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場をブレストっぽくするために意識していること

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photo credit: pasukaru76 via photo pin cc

倉下忠憲「三人寄れば文殊の知恵」

という言葉が日本にはあります。なかなか含蓄ある言葉ですね。

たしかに複数人で集まって話をしていると、一人だけでは考えつかなかったようなアイデアが飛び出てくることがあります。ブレインストーミング(ブレスト)などはその典型例ですね。

しかし、単に人数が集まればそれでOKかというと、やはりそうではありません。

「ブレストしようぜ」と集まっても、参加者がブレストの心理様式を持っていなければ実りの少ない集まりになってしまいます。逆に、ブレストの心理様式さえあれば、ごく普通の打ち合わせや会議でも自由闊達にアイデアが飛び交うことでしょう。

参加者の心持ちも含めて場を設定することが、こうした会をデザインする上では大切です。

「ブレストの心理様式」と4つの原則

では、ブレストの心理様式とはどのようなものでしょうか。

言葉で表現すると、

さまざまな可能性を持ったアイデアを受け入れ、
それらを発展・展開させていくことを目指す。

というものです。

表現としては簡単なものですが、実際にこういう心持ちでやってくださいといってもなかなか実現は難しいもの。

そこで、上の心持ちが実現されやすいように「ブレストの四原則」というルールが設定されています。

「ブレストの四原則」

  • 判断・結論を出さない(結論厳禁)
  • 粗野な考えを歓迎する(自由奔放)
  • 量を重視する(質より量)
  • アイディアを結合し発展させる(結合改善)

このルールを意識しておけば、「ブレストの心理様式」に沿った形で発言しやすくなります。いわば慣れるための補助輪のようなものと言えるでしょう。

逆に言えばルールを知っていることそのものが重要ではない、ということです。

実際、ブレストに慣れている人は上のようなルールを暗記しているわけではありません。4つ書き出せといって全て書き出せる人も少ないでしょう。

それに参加者にブレストを知らない人がいた場合、上の四つのルールをまず覚えてもらうとこから始めるのも大変です。ルールに集中しすぎて、肝心のアイデアが出てこなくなることも考えられます。

ルールを使わなくても、「ブレストの心理様式」で場に臨んでもらえればそれで良いわけですから、別の手段を用いることもきっとできるでしょう。

そういった場に臨むときに気をつけていること

私は一つの明確な結論を出す必要がある場、ではなく、ざらっとした「案」を複数人で集まって考える場合、以下のようなことに気をつけています。

軽く始める

「これからの重要な方針に多大なる影響を与える企画について、良いアイデアを皆さんで出してもらいたいと思います」

などと発言して会を始めるのはタブーです。

一見、上のような発言は試合開始の合図である「ファイ!」のかけ声のような気がしますが、実際この手の発言は試合終了のゴングを意味します。

緊張し身構えてしまい、自由なアイデアが出るのを阻害してしまう、ということです。

だいたい「良いアイデアを出してください」と言ってしまえば、その人が「良い」と思っているアイデアしか出てこないことになります。これは視点を狭める効果しかありません。「結果的に案外良かったね」や「予想外に良かったじゃん」が出てこなくなってしまうということです。

「思いつきでいいんで、どんどんください」

ぐらいの感じで始めるのがよいでしょう。

ジョークを飛ばす

「マジメなこと」ばかりが場を飛び交っているならば、ジョークを入れてみるのも効果的です。

場に笑いが生まれれば、発言する人の心理的敷居もぐっと低くなります。

また、笑いを求めるようなネタは突飛なアイデアが多く、その中には時に宝石の原石のようなアイデアが混じっていることもあります。

重苦しい雰囲気にはせず、笑いが絶えないような場にすることができれば、面白いアイデアの発生確率はぐぐんと上昇するでしょう。

積極的に質問する

ある程度「場」がほぐれてきても、発言が止まってしまうことは珍しくありません。

そういう場合には、積極的に「質問」を投げかけることを意識しています。

質問の相手は、特定の誰かであったり、全体であったりと様々です。また質問の形もいろいろ考えられます。

たとえば、

  • 「先ほどのアイデア、もしユーザーが倍になったらどうなりますか?」
  • 「あのアイデア面白いですけど、他に何か使えませんかね?」
  • 「そもそも、なぜこのコンテンツが人気なんでしょうか?」
  • 「最近何か面白い映画見ました?」

というもの。

角度を変えた質問、メタな質問、関係ない話への質問などが、別のアイデアの呼び水になることはよくあります。

さいごに

今回は、アイデアがうまく出てくる場の作り方について少し書いてみました。いや、「場の作り方」と言うと語弊があるかもしれません。

最終的に場を作るのは参加者です。なので、「雰囲気の作り方」ぐらいが適切でしょう。

どれもちょっとしたことですが、「今回の会、なんかグダグダだったね」を避ける手助けになってくれると思います。

▼編集後記:
倉下忠憲



ちょいといろいろありまして、今週は半分以上仕事の時間がとれませんでした。なので「今週の一冊」も今週はお休みです。来週からは復帰できると思うのですが・・・。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。