凹まない人の秘密 | |
林田レジリ浩文
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2008-04-15 おすすめ平均 |
本書は、いつ読んでもいいことが書いてあるようには見えないかもしれません。本書には、本当に読むべきタイミングというものがあります。読むなら、「凹んでいるとき」「本など読みたくもないとき」です。今あなたが、「とりあえずOK」な状態にあるとすれば、本書を読んでも「ありふれたきれい事」しか書いていないように見えるでしょう。
本書で提案されているストレスリダクションのいくつかは、確かに真新しいものではありません。が、「気持ちを立て直す」ことが目的であるなら、本を読むこと自体の効用も考慮に入れておきましょう。この目的で本を読むときには、「読んで面白い」ことも大事です。「すぐに読み切れる」ことも、内容が薄くなければ、いいことのはずです。次のような研究結果も発表されたことですし。
Reading ‘can help reduce stress’
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/5070874/Reading-can-help-reduce-stress.html
言うまでもなく、本書を読むことで得るべき知識とは、「凹まない人の秘密」です。本書には、次のようにあります。
凹まない人々とは、心に弾力性があり、柔軟で、新しい状況に素早く適応し、変化していく環境の中で力強く成功することのできる人たちだ。
ここで大切なのは、彼らは逆境を乗り越えるのを前提にしているということだ。
つまり、「凹まない人の秘密」は、「逆境を乗り越えるのを前提にしているということ」なのです。本書を読む限り、これ以上のことは得られません。しかし、このことが身についていないために「ひんぱんに凹んでしまう」のであれば、なんどか繰り返し読む価値があることになります。言い換えると、「逆境でないことを正常な状態」と信じるあまり、心が落ち込むことが頻繁にあるなら、「凹まない人の秘密」を体得する意味があるわけです。
そして「凹まない人の秘密」が少なくとも知識として分かれば、ここからさらに、次のように展開できます。
「凹まない人」はなぜ、「逆境を乗り越えるのを前提」にできるのか?
本書の中に、それが書かれているはずです。ここでは詳細は省きますが、おおむね次の二点に集約されます。
1.問題解決のスキルをもっているから
2.高い自己イメージがあるから
1の方は問題ないでしょう。誰であれ、「問題解決のスキル」があるなら、これを武器にして、「逆境を乗り越えていこう」という態度でいられるはずです。もちろん、「問題解決のスキル」はその人その人、その場その場で違ってきますが、これを大事にして、拡充することが有益なのは間違いありません。問題は、2です。
「高い自己イメージ」とは何なのでしょう?
このような、抽象的で半分専門用語的な語彙には、要注意です。ありあわせの良さそうな言葉と組み合わされば、「いいことが言われている」ように見えてしまうからです。この手の語は、全く反対の概念、この場合には「低い自己イメージ」というネガティブな概念について、筆者がどう思っているかを見ると、意味するところが分かりよくなるものです。筆者は、「低い自己イメージ」についても言及しています。
あいつは人間のクズだ、と切って捨てたところで役には立たない。人を悪者にしてやっと保てるような、もろいセルフ・イメージではダメなのだ。それをしても彼らが変わってくれるということは絶対にない。彼らの存在に脅かされ続けるのは、あなたなのだ。
ここで筆者がイメージしている「彼ら」と、私が知っている「彼ら」とはもちろん違います。あなたにとっての「彼ら」もまた、違うでしょう。それでも「彼ら」はどこにも必ずいます。日本だろうと米国だろうと昭和基地だろうと、いるのです。これは「逆境を乗り越える前提」より以前の、「逆境はつねに存在する」という大前提なのです。
ですから「高い自己イメージ」を持つ人とは、
・「彼ら」のいないところに行きたいものだと夢見ない
・「彼ら」がいなくなってくれないかと密かに願望しない
・「彼ら」を変えようとしない
人たちなのです。以上のように、「問題解決のスキル」を日々充実させて、「高い自己イメージ」を目指すことが、「凹まない人の秘密」なのです。
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林田レジリ浩文
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2008-04-15 おすすめ平均 |