セミナーや本の内容は大きく分けると次の2つのいずれかです。
- 1.主張
- 2.事例
「主張」については、まだ分解の余地がありますが、ここでの役割は「理解してもらう」こと。一方「事例」のほうは、事実あるいは具体例であり、役割は「納得してもらう」ことです。
注意すべきは「事例」には強力なパワーがある、という点です。感情に訴えるのです。
例えば、
- 「受けた恩は決して忘れてはいけません」
と主張するだけでは、相手は「まぁ、そうですよね」としか思わないでしょう。
- 「うぁ~、確かにそうだよな~!!!!!(涙)」
などと感極まる人はまれです。
それが、
- 「タイで実際にあった話です。こちらの動画をご覧ください」
と事例を見せてみる。
↓せっかくなので、実際にその動画を見てみてください。
ご覧になりましたか?
以降は見ていただいた前提で話を進めます。
感情を動かされる
僕自身、この動画を何度か見ているのですが、結末はすでに知っているのにもかかわらず、見るたびに、ぐっときてしまいます。
「いい話だな~」
と感情を動かされます。
「よし、自分も困っている人を助けよう!」
という決意が芽生えたり、
「それに引き替え自分は・・・」
と、少々へこんでしまう人もいるかもしれません。
いずれにしても、
「受けた恩は決して忘れてはいけません」
とだけ言われたときと比べると、その後のインパクトの差は歴然です。
「動画だから」と思われるかもしれませんが、例えば、「政見放送」の動画で感動するでしょうか?
どちらかというと「主張」が中心ですからメディアの種類はあまり関係ありません。
やはり「内容」なのです。
事例から何を学ぶべきか?
さて、今回お伝えしたいことは、
- 「事例」をうのみにするべからず、
ということです。
一番分かりやすい「事例」は「1ヶ月で●kgの減量に成功!」といううたい文句とともに、ビフォー・アフターの写真が載せられたダイエット商材やサービスの広告です。
事例とは、
- 特定の環境下において、
- 特定の時期に、
- 特定の条件がそろった状態で、
- 特定の手順を踏んだ
ことにより実現した結果です。
もし、「この事例のように、自分もなりたい!」と思ったとしたら、同一の環境、同一の時期、同一の条件、同一の手順をすべてそろえる必要があります。
でも、多くの場合、最後の「同一の手順」にしか目が行きません。従って、事例の通りの結果が得られない、すなわち再現性がきわめて低くなるということになるのです。
そこで、事例から学ぶべきは、
「自分だったら、どうするか?」
を自分なりに考えることです。
事例に接したときに僕がいつも考えることは、
「これと同じことをせずに、同じかそれ以上の結果を出すにはどうすればいいだろうか?」
です。
梅棹忠夫さんの『知的生産の技術』に以下のような一節があります。
本は何かを「いうためによむ」のではなくて、むしろ「いわないためによむ」のである。つまり、どこかの本にかいてあることなら、それはすでに、だれかがかんがえておいてくれたことであるから、わたしがまたおなじことをくりかえす必要はない、というわけだ。
…というわけです。