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締め切りがないと仕事の速度は落ちるのか?

締め切りがないと仕事の速度は落ちるのか?

佐々木正悟 締め切りのない仕事は、本気になれない。

という話をよく耳にします。職業柄ふつうの人よりもいっそう耳にします。

でもそれは本当なのでしょうか?

締め切りがないと、進捗が遅れがちになる。

これもよく聞きますが、同じような疑問にぶつかります。

本当にそうですか?

現実は、計画通りに行かない

締め切りに遅れてはならないという義務感あるいは恐怖感があるから、締め切りから日数を逆算し、計画を立てる。

そしてその計画に遅れないよう、毎日、淡々と、粛々と仕事を進める。

別にこれで問題はないようですが、よく聞くのは「でも現実には、そう計画通りに行かない」という言葉です。

現実は、計画通りに行かない。

いかにもふつうの表現ではありますが、だったら計画を立てなければ良いのでは?

とはならないのはどうしてなんでしょう?

計画によって仕事が速くなるのか?

なぜ、計画通りに行かないから、そこをなんとか計画通りに行かせなければならい、というようになってしまうのでしょうか。

現実的な計画を立てようとか、意志の力などあてにせず、脳をだまし、粛々と計画を進めようというような、私にはまったく本末転倒な考えが優勢なのは、なぜなのだろう。

そうまでして計画にこだわるのはなぜなのだろう。

計画を立てずにやっていると「油断」するという話もよく聞きますが、このようなお話の中のどこにも「油断」というニュアンスが伝わってきません。

むしろ過剰な緊張感や、強い不安感の方が感じられてしまうのです。

ぜんぜん油断する気なんかないように見えます。

計画を立てないと油断するというより、計画を立てることで不安を目の当たりにしないと、恐怖感に耐えられないから計画を立てざるを得ない。そんなふうにも聞こえます。

そもそも計画を立ててみて、それを見てみると締め切りに遅れそうだからといって、油断していた自分がシャキッとして、モチベーションが高くなるものでしょうか? それによって仕事が速くなったりするのでしょうか?

私は逆だと思います。

計画を立てることで、かえって仕事が遅くなっている?

そうでなくても高すぎる緊張状態、強すぎる不安のせいで、仕事が手につかなくなっているのがデフォルト。そのうえ締め切りに遅れそうだという実情を自分に見せつけたら、油断からシャキッとするのではなく、過剰な緊張がますます進んで、まったく仕事が進まなくなるのではないか。

つまり計画を立てることにより、かえって仕事が遅くなっているのではないかと思います。

100メートル競走のアスリート選手が、なんらかの不安や恐怖感を抱いたからといって、それによってパフォーマンスが上がるなんて思えません。

もっと速く走って金メダルを取らないと、国に帰ったらむち打ちの刑にされるから、速く走れるのだ!

という話は、実際にはあり得ないように思えます。

走力と仕事の速さは違うでしょうか?

私は中学受験のまさに本番のとき、小学生にはそれなりの算数の問題を1つ解いたことを覚えていますが、そのとき恐怖心は抱いていなかったと思います。

時間切れになってしまって、問題が解けなかったら、塾でひどい説教をされるのが怖くて猛烈なスピードで解けた、という覚えがありません。

アスリートをむち打ちの刑にしないと、彼らは「油断して」走力が落ちてしまうというのもしっくりきません。

受験する小学生であっても事情は同じように思えます。

なぜ計画的に仕事をしたりさせたりする人は、自分や他人に「締め切りに間に合わない不安」を抱かせることが、仕事の速度そのものにかなりの悪影響を及ぼしているのではないかと考えないのでしょう。

多くの仕事の締め切りを抱えていれば、いくつもいくつも、この悪影響が累積的に、毎時間断続的に、仕事のパフォーマンスに悪影響を与え続けているかもしれないのです。

いつも計画に遅れていることを目の当たりにすることで、いつもベストの半分の走力で走っているかもしれないのです。

しかも本人は全力を出し続けている気でいます。疲労困憊してもいます。

そういうことはまったくあり得ないと言いきれますか?

毎日のように計画を立て、粛々とそれに沿って進むつもりでいて、連日のように不安を抱え、計画を守れない残念感でいっぱいになっていても、仕事に何の悪影響も与えていないと、本当に言いきれますか?