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とある少年漫画に「悪・即・斬」を自分の正義にしているキャラが登場します。あく・そく・ざん。非常に簡潔で分かりやすいフレーズですね。それにリズムがいいです。あく・そく・ざん。
こういうフレーズは、特に覚えようと思わなくても、頭にこびりついてしまうことがよくあります。
この覚えやすいフレーズを流用すると、メモにとって一番重要なことは「着・即・残」と言えるでしょう。
メモの役割
メモの目的は、情報を「物忘れ」から守ることです。
人間の短期記憶は、ちょっと驚くぐらい容量が小さいので、すぐに「物忘れ」が発生してしまいます。
これは小さいコップに水を注ぎ込んでいく状況に似ているかもしれません。コップがいっぱいになれば、次から次へと水がこぼれだしていきます。この状況で何をコップに残しておくかをコントロールするのは難しいでしょう。
とりあえず別の容器に移し替えておけば、残しておきたい水を保管してくことが可能になります。記憶におけるメモの役割はこのようなものです。
「後で書こう問題」
こうしたメモの役割は一般的に知られているものの、活用されているかどうかは疑問が残ります。
それは、非常にありがちな「後で書こう問題」の発生から見てとれます。
「これは大切そうだから、後でメモしておこう」
というやつです。これはどう考えても短期記憶の力を過信しすぎています。
問題の第一点は、
その「後」になったときに、はたしてメモしようと思った内容を覚えているのかどうか?
ということ。メモしようと思った時に、メモする内容を忘れてしまったという経験はないでしょうか。別に珍しいことではないと思います。
問題の第二点は、
その「後」になったときに、はたしてメモしようと思ったことそのものを覚えているかどうか?
です。つまり、メモを取るという行為そのものを忘れてしまう、という状況ですね。
問題の第一点は、その瞬間にけっこう悔しい思いをするので、次にメモしようという意欲が多少湧いてくるかも知れませが、後者は何かを思いついていたことすら忘れてしまっているので、フィードバックしようもありません。なので、この問題はほとんど改善されないまま放置されていきます。
問題への対策
このような問題を発生させないためには、メモしようと思った瞬間にメモすることです。ごくごく当たり前のことですが、これが一番まっとうで手っ取り早い方法には違いありません。
ただ、「メモしようと思った瞬間にメモしなければならない」ということすら覚えておくのは困難です。きっと、このエントリーを読んで、次の記事を読み終えた瞬間ぐらいにはもう忘却されていることでしょう。
というわけで、「着・即・残」です。
「着想したら、即座に、書き残す」
ちゃく・そく・ざん。一度暗唱するとより効果的かも知れません。ちゃく・そく・ざん。
こういうフレーズの力は結構大きいモノがあります。もともとの「悪・即・斬」を知っている人は、より覚えやすいでしょう。
メモ帳の表紙に大きい文字で「着・即・残」と書いておくとさらに効果的かもしれません。誰かに「これ何?」ときかれたら、脳科学の蘊蓄を引っ張り出して説明すると、「へぇ~」と受ける話になるかもしれません。それに、そうやって説明すると自分の記憶の強化にもつながります。
さいごに
今回は、メモの基本中の基本である「すぐにメモを残すこと」について書いてみました。メモについては、以前の連載の中でも何度も紹介しています。
※関連エントリー参照。
わりにくどい感じもしますが、何度も繰り返すぐらい重要なことだと思います。それに、エビングハウスの忘却曲線的にもきっとありなことでしょう。
というわけで、最後にもう一度「着即残」と書いておいて、記憶にこびりつくようにしておきます。
▼関連エントリー:
・メモ帳を装備するために必要なこと(上)
・メモ帳を装備するために必要なこと(下)
▼今週の一冊:
単純な要素の群から、いかに複雑な現象が生まれてくるのか。いわゆる「複雑性科学」についての本です。
大きく分けて二つのパートから成り立っています。前半は「複雑性」を持つものは、どのような特徴があるのかということについて。複雑性の性質の解説です。
後半は現実社会における複雑性の表れと、その対策について。金融市場、渋滞、パートナー選び、戦争、感染症、などがテーマとしてあがっています。上げられている対策が、今後どれだけ現実味を帯びてくるのかはともかく、これらの現象に共通して潜んでいる「複雑性」というのは非常に興味深いテーマです。
私は社会的な問題に対するアプローチではなく、個人がアイデアを生み出す、あるいは複数人がアイデアを生み出すという「創発現象」をいかに捉えるのか、という視点で読みました。つまり、発想に複雑性を持ち込むにはどうするか、ということです。
そういう視点で読むと、いろいろ面白い発見があります。
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今週はいつもと違った感じで書いてみました。これまでと違う文体で記事を書くのは楽しくもありますが、どんな反応がかえってくるのか、という怖さみたいなものもあります。でも、同じことばかりやっていると飽きてくるので、こういうチャレンジも必要かな、と思います。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。