だから片づかない。なのに時間がない。「だらしない自分」を変える7つのステップ | |
マリリン・ポール 堀 千恵子
ダイヤモンド社 2004-06-11 おすすめ平均 |
本書のような、アメリカ発自己啓発書を読むに当たっては、気をつけるべき点があります。本当に役立てようと思ったら、ズルズル全部の章を読んでしまってはいけません。
特に邦訳されるようなものである場合、この種の本は大変よく書けているので、いつまでも読んでいたくなります。が、いつまでも読むようなものではないのです。いつまでも片付けの本を読んでいても、部屋はちっとも片づきはしません。
本書は、第6章だけを読んで実行すれば、十分元が取れる本です。第1章を読み、納得し、第2章を読み、実行する気持ちに火をつけ、第3章を読み、問題を再確認し、第4章を読んで、新しい気づきを得、ということをしていたら、ただひたすら読むだけで終わってしまうでしょう。
「整理する」というメンタル
本書をざっと読む限り、なんだかちょっと雑然とした印象を受けるでしょう。モノの整理、タスクの整理、気持ちの整理が、渾然一体として扱われているからです。
けれどもこれこそが、本書の特徴なのです。一般的な「仕事術」に類する本では、それぞれをとりあえず分けて扱っています。著者は、重複する部分を意識していますが、章立ては分けておくのが自然です。
ところが、『だから片づかない。なのに時間がない』では、何が「片づかない」のか、よくわからないのです。ガラクタという言葉が多く使われているから、おそらく「モノ」のことでしょう。しかし話がいきなり「約束」に移ったり、「先送り」になったりします。
本書の主題は実のところ、マインドセットなのです。部屋をスッキリ片付けるのも、タスクをどんどんさばいていくのも、5分前行動ができるのも、すべて同一のマインドが可能にするものだといっているのです。そして、全章がそのテーマで貫かれているのです。
だらしない人間の暮らしほど、耐えがたいものはない。無用な物をため込み、なくした書類などを延々と捜しまわり、クレジットカードの支払いに遅れ、信用をなくすことは日常茶飯事。これでは自宅も仕事場も居心地が悪い。
冒頭の文章がこうです。私は「だらしない人間の暮らしほど、耐えがたいものはない」からして違和感をもちました。そんなことはないはずです。しかし、本書はこの部分だけにメスを入れることでマインドセットを切り替え、そうすれば整理された人生を送ることができる、と主張する本なのです。
「やってみよう」をやってみる
繰り返しになりますが、読んでいい気持ちになっていても仕方がありません。次々と繰り出される実例は、読者の部屋がきれいになっていく実例ではなく、メアリさんやジョージさんの実例に過ぎません。
とはいうものの、「すべてを実行する」などと考えるべきでもありません。本書の「やってみよう」の数は、まさに計算ドリルのそれであり、全部やろうとしても、なかなかできるものではないでしょう。
「この本に書いてあることをすべて実行すれば」などという書評を時々見かけますが、本書に書いてあるすべてを実行すれば、部屋くらいきれいになって当然です。少し視点を変えなくてはいけません。
著者は、マインドセットを変えてもらうことを繰り返しすべての章で訴えているのですから、どの章のどの「やってみよう」をやってみても、だいたい同じことになるのです。あるいは部屋の片付けであり、あるいは買い物のことであり、あるいはネガティブ思考の話になってはいますが、
・変えたいテーマを1つ選ぶ
・変化しない場合に失っていく物事を見積もる
・現状維持にしがみつく考えを直視する
・新しい行動を実行する
・変化によって得られるメリットを毎日確認する
・他人の力を借りる
すべての章のテーマについて、適用されている方法論は、以上が下地になっているわけです。
このたび東洋経済新報社さんから『ライフハック心理学』を上梓するのを記念して、「出版記念セミナー」の形を借りた、大規模なサロンのような真似をしてみたいと思います。
そこで、いつもお世話になっている東京ライフハック研究会の主催者である北さん(BECKさん)にファシリテーターをお願いしました。ひごろからお世話になっている皆様と、当日お会いできますことを、心より願っております。
なお、当日お越しいただいた方に先着10名様に、『ライフハック心理学』を500円引きでお求めいただけます。さらに、当日ワークで利用するノートとしてモレスキンノートブックのヴォラン(ルールド)ラージサイズ(13×21cm)を参加者全員にプレゼントさせていただきます。
実施は10月29日渋谷にて
▼お申し込みは下記より
http://kokucheese.com/event/index/5077/