佐々木正悟 
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自信とかやる気というのは不思議なものです。わかっているようで、わかっていません。
これにもっとも自然に迫っているのは、心理学です。しかし、これはあまり知られていないのですが、心理学の中で「自信」とか「やる気」という分野をよく使っているのは「社会心理学」なのです。
その「社会心理学」では「やる気」のことをよく「自己効力感」という言葉で説明しています。
お金などの「外的報酬」ではなく、従事する仕事自体を立派に仕上げたいという「内的報酬」によってこそ、人はやる気になる、といった研究は「社会心理学」の領域なのです。
けれど、私にはちょっとひっかかるところもあります。
「自己効力感」とか「内発的動機づけ」というとき、私達はまるで自分に言い聞かせるように「お金は大事ではない」「他人から褒められることは大事ではない」「本当に大事なのは作業自体に没頭することだ」といいたがります。
きっとそれは本当なのでしょう。うちの５歳の娘を見ていると、確かにそうなんだろうな、とは思います。
しかし同時に私達は、お金を非常に欲しがっています。というより必要としています。
そしておそらく、他人からの賞賛を非常に喜びます。そんなの要らないといわんばかりの人でさえ、けなされたときの落ち込みぶりは、なかなかのものです。
社会心理学（または児童心理学）において、「お金などの外的報酬よりも内的報酬こそ重要だ」ということを「実証した」有名な実験があります。
マーク・R・レッパーのグループが実験したのは好きで絵を描いている子どもたちに「余計な」報酬を与えると、絵を描く意欲を奪ってしまうというものでした。
Mark Lepper and his colleagues (1973) found that giving rewards for playing with markers, which the children naturally enjoyed, could reduce their interest in the activity.
Using the Principles of Learning to Understand Everyday Behavior
この問題は単純ではないのです。私としては「内的報酬が重要なのだ」とまたしてもここで自分に言い聞かせるつもりはありません。
だからといって「結局私達は金次第だ」というのも、なにかひどく不自然です。そういうのもまた「あえてそう言い切りたい」という動機に突き動かされているようです。
個人的な見解としては、事に当たっている最中には、特に好きなことであれば、私達は「立派に成し遂げる事自体に喜びを感じる」、つまり内的動機づけで動くような気がします。
好きなことをやってる真っ最中まで褒められたりお金をもらえることに、そんなに意識を回さないものです。これは注意資源の節約という認知上のメリットからも説明できます。
しかし、ことに取り組んでいないがこれから取り組むとき、または作業が終わったあと、つまり作業の直前直後などは、外的報酬がかなりものをいうように思えます。
なぜなら「ことに取り組んでいない」からです。その時はまだ「報酬や賞賛に回るだけの意識の余裕がある」のです。
人が仕事に取り組むやる気を出す（作業前）ということと、意欲的に物事に取り組む（作業中）というのは、実は異なることなのです。
さらには、作業後に人から褒めて欲しいと思うのもまた異なることです。
それもムスメを見ているときに考えたことです。
一心不乱に「ブロックのおうち」を作っている最中には、私などが口をはさむとうるさがります。しかしできあがってみると私の手を引っ張って「見てみて！」といいます。
作業中は内的報酬100％で作業しますが、作業後は私からの承認という外的報酬を求めているわけです。
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