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言葉をつないでいくだけのワード・オブジェクト発想法



倉下忠憲たとえば、「知的生産の技術について総ざらえしたいな」という企画案を思いついたとしましょう。どう考えても大きなテーマですので、きっちり準備して立ち向かいたいところです。

準備には、いろいろな方法がありますが、そのうちの一つが「アイデア出し」(≒ひとりブレスト)です。

で、このアイデア出しにも、いくつもの方法があるのですが、今回は、私がやっているやり方を紹介してみます。

ワード・オブジェクト発想法

方向性的には、マインドマップの様式に近しいものです。そこに軽めのKJ法エッセンスを加えたものをイメージしてもらうと良いかもしれません。

具体的には以下のような感じです。

言葉を中心にし、周辺に言葉を配置して、それらをリンクで接続していくスタイルです。

まず中心に正方形のブロックを描き、そこにテーマを書き込みます。さらにそのテーマから思いつく要素をブロックの周辺に円形に配置していきます。

これでスタートの準備は整いました。

ワード・リンク

次に言葉から線を延ばします。「この言葉については、他にも何か言えることがあるな」、という場合に短距離の線を延ばし、そこでも同じことをします。つまり、中心にブロックを配置し、そこにテーマを書き込み、その周辺に近しい言葉を並べていく、ということです。



ポイントは、線を延ばすことになった言葉をブロックの中に入れなくてもよい点です。たとえば、「ノウハウ」という言葉から伸ばしたブロックには「法」という言葉が入っています。「ツール」からは、「アナログ」と「デジタル」の2ブロックが生まれています。どちらももともとの言葉と同じではありません。前者は言い換えであり、後者は上位/下位の関係になっています。

よくあるノウハウでは、この関係性が固定されていることが多い(≒同じ言葉を入れるべし、子要素を書き込むべしなど)のですが、人間の脳が思いつくのは固定的な関係ではなく、連想をベースにした単なるつながりであることが多いので、この方法では、それを固定しないようにしています。自分が「つながっている」と感じれば、それはつながっていることにするのです。

あとは、同じように連想を拡げ、言葉のオブジェクトを増やしていきます。

オブジェクト連合

そうして書き出していくと、当然のように「外側に行くほど子要素(あるいは具体)」という分布にはなりません。単に、ゆるやかな関係性のもとで言葉のブロック(とその衛星ワード)が広がっているだけです。

にも関わらず、その全体を眺めると、「これらのブロック群は、何か大きなことを言おうとしている」というのが見えてくることがあります。

それを色を変えたペンでつないでみます。



そして、ぐっと考えます。このブロックの集合は何を言おうとしているのか。言い換えれば、その集合に見出しを付けるとしたら何になるのか。もちろん、完璧な答えである必要はありません。それでも、自分なりに頭をひねって見出しを与えます。



でもって、同じことが他の要素でも言えないかを検討します。



ここで見出された「見出し」は、書籍で言えば、「第一部」や「第二部」のような大きな括りとして機能する場合もありますし、その本を貫く見えないテーマとして機能する場合もあります。

このようなテーマがなくても、個々の要素はそれぞれに有用ではあるのですが、「ひとまとまりのコンテンツ」を作る場合は、全体を全体たらしめる要素としてこうしたテーマが機能してくれます。

さいごに

もちろん、ここで書き出した要素は、まだバラバラな状態です。特に、要素の親子関係がまったく整理されていないので、そのままでは目次として使うことは不可能です。

なので、ここに書き出した要素をベースに、他の発想法・情報整理法を使って、整えていく作業が別途必要です。

それでも、最初一発目のアイデア出しは、あまり構造を考えず、さりとて全体に息づくアイデアは見逃さないように、要素を一望してみたいと私はよく思います。このワード・オブジェクト発想法は、そのための方法です。

▼今週の一冊:

漫画です。映画を題材としていますが、クリエーターを目指している人には刺さる内容だと思います。



▼編集後記:
倉下忠憲



まだ初稿が終わっただけなのですが、気分としては翼が生えたかのような開放感です。じわじわ次の本とか、今年一年シゴタノ!で何を書いていこうかなどをブレストしています。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中