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「話しやすい人になる」ための3つの原則

佐々木正悟 これから紹介する原則を「まったく聞いたことのないことばかりだ!」と言う人はおそらく一人もいないでしょう。それほどありがちでしかも簡単な方法ばかりですが、実行するとなると難しいものです。

逆に考えると、実行さえできれば目立った効果を期待できます。すぐにできても実践している人はとても少ないからです。

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1.誠実な関心を寄せる

非常に簡単なやり方です。人に好かれるために、人に誠実な関心を寄せる。これが難しいというのはつまり、人には好かれたいのだが、自分としては他人に興味はない、ということになってしまいます。

ほぼすべての心理学者が同意するようになんと言ってもふつうの人は、自分に最大の関心を寄せています。これは仕方のないことではあります。ガスコンロに手を触れれば、熱い思いをするのもやけどするのも自分ひとりであり、他人は何も感じないからです。

その極端なバランスの悪さが前提にありますから「他人に誠実な関心を寄せら」れれば、誰とでも仲良くなれる可能性は十分にあります。幸いいまはブログとかFacebookとかがありますから「もし自分がこの人に十二分に関心を持っているとすれば」と思考実験しても面白いでしょう。

中学生時代くらいに戻ってみたとしましょう。クラスに気になる異性が一人くらいはいたでしょう。もしその気になる人がFacebookやブログをやっていたら、チェックをしないで済ませるなどということはあり得ないはずです。

2.名前を覚える

よほど変わった人でない限り、机に写真のようなネームプレートを置いておくとは考えられませんが、名前を呼ぶ直前に目が動くのを人は見逃してくれません。

社会人になってみると「人の名前などそうそう覚えておけるものではない」とわかりますから忘れられても笑って済ませてくれる人も少なくありません。それだけに「全部きっちり覚えておく人」の印象は強く残ります。

先日私は保険の外交員の方とお会いしました。私はフリーランスになってから、覚えているだけでもつごう七回、いろいろな方から保険への加入を勧められてきましたが、まともに話を聞いたのは先日会った方だけです。

その方はまるで本の中から飛び出してきたような「なんだかすごい保険屋さん」なのですが、結局何が印象に残ったかと言えば保険の契約などまったくしそうにもない私のことを恐ろしく細かく覚えてくれていたところでした。

その方とは知り合って四年以上になりますが、保険を勧められたことなど一度もなく、にもかかわらず私の名前をフルネームで覚え、年齢も覚えていて、出身小学校(大学ではありません)まで覚えていたのです。

こんなことが自分にもできるとは決して思いませんが、人の名前と顔を覚えておくために、Evernoteをもう少しうまく使い込もうという気にはさせられます。

3.聞き手に回る

写真はもちろん冗談のようなものですが、でも人はやっぱり「聴衆」を欲するものです。誰も聞いていない中でギターを弾き語りするのも洒落ていますが、真剣に聞いてくれるならたとえそれが馬でもうれしいのです。

人にきらわれたり、かげで笑われたり、軽蔑されたりしたかったら、つぎの条項を守るにかぎる—
 一、相手の話を、決して長くは聞かない。
 一、始終自分のことだけをしゃべる。
 一、相手が話しているあいだに、何か意見があれば、すぐに相手の話をさえぎる。
 一、相手はこちらよりも頭の回転がにぶい。そんあ人間のくだらんおしゃべりをいつまでも聞いている必要はない。話の途中で遠慮なく口をはさむ。
 世間には、この条項を厳守している人が実在するのを読者は知っているはずだ。(p128)

これもひどく簡単なことのようで、決してそうではありません。「口をはさまない」くらいなら、あまり喋りたくない人には容易ですが「関心をもって聞く」ということが難しいのです。興味がわかない話では至難です。

だからといってこれを実践するために「興味の幅を100倍広げる」というやり方は非現実的ですし不要なことです。私たちは話に関心が向かなくても人に関心を向けることはできます。そうでもなければ私が娘の意味不明な言葉に注意を向けられるわけがありません。言っていることが分からないのですから。

ここでちょっとまとめてみましょう。

  • 1.誠実な関心を寄せる
  • 2.名前を覚える
  • 3.聞き手に回る

いずれも特別な訓練なしにできることばかりですが、3つとも常にやれている人は相当な人に思えます。途中で挙げたとおり、相手のことが好きなら、これをするのは簡単です。好きな人の名前は簡単に覚えられます。短期記憶の容量を圧迫するとかなんとかいう話は関係ないのです。

すなわち「ありとあらゆる人が好きになれる」人にとって、名前を覚えることなど難しくはありませんが、そうでもない人は別の策として「シャーロック・ホームズ」を見習ってみましょう。彼は別に犯罪者が大好きだったわけでもないでしょうが、犯罪者に関する記憶力は驚異的でした。

不幸にしてコナン・ドイルはホームズの手帳についてほとんど触れていませんが、公開していたらきっと「達人の手帳」として憧憬の的になっていたにちがいありません。アソシエさんが特集を組むほどだったでしょう。

ホームズがあれほど「関係者」のことをよく記憶していたのは、真相に迫りたいという強烈な欲求があって、それを満たすための情報を集めていたからです。そうした情報収集の姿勢を保っていれば、上記の3原則を満たしていけるようになれそうです。

つまり情報収集のやり方がボトムアップではなくトップダウンだったのです。「欠けたピースを探す」というやり方です。私たちは別に探偵ではないので、すべての情報についてそういう方針を貫く必要はないでしょうが、「覚えたい人について」は探偵の姿勢で探ってみてもいいでしょう。

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▼編集後記:
佐々木正悟



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最近こちらの本を読み直しています。サブタイトルの「期待と妄想の心理学」は正しいし面白いのですが、「期待と不安の心理学」ならば簡単だしよかったのではとも思ってしまいます。

というのも、この心理が様々な日常における問題を生み出すからです。その1つが「先送り」です。内容はずっと簡単化してしまっていますが、ダニエル・ギルバートが言ったことを「先送り」というテーマにしぼって書き換えたのが以下の本とも言えるのです。

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私たちは不安なことを未来の自分に期待して先に送ります。でも「幸せはいつもちょっと先にある」ように、「できる自分・やれる自分」もまた「いつもちょっと先にいる」のです。