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タスクシュートには若干の我慢が必要



佐々木正悟 タスクシュートには「軌道に乗ってくれば毎日、ほぼ現実的な内容としてのリストが上がってくるが、その軌道に乗せるまで、リストを組むこと自体に納得がいかない」という特徴があるようです。

あるようです、という変な言い方になってしまうのは、私は最初から納得づくで使っていたからです。

それでも、多くの人が指摘する「タスクシュートのリストには納得できない」という、特に使い始めのユーザーからの不満には、思い当たるところがあります。端的に言えば「リストがショボすぎる」のです。

「1日を使って、こんなにできることが少ないはずがない!」

と思うのです。私もタスクシュート以前には、似たようなことを、1日の終わりに頻繁に思いました。「今日一日、自分は一体、何をやっていたのか」と。

なぜそんな感想を何度も何度も持つような羽目になってしまうのか。よく言われる理由は、実は真の理由でではなく、あまり言われない「本当の原因」が2つあります。

よく言われる理由とは、「時間の使い方が下手」というもの。これは間違っています。
あまり言われない2つの理由の方を、以下で説明していきましょう。

1日という時間を過大評価してしまっている

1つめの理由は、あっけないほど簡単なのですが、この罠からなかなか逃れられない人が多い。私もそうです。24時間でできることを、過大評価してしまうのです。

1日、24時間は、なんだか長い時間です。私たちは、1時間という長さをそもそも長いと、なんとなく思っていて、それでできることをきちんと計測する方法自体を欠いています。

例えば「1時間」は、食事をするのに十分かといえば、食事内容によりますし、食欲によっても変わります。どのみち、食事に十分だからといって、企画書作成に十分かどうかは「わかりません」。

では、「1時間」を企画書作成で測ればいいかというと、作成する企画書にもよるでしょうし、他のたいていの仕事について同じことが言えます。何をするのに1時間が「十分か」ということは、実ははっきりしないのです。それが8時間ともなれば、当然お手上げです。

しかし、こういう「厳密な計測」を行わずとも、毎日タスクシュートで「1日でやろうとすること」にかかる長さを見積もって、実際に1日でどれくらいのことをやれたかを見てみれば、すぐにわかることがあります。「自分は1時間を、いわんや24時間となると、驚くほど過大評価する」ということがわかるのです。

ここでどうしても乗り越えるべき心理的な壁があります。「そんなはずはない!」と思ってしまうことです。とても多くの人がこう思うのです。どれほど厳密に作業記録を残してもです。「もっとずっとたくさんのことがやれた!」と思うのです。

正確な記録がともあれ必要な理由は、これです。1分単位で使途不明時間があってはならない理由は、これなのです。使途不明時間があると、記録を信じきれないユーザーはこう思うのです。「この使途不明時間があるから、こんなにしょぼい記録なのだ。実際はもっとやれたのだ」と。

「君は間違っている。たとえこの記録が、あなたのできるであろう作業の3%であるにせよ、これが真実だ!」と声高に告げる証拠が、まずは必要なのです。1日でできることは、とてもとても少ないのです。タスクシュートを使い始めの頃には、信じがたいほど少なく感じられるでしょう。

最初は焦っている

しかし、軌道に乗っていくにつれて、希望が見えてきます。なぜなら、最初は焦って時間を無駄にするからです。

多分、時間を一番無駄にすることが、焦るということです。何か事情があって、中学3年分の「遅れ」を一気に取り戻したいと思う学生があるとしましょう。

こういう人は、特に優秀である場合には次のように考えがちです。「この1ヶ月で、主要教科3年分の遅れを取り戻そう!」

この心理状態で物事に取り組もうとすると、計画を立てること自体が不可能になります。1日というリストの中に、100日ぶんを詰め込もうとするのです。すると、独特の生理的緊張感に苛まれ、何も手につかなくなり、その間に時間が過ぎていってしまいます。

この種の焦りを完全に抑制することは、できないでしょう。タスクシュート使いだしのころに「作業記録がしょぼくなる」最大の要因はこれです。

最初から、焦りを抑制し、最初から現実的な(自分の理想の3%程度の)計画に押さえておければいいのですが、焦っている人ほど、現実の100倍優秀な自分なら実行できるリストを作ってしまう。

それを目にして仕事が手につかなくなって時間を無駄にし、膨大やなり残しに打ちひしがれて仕事が進められず時間を無駄にし、膨大なやり残しを再調整するために時間を無駄にするのです。

しかし希望はあります。優秀さに何らの変化がなくても、最初から自分にできるリストをこしらえれば、焦燥感から時間を無駄にしなくなるし、打ちひしがれて時間を無駄にしなくなるし、再調整の時間の無駄が激減するため、それらのぶんだけ時間に余裕ができるからです。

そうすれば、理想の3%しか仕事ができなかったのに対して、理想の3.3%くらいの仕事ができるようになるでしょう。

つまり、24時間に対して言うなら、2時間以上を余分に使えるようになるという計算です。