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憑依モード

このような読書は、しかし、困ってしまいます。読書を純粋に楽しむことができなくなってしまうからです。でも、火がついたのであれば、それはそれで喜ばしいことでもあります。実は今この一文を書きながら、直前に「困る」と書いた直後に、「でも、それっていいことじゃないか」と思い直す自分に気づきました。

https://cyblog.jp/525

タイトルといい、いきなり「何じゃ?」と思われたかもしれません。上記の引用は、「シゴタノ!」の記事からです。

話題となっているのは、読書です。読書中に訪れることのある幸せだがちょっと面倒な体験のことです。

皆さんにも覚えがあると思いますが、以下のいずれが、より充実した読書体験だと思いますか?

1,頻繁に「考えるきっかけ」を与えてくれるため、本から頻繁に目を離さざるを得ないが、自分で考え抜くことのできる充実した読書体験

2,本自体が非常に面白いため、目をそらすことなく一気に読み切ってしまう、話に夢中にさせられる読書体験

どちらかを選ぶのは、難しいと思います。私にも答えはありません。ただ、どう考えても両方のタイプが読書体験にはあるということです。

実はこのようなことは、友達の会話や仕事中にも発生します。会話中、考えさせられるきっかけをたくさん与えてくれるため、「思考モード」に埋没してしまい、会話自体はおろそかになることがあります。

仕事においても、ものを書いている最中などに、いろいろなアイデアが連鎖反応を起こし、それらをメモしておかざるを得なくなり、原稿執筆を中断しなければならないことがあります。そういうときには、大変充実した気持ちになることはできても、仕事はあまりはかどりません。

大橋さんは、このポイントを指摘して、

このような読書は、しかし、困ってしまいます。

と指摘しているわけです。同時に、「でも、それっていいことじゃないか」ともいいます。まったくその通りだと思います。

そこで冒頭のタイトルなのですが、私はこのような、アイデアの連鎖反応が出る状態について、脳が独特の状態になっている気がしているのです。だから「憑依」という表現を使ってみたわけです。

さらにエスカレートした心理状態を指して、ある作家は「デモンに取り憑かれる」といいました。別のイギリス人作家は、「六頭の馬を同時に御している感じ」といいます。

大脳生理学は今現在統計学的であり、このような非常にユニークな心理状態をうまく説明するのはまだムリだと思いますが、いっていることが何となくにせよ伝わるということは、上記の心理状態が、人間という種の持つ、1つの共通感覚と言えるのだと思います。

仕事をする「純粋な」楽しみというのは、おそらくこのあたりにありそうです。同時に、心理的健康の全部とは言わないまでも、こうした体験が重要な一翼を担っていると、私は思っています。