1.借金の習慣を貯金の習慣へとシフトする
2.収入の2割を貯金に回す
3.大まかに家計簿をつける
4.固定費を減らす
お金の教養ーみんなが知らないお金の「仕組み」 | |
泉 正人
大和書房 2008-09-20 おすすめ平均 |
こういう時代というか状況になって、お金の不安を抱えるのは誰しも同じでしょう。少なくとも私は人並みに抱えています。いつになってもいくつになっても、「宝くじにでも当たれば、あれこれつまらない悩みから解放されて、やりがいのあることを自分のペースで進めていけるのに…」などとつまらぬ妄想と戯れる始末です。
しかし、頭の中に何桁の大金をイメージしていようと、それではかけそば一杯食べられません。かといって、私の才覚と、それから今の仕事状況で、直ちに大金を手にできるような投資信託に手を出すのもどうかと思います。「FX○○」という雑誌を立ち読みしても、あまり自分向きとも思えません。
だからといって、「とりあえずお金が尽きないようにこのままの生活を続けて行って、せいぜい宝くじに当たるよう、神頼みでもしていよう」と安穏としているのもどうかと思います。お金儲けの方法でなくても、打つことのできる手があるのであれば、試してみたいと思う方が人間らしいでしょう。
そう思って、泉正人さんの本を読み進めてみました。心強いことに、著者の泉さんも同じような悩みを抱えていたらしく、私が考えているような方向性で、お金の悩みを解消しようと試みられたらしいのです。
ところが年収が上がった途端に、収入に合わせて高い家賃のところに引っ越し、外食も増えて食費も上がり、身の丈以上の車のローンを抱え、1年後には、毎月の収入以上にお金を使ってしまう自分に変わってしまっていたのです。
「今月もお金が足りない…」
そんな月末が3ヵ月も続き、ついに親からお金を借りてしまいました。社会人にもなって親からお金を借りないと生活できないほど、私の家計は火の車だったのです。
数ヵ月後、ついにあきれた親からの仕送りが止まりました。
月末になると車のローンを支払うお金がなくなり、毎日毎日震えるような恐怖心におそわれるようになりました。そこで、ようやく目が覚めたのです。
以下、ご紹介するのは泉さんが「目覚めたこと」のほんの一端です。
1.借金の習慣を貯金の習慣へとシフトする
当たり前のことではありますが、ここで大切なキーワードは「習慣」です。貯金もまた、ダイエットやジョギングのように「習慣の問題」なのです。その正否は明らかに習慣化できるかどうかにかかっているのであって、収入を二倍にできるかどうかにかかっているのではありません。
二倍の収入があれば、問題の一切が解決するように思うのは、黄金週間が来れば、やりたいことが全部できると錯覚するのに似ています。現実には、黄金週間は矢のように過ぎ去ってしまうし、二倍の収入も瞬く間に使い込んでいきます。泉さんが本書の前半で繰り返しているとおり、収入が増えれば支出はたいていもっと増えるのです。この点、少なくとも私は経験済みです。
したがって、増収は解決になりません。解決は、支出を減らす習慣をつけることにあります。あらゆる継続と同じく、この習慣は容易に身につきませんが、お金の不安を払拭するということは、ほぼ、支出を収入以下に抑える習慣をつけるということとイコールです。
もちろん、収入を増やすというファクターが、どうでもいいわけではなく、それについては『お金の教養』の後半で触れられていますが、シゴタノ!の今回の記事では紹介を控えます。本書の前半では、「貯蓄の習慣をいかにつけるか」にテーマは絞られていて、その実践方法について解説されているわけです。
2.収入の2割を貯金に回す
第一の方法はこれです。これも目新しいものではありません。そして、個人的には20%に届かなくても良いかと思います。まず重要なのは、収入を支出が上回らないことにあるからです。
ただ、泉さんは次のような具体的な数字をあげて、一般の人でも、マメに生活費を節約するだけのことで、一生をかければ相当額を貯金することができると指摘しています。
たとえば、次の事例は新卒から定年まで同一企業で働き続けた大卒サラリーマンの試算です。
生涯で1億2000万円にも達する「小さなお金」。
もし、ここで出ていくお金を2割カットすることができれば、なんと2400万円ものお金が貯まることになります。それどころかたったの5%カットするだけでも、600万円ものお金ができるのです。
もちろんこのことに関する考え方は、個人個人でかなり違ってくることでしょう。生活のあらゆる場面で、消費を20%カットするのは、そう容易ではないし、ひどくせせこましい感じを抱くかもしれません。ただ、2400万円というのは「生涯かけた場合」の数字であるとはいえ、たしかに大金ですし、それに具体的でもあります。
私たちはいずれにせよ、このあたりをかなり曖昧に見積もっていますし、目に見えないものを意識して行動するのは難しいのです。このような数字を具体的に自分に示すことで、ようやく自分の行動に変化をつけるきっかけを得ることができそうです。
3.大まかに家計簿をつける
というわけで、家計簿です。貯金の話となると必ず登場し、「他にないのか」とどうしても思われる典型的なアイテム。
ですがまずありきたりな話として、やはりどんな節約の本にも現れるということは、それだけ節約に有効なのでしょう。たしかに記録を残したからと言ってお金は一円も増えませんが、行動が変わる可能性は高まります。冒頭であげたとおり、お金が貯まるかなくなるかは、習慣にかかっています。
習慣を変えるには、現在の行動が自分の未来をどう変えるのか、確認できるかどうかが大きな決め手となります。家計簿をおおざっぱにでもつけると、すぐに見えてくるものがあります。それは、来月の今日、残高がどうなっているかということが、おおざっぱにせよ見えてくるのです。
この精度が高まってくるにつれ、自然とお金を節約したいという衝動が強くなります。
4.固定費を減らす
固定費とは、毎月決まって出ていくお金のこと。私たちの固定費で大きなものは、家賃や保険などがあります。
これもまた人それぞれで、家賃を押さえると言っても不可能に近い状態かもしれませんし、保険にもほとんどお金をかけていない人も少なくないでしょう。
保険については、本書でかなりページを割かれています。「保険とは、マイホームの次に高額な買い物である」など、ときどき耳にするものの、改めて考えさせられる指摘もあります。自分自身の節約のみならず、自分の実家では保険にどのくらいお金をかけているんだろう、とも考えます。
さらに、そもそもマイホームは買うべきか借りるべきかとか、お金の増やし方など、お金に関して「とりあえず知っておきたいこと」がしっかりと説明されています。マニアックな知識までは必要ないが、お金の不安などないに越したことはない、と考えている人なら、読んで損のない一冊です。