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後で読むを跡で読む



倉下忠憲音声読み上げで聞いている方にはさっぱりなタイトルですが、最近の私のWebページの閲覧スタイルが変わってきたので、それを紹介します。

手順は以下の通り。

  • 読みたい記事を見かける(RSSリーダー、タイムライン)
  • その記事タイトルとURLを取得(by ブラウザの拡張機能)
  • その日の作業記録に貼り付ける
  • 「後で読む」時間に読む

このスタイルで、だいぶ「読む」環境が変わってきました。

詳しい手順

詳しく手順を確認していきましょう。 

まず、朝のうちにざっとRSSリーダーをチェックして、気になる記事をピックアップします。で、そのときは読まずに、ページだけ開いて、その記事のタイトルとURLを取得します(FirefoxのFormat Linkというアドオンを使っています)。

そのタイトル+URLを、その日の作業記録に設置してある「後で読む」という項目にペシッと貼り付けます。

日中タイムラインで面白そうな記事を見かけた場合も同様です。ページを開いておいて、タイトルとURLを取得して、作業記録に貼り付けて、開いたページを閉じます。

つまり、そのときには読みません。

じゃあ、いつ読むのかと言えば、「後で読む」用にセッティングしてある時間です。具体的には一通り作業を終えた(あるいは疲れた)夕方以降の時間です。その時間になったら、その日の作業記録の「後で読む」項目に貼り付けてある記事を読んでいきます。

ピックアップした記事が多ければすべてを読むことはできません。また、他の作業が押していて「後で読む」時間がとれない場合は、一つも読めません。

でも、それで構いません。私の場合、大切なのは「面白そうな記事を読むこと」ではなく、「自分の仕事」を進めることだからです。

何が嬉しい?

このスタイルの何が良いのかと言えば、一番は脱線を(ある程度)抑制できることです。

ちらっと覗いたタイムラインで面白そうな記事を見かけて、それを読んでいる間に知らない単語が出てきて、それをウィキペディアで調べて……とかやっているうちに、どんどん作業時間が喰われてしまうことがあります。

そもそもタイムラインをチェックするなよ、という正当なツッコミはさておくとして、そのような場合でも「後で読もう」と思えるならば、ぐっと我慢して作業に戻ることができます。

また、それらの記事は、特別な場所ではなく、作業記録と同じ場所に置かれているので、折りに触れて目に入ります。「後で読もうと思っていたけど、そのことを忘れていた」という事態にはなりません。セッティングしてある「後で読む」ための時間もそれを助けます。

それだけではありません。

作業記録は一日ごとに新しいページに移るので、「後で読もう」と思ったものがあふれ返ることがないのです。もちろん作業記録全体を見通せば、大量の「未処理」案件が残っていることになりますが、私の目に入るのは一日ずつのノートなので量はさほどでないのです。

にもかかわらず、一応全体は残っているので、必要に応じて検索することもできます。記事のタイトルないしはURLをキーワードにして、「あの記事なんだったけな」と思ったときに、探り出すことができるのです。

この点はかなり大きく、たまたまタイムラインで流れてきた記事を読んで、三日ぐらい経ったときに、「あっ、あの記事を引用したい」となることがあるのですが、もはやその記事がどれなのかを見つけられなくなる(Webブラウザの履歴からでは相当に探すのは難しいです)といった事態は珍しくありません。

しかし、すぐに読まず、一度作業記録に書き留めてから読むようにすると、そのような事態になったときに高確率で発見できるようになります。

つまり、「後で読もう」と思った意志の跡を残しておくことで、それが履歴として使えるのです。

もちろんこれは、普通に読むよりも手間がかかります。が、手間をかけて読みたくないなと思う記事は、そもそもあまり読みたいと思っていない記事なので、そういう記事に大量に時間を吸い取られること防げるならば、(時間的に)お安いものです。

さらなる効能

また、この作業記録はEvernoteのノートなので、テキストやURL以外に、自由にテキストを書き入れることができます。つまり、読んだ感想や引用したい部分があれば、作業記録に書いておけるのです。

むしろこうして「自分のメモ」を書く場所を設けておくことで、書きたい気持ちが湧いてくるような感覚すらあります。これも大きな効能です。

さらに、昔の作業記録を読み返すこともあり、そのときに、未読・既読の記事を「再発見」して読むこともあります。作業記録と「後で読む」を別のサービスに割り振っているときには起きない現象です。

最後にこれは私の場合だけの特別な効能ですが、この作業記録ノートは、noteのサークルnoteのサークルで限定共有しているので、作業記録に「後で読む」ページを貼り付けていくことは、それを読む人にとっての「キュレーション」としても機能します。

一般的にTwitterへの記事への放流は、「読んだもの」に限定され、その上特別に面白かったものに限られがちです。非常に絞られているということです。

一方で私の「後で読む」に放り込まれているものは、「後で読もうと思ったもの」たちなので、Twitterへの放流よりは幅広く、しかも一言コメントがついていることもあります。これも、(人によっては)面白いコンテンツと言えるかもしれません。

さいごに

というわけで、今回は最近の私の「後で読む」スタイルを紹介しました。

Webの「面白い記事」の誘因は強く、しかも自分のタイムラインをうまく作っていればいるほどその誘因は強まっていきます。何かしら自分で切断線を引くための仕組みが必要だなと、最近強く感じていました。

たまたま始めた「作業記録に後で読むものを書き残しておく」という試みではありますが、存外に良い影響が生まれました。

  • 多少の手間をかけて、後で読むようにすること。
  • 時間がなければ読まないで済ませること。
  • しかしその記録自体は残っているようにすること。
  • 自分のコメントを書ける場所を設けること。

こうしたことが、知的生産的には重要になってくるのではないかと思います。

▼今週の一冊:

昨年亡くなられた瀧本哲史さんの東大での講義を書き起こした本です。発破をかけられますし、また胸がジーンと熱くなる一冊でもあります。



▼編集後記:
倉下忠憲



『僕らの生存戦略』の第一章を終えて第二章の執筆に入っています。第二章執筆の指針は、「とにかく心地よく書けるようにすること」です。一ヶ所に詰まって延々悩むことがないように進められる手順を探っています。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中