ある軍需メーカーの例を紹介しましょう。アメリカ空軍用の新兵器を開発することになったのですが、どうにも行き詰まっていました。そのとき、メンバーの1人がメタファーを変えてみようと言い出しました。「いま我々は砂漠の真ん中に立たされている。砂漠には何があるだろう」。
すると続々と声が挙がってきました。「サボテン」「オアシス」「サソリ」……「サイド・ワインダー!」。これはガラガラヘビの一種で、体温を感受して獲物の位置を確認します。
そのとき、ある技術者がひらめきました。「敵機のモーター熱を感知するロボットをつくれないだろうか」。その着想が突破口となり、熱を感知して追跡する対空ミサイルの開発へとつながりました。もちろん、それは「サイド・ワインダー」と名づけられました。
商品名や会社名は実在する物や動物・植物などがシンボライズされていることが多い。そのシンボルが持っている内包を援用することで、名前からイメージを広げてもらい易くなる。
逆に、自分が日々行っていることは既存の何かとその内包をシェアできないかを考えてみると、これにあいのりすることで自己紹介が簡単になるという効果が期待できる。
普段目にしている事物は無数にあるが、いちいちそれぞれの内包にまで降りていくことはほとんどない。そこで、例えば1日に3つだけ、手に取った物やふと思いを馳せた動物について、それが持つ内包を書き出してみる。その中に自分にとってなじみ深い要素があれば、そこから敷延できる余地が生まれる。
例えば、Webブラウザに表示される見た目ではなくそのソースに注目することによって、多彩な見た目はHTMLという一つの原則から派生されたものであることが分かる。そしてこの派生関係という構造もまた1つの内包になりうる。自分の仕事は「ソース」サイドに位置するのか、「見た目」サイドに位置するのか、という問いが思考を前に押し進める。