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仕事がメンタルにもたらす効果


佐々木正悟 少なくとも私自身のことについていうと、書籍がヒットしているときよりも、お金がないときの方が、メンタルの調子は良いようでした。

ちょっと理解しがたい話かもしれませんし、私自身も不思議でした。

お金の心配をしなくていいときのほうが、心理的に健康であっていいはずです。

しかし私の過去をふり返ってみると、そうはいえないのです。

お金がなければ、仕事をします。

お金があっても、仕事を辞めてしまうわけではありませんが、私はフリーランスなので、お金があれば「ほとんど仕事をしなくてもかまわない」ということにはなります。

緊張感がいい、というのとはちがいます。私はそうは思いません。

お金に恵まれていると、失いやすくなるもの

そうではなくて「仕事をすることがいい」のです。

これは誰にでも当てはまるというわけではなく、ただ自分のことをふり返ってみるとそうだ、という話にすぎません。

仕事をすると、ちょうど仕事をしている最中に、「何よりも自分に向き合う」ことになります。

自分の書いたことをけなすかもしれない架空の人物を想像し、その想像に怯えてしまいかねない自分に向き合ったりします。



あるいは、原稿を書こうとして悶々とする間にも、時間が刻々と流れ去っていき、自分は人生をムダしているのではないかという被害妄想に向き合うことができます。

お金に恵まれていると、こういう機会を失いやすくなります。

自分の書いたことをけなすかもしれない架空の人物に怯えれば、原稿をあきらめて、シューティングゲームにでも向かってしまいます。

仮にそのまま原稿を落としても、お金に困らないからいいわけです。

一見これは気楽なようですが、「架空の人物」は自分の心に住み着いたままです。

これを振り払うことができるのは、自分の心持ちだけです。

その気持ちを持つ力を、仕事の際に発揮することができるのです。

仕事をしないとその機会を逸しやすいのです。

自分のことを貶める架空の人物を心の中で増長させたり、原稿に向き合う自分を「時間のムダをしている」と自虐したりして、内面の健康を少しずつ失っていることに気づかないのです。

▼編集後記:
佐々木正悟



 
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