「もんたメソッド」をご存じですか? プレゼンの際に以下のように一部を伏せ字にし、聴衆の注意を引く手法です(詳細はこちら)。
5年前に書いたエントリーということで、僕自身、伏せ字の中身が何だったかをすっかり忘れていました。
それだけにいつも以上に注意力を発揮して、前後関係から伏せ字の内容を思いだそうと必死になっている自分がいました。
その答えは以下。
伏せ字の内容
そもそも仕事というのは何かというと、人と人との関係によって立つコミュニケーション、と捉えることができると思います。
つまり、何よりもコミュニケーションが一番大切だと思うのです。同じ商品であっても、説明の仕方次第で売れたり売れなかったりするのは、
1.お客さんとの関係性が売れるレベルに達していない
2.お客さんに商品の価値が伝わっていないという2つのいずれかではないでしょうか。もちろん、細かく挙げていけばもっとたくさんあるでしょうが、コミュニケーションという視点で見ると、以下いずれかの「ない」状態を解消すれば、売れるはず。
1.お客さんとの間に信頼・信用という橋が開通していない
2.お客さんのランプに商品の価値という火が灯っていない橋を開通させるのも、火を灯すのもコミュニケーションの役割です。
このエントリーを読み返して思い出したのが、以下の一冊。
実は本書にも「もんたメソッド」が登場します。「みの式」説明法ということで以下のように紹介されています。
まずは、一つの要素=Aだけを見せておきます。「こういうことがありました」と説明したうえで、「すると……」と言いながら、隠しておいたBの出来事を見せます。さらに、Cの要素を見せていくのです。
これはみのもんたさんが、よくテレビで使う手法です。これがあまりに多いとうるさいのですが、聴衆や視聴者の注意を惹きつけるには有効な手法です。(p.87)
他にもわかりやすく伝えるための様々な工夫や手法が具体例とともに紹介されているのですが、今回は本書の前半で中核を成す内容を伝えたいことを分かりやすく伝えるための8つのステップという形で、ご紹介します。
特に、プレゼン資料を作って発表をする機会が多い方にはおすすめです。
伝えたいことを分かりやすく伝えるための8つのステップ
- まず、ざっと話したい要素を書き出す
- リードを作る
- 目次を作る
- 一回書いてみる
- どこを図解にすればいいか考える
- パワーポイントを作る
- パワーポイントにそった原稿に書き直す
- その原稿を箇条書きのメモにする
1.まず、ざっと話したい要素を書き出す
最初にすべきことは、ワープロソフト(マインドマップソフトでもいいでしょう)を開くこと。
パソコンのワープロソフトを開き、必要な要素を書き込んでいくのです。思いつくことを何でも箇条書きにしておき、入れ替えればいいのです。私の場合は、とりあえず必要な構成要素を並べ、画面上で順番を入れ替えます。そのうえで、各項目に関して、そこで触れるべき内容を書き込んでいきます。
これですと、思いついたことを、いつでも追加できます。いつのまにか、報告・講演内容ができあがります。(中略)パソコンの画面上に、アイディアやイメージを書き出してみることには、もう一つ効果があります。それぞれの要素を、客観的に見ることができるようになるのです。頭の中で考えているだけではだめなのです。(p.30)
2.リードを作る
次に、全体像を見せる。
あらかじめ「いまからこういう話をしますよ」と聞き手にリードを伝えることを、私は“話の「地図」を渡す”と呼んでいます。「きょうはここから出発して、ここまで行く」という地図を渡し、「そのルートをいまから説明します」という形をとることで、わかりやすい説明になります。(p.19)
3.目次を作る
続いて、中身に踏み込む。
さらにもう一つ大事なキーワードがあります。それは「階層化」です。階層化とは、話したい要素ごとにそれぞれ複数の柱を立て、枝分かれさせていく作業です。
全体の話の中身を3つに分けた場合、第一の柱、第二の柱、第三の柱を立てます。そのうえで、Aの柱の中に2つの要素があれば、その順番を決め、a、bと並べていきます。これが階層化です。ワープロソフトを使えば、この階層化が容易にできます。
話の最初に「地図を示す」とき、それらを全部示す必要はありません。「きょうはAとBとCについて話をします」でいい。A、B、Cが三本の柱です。このひと言が、リード=「地図」なのです。(p.34)
4.一回書いてみる
目次に沿ってラフな原稿を書く。以下「ニュース」の伝え方で解説。「図や模型」はパワーポイント。
こうした図や模型を作るためには、その前に、そのニュースについての原稿を用意します。当然のことながら、「伝えるべき概念とは何か」を考えながら、その本質が端的にわかるような原稿にします。(p.88)
5.どこを図解にすればいいか考える
ラフな原稿をもとに、パワーポイントで表現する部分を決めていく。
6.パワーポイントを作る
実際にパワーポイントで図を作る。
7.パワーポイントにそった原稿に書き直す
今度はパワーポイントをもとに原稿を直す。
あなたが仕事などでパワポを使ってプレゼンテーションをするときには、まずは発表用の原稿を書くことでしょう。それをもとに、パワポの図を作りますね。
これで発表の本番に臨んでしまう人が多いのですが、これで終わりではないのです。パワポの内容に即して、説明の原稿を書き直すのです。
8.その原稿を箇条書きのメモにする
発表に際しては、原稿を箇条書きのメモに変える。
理想的な発表とは、実は「原稿を書かない」ことです。原稿を書くと、どうしても本番で読んでしまいます。文章になっている原稿は、かいつまんで話すことがむずかしく、ついダラダラと読んでしまいがちです。(中略)一方、手持ちがメモだけなら、その場で自分で話し言葉にしなければなりません。その結果、自然な日本語になります。
まとめ
以上8ステップをまとめると次のようになります。箇条書きに始まり箇条書きに終わる、というシンプルな構成ですね。
- 話したい内容をもとに、箇条書きのメモを作る
- 1をもとに、リード文を作る
- 2をもとに、目次を作る
- 3をもとに、ラフな原稿を書く
- 4をもとに、パワーポイントで表現する部分を決める
- 5をもとに、パワーポイントを作る
- 6をもとに、ラフな原稿を書き直す
- 7をもとに、発表用に箇条書きのメモに変える
なお、本書の後半では実践編として次のようなトピックが学べます。
- 3分間プレゼンの基本
- 空気を読むこと、予想を裏切ること
- すぐ応用できるわかりやすく〈伝える〉ためのコツ
- 「日本語力」を磨く
- 「声の出し方」「話し方」
- 日頃からできる「わかりやすさ」のトレーニング
仕事において、自分の考えを相手に誤解なくわかりやすく伝えることができれば、それだけで一気にリードを稼ぐことができます。逆にいえば、どんなに優れたアイデアを持っていても、それを伝える術を持っていなければ文字通り宝の持ち腐れになってしまいます。
せっかくの勉強の成果を活かすためにも、本書を参考にして、まずは伝える技術を磨きましょう。
合わせて読みたい:
アナウンサーの池上彰さんとはひと味違う、技術者目線の「分かりやすく伝える」技術。
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少し前につぶやいたツイート。
子どもの頃に「すごいね」「よくできたね」と言われたことが「好き」の原点になる気がします。子どもにかける言葉、重要。 (@yuko985 live at http://ustre.am/hY44 )
— しごたの/大橋 悦夫 (@shigotano) May 22, 2010
大人にも効きますよね。