1.「五歩先に解決がある問題」の一歩目を見つける
2.大変な仕事をするときには「助走」がいる
3.同じことを続けすぎない
4.不完全であっても答案用紙は必ず出す
5.前日の夜のうちに、「明日すること」を書いておく
6.「その日の私」「そのときの私」に仕事を割り振る
参考図書『脳と気持ちの整理術―意欲・実行・解決力を高める (生活人新書 250)』(築山節著)
脳と気持ちの整理術―意欲・実行・解決力を高める (生活人新書 250) 築山 節 by G-Tools |
本書を読んでいると、不思議な気持ちがしてきます。私(たち)が書いた本をまとめてもらって、誰か他の人の手で書き直してもらった、という感じがするのです。
上記のリストは、いずれもどこかで見たものばかりだと思いますが、すべて『脳と気持ちの整理術』の項目として、少し違った角度から見つけられます。シゴタノ!や『スピードハックス』で、いまいちしっくりこなかったという方は、本書をお読みになるのもいいかもしれません。
しかもこのリストは、本書全体の前半で登場するものばかり。記憶術やアイデア発想術などが、まだ後半に控えています。近々ご紹介したいと思いますので、お楽しみに。
1.「五歩先に解決がある問題」の一歩目を見つける
大橋さんの言葉を使えば「タスク分割 のコツ」が、これに当たります。詳しくは以下のエントリに書かれています。
●大きなタスクをすぐにできる小タスクに分割する
ということ。さらに以下を加えます。
●分割した小タスクごとに必要な時間を割り振る
小タスクは作業と言い換えても良いでしょう。もともとタスクごとに時間を割り当てているわけですが、「なんとなく2時間」ということであれば、そこには明確な根拠がないわけで、根拠を得るためには「これなら15分でできる」「これは30分だな」という実際の作業時間が想像できるレベルにまで分解する必要があります。
『脳と気持ちの整理術―意欲・実行・解決力を高める (生活人新書 250)』には、次のように説明されています。
社会に出て、私たちに与えられる問題は、自分にとって五歩先のことである場合が多いと思うんです。つまり、今の自分の脳の力では、一朝一夕には解決できない。その解決できない五歩先のことばかり考えていると、意欲を起こすのは難しくなってしまいます。五歩先に解決がある問題を分解して、今の自分にもできそうな一歩目をまず見つける。一歩先まで確実にいけるように努力する。それから二歩目に進んでいく。
一歩目、五歩目という表現はやや大づかみですが、大きすぎる課題や、困難すぎるタスクに体当たりでぶつかろうとしないという点で、二つの引用部分は全く同じ意味です。
2.大変な仕事をするときには「助走」がいる
そう考えると、目の前にある48時間かかる仕事を終えるのに48時間では足りない、というパラドクスがあることに気づきます。つまり、「どろどろ」を見越した「入浴」のような“のりしろ”を組み込んでおかなければ、本当の意味で予定通りに仕事を終えることができないわけです。
「助走」というのは、大きな仕事を前にしたときほど、本作業に入る前の、準備作業が必要になるという意味でしょう。これは実のところ、きわめて小さなタスクでも発生するのですが、タスクが小さいときには「助走」が意識されないだけなのです。
そしてタスクの難しさや大きさを過度に意識すると、「助走」が本作業よりも長くかかることもあります。50分考えて、実際の作業にかけた時間は20分だった、などということは、現実によく起こっていることです。この場合、50分をゼロには絶対できません。しかし、30分にならば、できるかもしれません。そこで最初から、30分を確保しておくと、時間と精神力を節約できるでしょう。
3.同じことを続けすぎない
脳に限らず、生命体は全く同一の行動を繰り返すということが、あまり得意ではありません。だから、ルーチン作業を長時間続けていたり、机にかじりついていることは、生産的でないばかりか、省力にもならないのです。
ジョージ、ラリー、スティーブという同じ保険会社で働く3人がいます。彼らの働き方にはそれぞれ以下のような特徴があります。
●ジョージ:よく給水機の付近にたむろしてばかりいる。
●ラリー :デスクで座っていても喉の渇きを満たすことができるよう、毎朝一回、水筒に水を入れるために給水機付近に行くだけ。
●スティーブ:だいたい1時間ごとに給水機のところに行き、ちょっとの間、ジョージをからかうか、たまたまそこにいた人間と冗談を言ったりしている。彼らの上司は、スティーブがちょくちょく給水機のところに行くことに頭を抱えているものの、そのままにしている。なぜならスティーブは他の2人よりもよく仕事をし、ミスも少ないからである。
4.不完全であっても答案用紙は必ず出す
これは、「仕事の β版 をシェアする」という考え方そのものです。これには様々なメリットがあるのですが、「不完全なものは人に見せたくない」という心理が強く働くために、簡単なライフハックでありながら、なかなか実行できないものです。
もう一度、メリットの点をおさらいしてみましょう。
こうすることで、上記に書いたとおり書く側としては“取っ掛かり”を与えられることになりますし、依頼する側としても完成原稿の前の段階で“β版”をプレビューできるため、より安全に仕事を進めることができるわけです。
β版を求められていなくても、自分から依頼側に対してβ版を提供することは、お互いにメリットがあるでしょう。
依頼側にβ版を提供しなかったとしても、これを作ること自体にも意味があります。それは、とにかく目に見える形を一度作ることによって、自分の中で考えが進む効果が得られるからです。
5.前日の夜のうちに、「明日すること」を書いておく
どうしても「前日の夜」には不可能であっても、事前にタスクの組み合わせ、並べ方について、計画を立てることは次のようなメリットを生み出します。
・やり忘れを防ぐ
・やり忘れる不安を生じさせない
・最適な時間の使い方を想定できる
・最適な精神力の振り分け方を想像できる
築山節さんは、次のように簡潔に言っています。
「何をするのか」をはっきりと脳に認識させることで、意欲のロスを防ぎやすくなります。
6.「その日の私」「そのときの私」に仕事を割り振る
「意欲のロス」という考え方を取り入れることができれば、「先延ばし」イコール「悪」でないことが分かります。実際、「予定」と「明日やる」ことは、本来イコールです。なんでも「今すぐ」が良く、なんでも「今日」が良いのであれば、スケジューリングという考え方そのものが、成り立たなくなってしまうでしょう。
精神力がもたないのであれば、迷わず作業は「別の日」に送るべきです。その際、「やる気」についての罪悪感を持つのはやめにして、精神力と時間配分に無理があったことを、反省材料とします。
これは、『マニャーナの法則 明日できることを今日やるな』に詳しく説明されている仕事術です。個人的に私は仕事を「二分でやれる」とか「緊急だが重要ではない」という分け方をするよりも、「何月何日の何時何分に、どこにいる私にやらせるべき作業か」で配分した方が、うまくいくと思っています。
おわりに
ここまでお読みいただいた方には、明らかに上記六項目には共通点があることが、見て取れるでしょう。脳には特有のリズムがあるのです。そして「脳を整理する」とは、タスクによってリズムが乱されず、むしろきれいな波を描くように、整えていくということになるでしょう。