をどうにかして身につけるしかありません。

確率通りの作業を淡々と続ける

もうかなり古くから愛読しているメルマガ「えのさんのeの素」(※)に以下のような記事があったのをEvernoteの関連ノートに教えてもらいました。

» 「目的は勝つこと? 面白いこと?」

 プロギャンブラーの強さの秘密は、まずは努力して技術を磨くことだが、もっと大切なことは、弱い相手を選んでやることだそうだ。

 まあじゃんで常勝の人がいた。その人は、ひたすら初心者を集めて、低いレートで打っていた。ブラックジャックのプロもただひたすら確率通りの作業を続けるだけと言っている。ポーカーのプロもおいしいお客がいるテーブルかどうかが重要だと言っている。

 結局、私はプロではなかった。面白いギャンブルを嗜好してきたし、強い相手を負かしたかった。経営も同じで、確実に弱い相手と戦う土俵を飽きずに選び続ける会社が勝つ。

面白そうな事業は、やはり儲からない。どんな仕事でも面白くできることこそ本流なのだろう。

※このメルマガは現在休刊中。

プロだからといって、何か特別な必勝法を持っているわけではなく、地味ながらも着実に勝てる手順を習慣として身につけている。

「持っている」のではなく「身につけている」というところがポイントです。

一夜漬けではないのです。

小さく産んで大きく育てる

テンプスタッフ創業者である篠原欣子(しのはらよしこ)さんは著書『探そう、仕事の、歓びを。』の中で次のように書いています。

人材派遣業という仕事は人を扱うビジネスです。大切なのはコツコツと信頼を築いていくこと。その意昧で、ウルトラCはないのです。

たとえばエレクトロニクスメーカーなら、画期的な新商品を開発して、世界市場を席巻できるかもしれません。そうすれば売り上げは一気に拡大するでしょう。

IT企業ならば、独自の新技術によって、短期間のうちに会社の規模を10倍、100倍にできるかもしれません。

でも、私たちは地道な努力を重ねていくしかないのです。一気に拡大しようとか、汗をかかずに儲けようなんて考えてはダメ。

小さく産んで大きく育てるのです。

会社はまるで子供みたいなもの。

大切なわが子を育てるみたいにして、毎日、毎日、丹念にお世話をし続けたら、いつの間にか大きくなっているものなのです。

確かに時間はかかるかもしれない。

でも、速く成長することが、世間一般で言われているように、そんなにすばらしいことなのかしら、と思います。

私たちの成長は亀の歩みみたいにゆっくりだけど、築いてきた信頼関係は、ちょっとやそっとでは壊れません。このことはテンプスタッフの強みです。

ここでもやはり「持つ」ではなく「身につける」という考え方が息づいていることが窺えます。

まとめ

この2つの例から学べることは、自分にとっての勝ちパターンをいかに早く見つけて、身につけて、これを愚直に繰り返すか、という一点です。

そこに「好き」の入る隙はありません。

参考文献:

自然体でまっすぐな生き方にひたすら心打たれます。



「えのさん」の著書。「事業をつくる」というテーマで、豊富な事例をもとにわかりやすく解説されています。たとえば、作るのは商品でも売るのは商品ではない、という理屈が実によく分ります。



関連エントリー:

自分の中にある「得意」なことが見つかっても、それを仕事にするためには、最後に乗り越えるべき壁があります。

ここで言う壁は、以下のように天から地上に向かって逆方向にそびえており、先端は水に浸かっています。乗り越えるというより、水の中に飛び込み、この壁をくぐって向こう岸に渡る必要があります。


そこで彼女は戦略を変更する。「偏差値40以下の中学生だけを教える家庭教師」を始めたのだ。

彼女が家庭教師を始めた地区は、教育熱心な地域であったため、学習塾も数多くあったが、そのほとんどは勉強のできる子どもを対象とする、有名私学を目指す指導を行っているところばかりであった。彼女はそうした学習塾がまったく相手にしていない、勉強ができないけれど、せめて高校ぐらいは卒業しておきたい、と考える親とその子どもをビジネスの相手としたのである。

しかも彼女は「高校に無事に合格できたら特別ボーナスをいただきます」と成功報酬制の契約を結んだことから、初年度から大きく稼ぐことが可能となった。


フリーランスになって最初にぶつかる壁は、価格設定です。自分の仕事に値段をつけるのですが、いったいいくらに設定すれば適正なのかについて少なからず悩むことになるでしょう。

あまり安い金額にして損をしたくないですし、高くしすぎてまったく売れないのも怖い。

  • 仕事は好きだからどんどんやりたい。
  • でも、値決めは苦手なのでやりたくない。
  • でも、食べていく以上は値決めは避けて通れない。
  • でも、仕事は好きだからどんどんやりたい。
  • でも、値決めは苦手なのでやりたくない。
  • でも、食べていく以上は値決めは避けて通れない。
  • でも…

というループに陥ってしまうのです。


「お客様は神様です」と言いますが、果たしてそうでしょうか。近ごろ、コンビニの前では若者がしゃがみ込んだりして、本当に見苦しいですよね。立ち読みだけで買わないどころか、強盗を企てるようなやからもいる始末です。これではとても神様とは呼べません。

では、どうすればいいのでしょうか。答えは一つ。「買わん客は来んでエエ、行儀の悪い客は店に入れへん」です。


僕はこの部分を「できるだけ多くの時間をできることに注ぎ込む」と解釈しました。言い換えれば、自分にできないことをがんばって身につけるよりも、まず自分にできることで前に進もうとする。もっと言えば、何か新しい技術や能力を身につける前に、今の自分にできることで誰かの役に立てることはないかを探す、ということです。