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『問題解決大全』の読み方・使い方



倉下忠憲以前紹介した『問題解決大全』という本は、名前の通り問題解決に関する技法が山ほど紹介されています。


今回は、この本の私なりの読み方・使い方を紹介してみましょう。

Step1.通読する

まずは、頭から最後まで一通り読みます。この際は、精読する必要はありません。パラパラとでも良いので、どこにどんなことが書いているのかを把握しておきましょう。

この本は、一つの技法についてレシピ・サンプル・レビューの3つの項目で構成されており、レビューが深掘りの要素なので、まずはレシピとサンプルだけでもしっかりと目を通しておくことが肝要です。

Step2.辞書的に使う

本書の英題(”The Problem Solving Skills Dictionary”)にもある通り、本書は辞書的に使うことができます。なので、そのように使ってみるのが次のステップです。

解決したい問題にぶつかったら、うまく使えそうな技法を探し、それを適用してみる。

これを繰り返しましょう。最初にきっちり通読していれば、適切な技法を探すのに役立つはずです。ある程度技法を使った後で、レビューを読み込んでみてもよいでしょう。

Step3.徹底的に使い込む

ある程度、Step2を繰り返していると、自分に合う技法や使いやすい技法が見つかるはずです。そうなったら、その技法をとことん使い込んでみましょう。

「解決したい問題に遭遇したら」というトリガーを待つのではなく、むしろ積極的にその問題解決技法を使えそうな問題を探してみます。そして、実際に使ってみる。その繰り返しです。

これを繰り返していくうちに、徐々にその技法は自分の血肉になっていくでしょう。言わば、知的技法の脳内インストールです。言い換えれば、ある種の知的トレーニングと言えるかもしれません。

技法を使い込んでいくうちに、その技法の弱点が見つかることもあるでしょし、さらにその弱点をカバーするようなアレンジ法を思いつくこともあるでしょう。ここまでくれば、最後のステップへの準備は万端です。

Step4.自分なりの問題解決技法へ

現実に起きる問題は、さまざまな特徴や性質、そして一回性の制約を持っています。よって、単一の技法だけで確実にうまく解決できるとは限りません。もっと言えば、『問題解決大全』に列挙されている全技法ですら、幾万の問題にパーフェクトに対応できるとは言い切れません。

しかし、問題はありません。

人は、道具を作る動物であり、道具を作るための道具を作る動物でもあります。

ビルを建てるにはクレーン車が必要でしょうが、そのクレーン車を作るためにも、専用の機械や工具が必要です。人は、その道具の再帰的な連鎖を繰り返して、文明を築き上げてきました。

このことは、問題解決技法に関しても同じことが言えます。

ある技法と別の技法を組み合わせることで、新しい技法を生み出す。あるいは弱点をカバーする。そのような可能性はいつだって開かれています。なんといっても、アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせでしかありません。

しかし、技法を組み合わせるためには、その技法を深いレベルで理解しておく必要があります。単に名前を知っていたり、手順をさらえるだけでは十分ではありません。性質を、あるいは本質を掴まえておかなければならないのです。だからこそ、前ステップで徹底的に使い込むことが必要でした。

言い換えれば、脳内にインストールされていてこそ、はじめてそれを「既存の要素」として使うことができます。

さいごに

『問題解決大全』で紹介されている技法(ツール)は37個もあります。そしてそれは、これまでの人類が構築してきたものでもあります。しかし、その構築の歴史には、まだ終止符は打たれていません。

私たちの文明や科学が進めば、新たな問題が生じるでしょうし、そのときまったく新しい問題解決の技法が必要になることもあるでしょう。そのときには、既存の技法を使い、新しい技法を生み出さなければなりません。

道具を作るための道具にすること。そして、そのように読むこと。

これが本書の一番の「使い方」かもしれません。

▼今週の一冊:

以前紹介した『メイキング・オブ・勉強の哲学』の紙版が発売になっています。内容は電子版を拡充したもので、「欠如のページをめくること」が新たに語り下ろしされているようです。アウトラインの図解なども豊富なので、ご興味あれば。



▼編集後記:
倉下忠憲



体調不良は体調不良ですが、とりあえずメンタルだけは回復基調です。それだけでも十分にありがたいですね。体の方はボチボチと。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。