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「お近づきになる」ための6つの原則

人を動かす 新装版
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創元社 1999-10-31
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今回紹介する本のタイトルは、このエントリのタイトルよりもずっとインパクトの強いものです。原書のタイトルも「人を動かす」に負けず劣らず「図々しい」ものですが、あまりにも有名になっているので、今では誰も気にしなくなっているかもしれません。

しかしタイトルの図々しさからは想像もできないほど、内容は誠実で好感が持てるものです。本書は、クライアント中心療法などのセラピストが書いたとしても、おかしくないような中身になっています。

『人を動かす』を一言で言うなら「相手の立場に立って考えなさい」ということになるでしょう。もう見飽きたような装丁の本であり、もう聞き飽きたような教訓でも、読めばやはり面白く読めます。聞き飽きたような箴言は、こういう面白さの中で繰り返し読み込みたいものです。

1.誠実な関心を寄せる

実はこの6原則は、さらに3原則くらいに縮められそうなくらい、似たような内容になっています。相手を主役にする、ということにつきるのです。あえてテクニックを挙げるとすれば、「関心のありかを見ぬく」くらいのものであり、後は「心がけ」のようなものばかりです。

第1原則の「誠実な関心を寄せる」のは、もちろん「関心のありかを見ぬく」ことにつながります。ただ、著者のカーネギーが言っているのは、「何かにつながることがなくてもとにかく他人に関心を向けろ」ということです。カーネギーは誰にでもすぐに関心を寄せることのできる「達人」として、なんと犬を例にとるのです。

こちらが近づくと尾をふりはじめる。立ちどまって、なでてやると、夢中になって好意を示す。何か魂胆があって、このような愛情の表現をしているのではない。家や土地を売りつけようとか、結婚してもらおうとかいう下心はさらにない。

ただこれだけのことができるだけで、犬は人間社会にあって、かなりの特権を得ていることをカーネギーは指摘しているのです。「にわとりは卵を産み、牛は乳を出し、カナリヤは歌をうたわねばならないが、犬はただ愛情を人にささげるだけで生きていける」というわけです。

2.笑顔を忘れない

この原則の効用については、それこそ今さら繰り返すまでもないでしょう。コミュニケーションにかんする自己啓発書であれ、話し方に関するビジネス書であれ、およそ人間関係に関する啓蒙書に、絶対登場する原則です。

カーネギーは簡単にこう書いています。「笑顔など見せる気にならないときは、どうすればいいか。方法はふたつある。まず第一は、無理にでも笑ってみることだ。」

1930年代には、多少、変なアドバイスに思われたかもしれませんが、今ではこれを否定する人はかなりの少数派のはずです。

3.名前を覚える

これもまた、2と同じくらい有名で重要なアドバイスです。もっとも私自身、これはぜんぜんできていると思えません。したがって、これに関する節を読むのは、他のところを読むのに比べて、気が滅入ります。

私としては努力しているつもりですが、もちろん著者のような人から見れば、努力不足もいいところです。私と同じように人の名前を覚えるのが苦手という人は、次の一節を覚えてしまいましょう。

 たいていの人は、他人の名前をあまりよく覚えないものだ。いそがしくて、覚えるひまがないというのが、その理由である。
 いくらいそがしくても、フランクリン・ルーズヴェルトよりもいそがしい人はいないはずだ。そのルーズヴェルトが、たまたま出あった一介の機械工の名を覚えるために、時間をさいている。

4.聞き手にまわる

この第4原則から、最後の第6原則までは、第1原則「誠実な関心を寄せる」を敷衍したものです。いずれも引き込まれるようなストーリーが豊富なので、ぜひお読みいただきたいと思いますが、ここで詳しい解説は不要でしょう。

聞き手に回る」話では、フロイトの事例に感心させられました。アドラーやフロイトなど、著者は心理学者をよく持ち出しています。

5.関心のありかを見ぬく

この第5の原則だけは、それなりにテクニカルです。決して難しいテクニックではありませんし、すでに人脈術や交渉術の書籍などで、言い尽くされていることでしかありません。しかし、この原則を本当に守っている人は、めったにいません。

今ではインターネットがありますから、交渉したりインタビューしたりする相手の、関心のありかを見ぬくのは、かなり容易になっているはずです。やはり「忙しくてひまがない」のでしょう。

このテクニックを実践するためのもっとも簡単な方法としては、自分と関心を同じくする人を、選んで交渉に当たることです。しかし、仕事でそうもいかない場合には、引用されている多くの偉人たちのように、「興味のないものについて夜遅くまで調べ尽くす」ような、地道な努力が必要になります。

6.心からほめる

ほめる、賞賛するというと、なんとなく「お世辞を言う」という印象を残してしまいますが、本書で言われているレベルはすべてそれより一段高いものです。著者は、「自分は重要な存在なのだ」と相手に感じてもらうように言っているのです。

人は誰しも自分のことを重要な存在だと信じたがっているというのは、心理学者に言ってもらわなくてもだいたいわかることではありますが、まさに人間のこの基本心理ゆえに、人をほめることを怠りたくなってしまうのです。しかしこのことを逆にとらえるなら、人を心からほめるというのは誰にでもできるわけではないのだから、アドバイスとして重要な意味を持っていることがわかるでしょう。