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効果的に読書を進める方法と電子書籍のメリット

倉下忠憲
「もっとも効率よく読書するにはどうすればいいか?」
この問いには実は明確な答えがあります。それは

「読みたいときに読みたい本を読む」

というもの。非常にシンプルですね。ではなぜそうなるのか、ということについてすこし考えてみたいと思います。その後、電子書籍についても触れます。


 

冷める情熱

「空腹は最大の調味料」という言葉があります。それと同じような事が読書についても言えます。読みたい、知りたいと感じたその瞬間は「知的な空腹」を感じている状況です。そういった状況だと自然と集中して本を読む事ができ、また内容もすっと頭に入ってくる事が多いと思います。

例えば、本屋で面白そうな本を見かけたのでパラパラと読んでいると、いつの間にかじっくりと読んでしまっていた、という経験はありませんか。でも、この本を買って家にしばらく置いておくと、とたんにその本から距離を置いてしまう。これは人間の脳的にごく自然な事のようです。

『脳に悪い7つの習慣』という本の中で林成之氏は

p128
A10神経群がプラスのレッテルをはった情報や、自己報酬神経群によって「自分にとってうれしい」と判断された情報は、思考する過程に入る段階で、情報が強くインプットされます。このことから「おもしろくない」「嫌いだ」「役に立たない」と思っていると、記憶するのが難しくなることがわかります。

と書かれています。

 
A10神経群は感情に関係する神経群です。ある本を見て、「あっ、おもしろそう!」と思った瞬間、A10神経群の働きによってプラスのレッテルが貼られます。そのレッテルが貼られている情報に関しては脳の吸収率が上がるというわけです。

しかし、時間が経てば感情は徐々に冷めていきます。「おもしろそう」のレッテルが剥がれ落ちてしまった情報は、以前のように読めなくなってしまいます。この流れが書店で面白そうだと思って購入した本が、家の本棚に収まるとなかなか読み進められない理由です。

 

ASAP

上記の理由を踏まえて、効率よく読書を進める具体的な方法を考えるとすれば

・本を買った直後に読む

となります。しかし毎回そんなことはできないかもしれません。そういう時は妥協案として

・本を買ったその日に読む

という方法があります。これでもまだ難しいかもしれません。さらに汎用性を上げるとすれば、

・買った日にわずかでも読み進める
・毎日すこしでも読み進める

という事になるでしょうか。ようするに「プラス感情のレッテル」をなるべく剥がさないようにしておけば、効果的に読書を進める事ができるようになります。
※これはもともと面白いと感じない本には使えませんのであしからず

電子書籍時代での本を買う行為

電子書籍が一般的に普及すればどうなるでしょうか。電子書籍は「見つける→買う→手に入る」までが一連の流れとして実行できます。しかも、ネット環境さえあれば場所すら問いません。

リアルの書店は、自分が存在を知らなかった本との出会いがあり、しかも買った直後にコンテンツを入手することができます。しかし、本屋に行くという物理的な時間が発生するのと、本屋の中を動き回るという時間も発生します。

Amazonなどのネットで本を買う場合は、自分が欲しいと思った本についてはすぐに見つけられますし、本屋に行く時間も必要ありません。そのかわり、「買う」から「手に入る」までにタイムラグが発生します。物流がどれほど改善されても、Amazonから30分後に本が届く、なんて状況は生まれそうにありません。

電子書籍はこれらの物理的時間の制約、タイムラグから私たちを解放してくれます。どこかのブログで紹介された本、セミナーで講師が参考資料として提示した本、友達が面白いと教えてくれた本、そういった「おもしろそうな」本の存在を知った直後から、「買う」・「手に入れる」というステップに進む事ができます。

いわば、「空腹度が頂点」の時に読書をすることができる、というわけです。

 

まとめ

アリストテレスは「人はうまれながらにして知ることを欲している」という言葉を残しました。その知的欲求を満たしてくれる読書ですが、本そのものの内容に変化が無くても、私たちの感情の持ち方によって「読書の効率」というのは変化します。

ある程度「脳の癖」を知っておけば、特別な訓練をしなくても集中力の高い読書ができるようになると思います。

また、電子書籍はそういった部分でも私たちの読書生活に影響を与えるようになるでしょう。ビジネスモデルの難しさは当然想定されますが、読書をする人々にとっては「電子書籍」という選択肢が増える事は非常にありがたい事ではないでしょうか。

▼参考文献:

脳に悪い7つの習慣 (幻冬舎新書)林 成之
林 成之
幻冬舎 ( 2009-09-30 )
ISBN: 9784344981447
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

どのように脳を使っていけば「脳力」が鍛えられるか、というお話。トレーニングというよりも日常生活で気をつけるべき事に視点が置かれているのでとても「実践的」な内容。

ぼくはこんな本を読んできた
立花 隆
文藝春秋 ( 1999-03 )
ISBN: 9784167330088
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

単なる読書術だけではなく、出版業界の考察や大量の書評など。知的生産における大量インプットの実際例。

▼今週の一冊:

これを書いている時点ではまだ書店には並んでいませんが、私は先着1万名様110円という価格でディスカヴァー・トゥエンティワンのサイトから発売されていた電子書籍版を読みました。

一人の文章の書き手として、一人の読書好きとして、電子書籍がもたらすであろう変化には大きな興味があります。音楽業界の変化からの考察、大きな時代の流れの中での「本」というコンテンツの変転、そして日本の出版流通業界が抱えている課題の分析など。本書は「電子書籍の衝撃」に備える上で重要な一冊になるのではないかと思います。

佐々木 俊尚
ディスカヴァー・トゥエンティワン ( 2010-04-15 )
ISBN: 9784887598089

▼編集後記:倉下忠憲
とうとうアメリカではiPadが発売されました。日本での発売も徐々に迫ってきています。今のところ「発売即購入」の予定はありませんが、発売自体が楽しみではあります。手に入ったら「電子書籍ビューワー」よりも「Evernoteビューアー」として大活躍してくれそうで、今からとても楽しみです。