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イメージで学ぶ 『英会話イメージリンク習得法』

英会話イメージリンク習得法

大橋悦夫もう20年以上も前の話ですが、当時大学生だった僕は第二外国語としてドイツ語を学んでいました。

名詞に姓があったり(男性名詞・女性名詞・中性名詞)、動詞の活用を新たに覚えなければならなかったり、微妙に英語と似た単語があって混乱したりと、それなりに苦戦。そんな折、書店で『Deutsch durch Bilder』という本を見つけてから言語学習の世界が開けます。

イメージで学ぶ

「Deutsch」は「ドイツ語」、「durch」は「~を通して」、「Bilder」は「絵」。

英語で言えば、「German throgh Picture」、つまり「絵で学ぶドイツ語」といった意味です。

アマゾンで探してみましたが見つかりません。20年前の本ですでに僕の手元にもありません。

さすがに絶版か…と思いつつ検索を続けたところそれらしい一冊が見つかりました。おそらく「新版」のようです。



「Deutsch durch Bilder」という名前がどこにも書かれておらず、少し不安になりましたが、中身をのぞいてみると見覚えのある「絵」が。

そうです、間違いなくこれです。

左上のコマから右上、左下、右下の順に、

  • 彼はあそこにいます(Er ist dort.)。
  • 彼らはあそこにいます(Sie sind dort.)。
  • 我々はここにいます(Wir sind hier.)。
  • 彼らはここにいます(Sie sind hier) → 逃げろ!

というように、ドイツ語をイメージで学べる本です。

イラストがあることで、日本語の介入をブロックできます。つまりドイツ語で考えるクセがつくのです。

また、「Er=彼」「dort=あそこ」という単語単体で暗記するよりも「Er ist~」(He is)、「Sie sind~」(They are)という具合に、文の中で動詞の活用と一緒に覚えたほうが実用的です。繰り返し唱えることで「Er ist」(He is)という語の組み合わせが「おなじみ」となり「Er sind」(He are)のような間違いをしなくなります。

その言語の視点で考える

ドイツ語に限らず、外国語を話すときはその言語で考えるようにしないと、いつまでたっても身につかないでしょう。

単語一つひとつについて「日本語でいうと何にあたるか?」を考えていると、いずれ「該当する日本語が存在しない」という壁にぶつかります。そもそも一対一で完全に対応するケースはまれだからです。

例えば、「take」という英単語を「取る」とだけ暗記していると「take care」のような英語独特の表現に出会うたびに暗記内容を書き換える必要が出てきます。

英語の「take」と日本語の「取る」の2つの“円”は完全には重ならない、ということです。

その意味で、20年たった今でも「言葉ではなくイメージで学ぶこと」は有効だと考えています。

コアとの出会い

『Eゲイト英和辞典』という高校生向けの英和辞典があります。2003年1月刊行ですが、この辞書の特徴の1つに「コア」という独特な試みがあります。

同辞典の「はじめに」には以下のような説明があります。

コアとは語の中核的意味や機能を表したものです。コアは、分断され分散されていた意味記述に、意味展開の連続性を回復させ読者に語の意味の全体像を示すことを意図した教育的な工夫です。

具体的には、イラストが付されています。

例えば、「take」であれば以下のようなイメージです(同辞典をもとに大橋が描画)。

Eゲイト英和辞典のコア

これが「take」の「コア」です。このイメージが「語の意味の全体像」であり、「自分のところに取り込む」という一行で補足しています。このイメージを掴むことで、「take」の持つさまざまな語義の理解が促される、というわけです。

高校生向けの英和辞典ですが、この「コア」だけを拾い読みするだけでも多くが得られます。

※実を言うと、僕はこの『Eゲイト英和辞典』のプロジェクトに「電子編集スタッフ」として参画していました。



文の中で覚える

高校時代はトフルゼミナールという予備校に通っていました。印象に残っているのは高木義人さんという講師の方です(調べてみたら現在も講師として紹介ページにお名前が掲載されていました!)。

その高木義人さんから教えていただいたのが「単語は文の中で覚える」です(当時受講生に配布されていた「エクセルシオール」という小冊子より)。

短期決戦の受験勉強では文を覚えるほどのんきなことはしていられないと言う人もいるかもしれないが、これは全く逆だ。例文を覚えながら単語を覚えていけば英単語だけではなく、英語全体の力もアップできるのだ。

たとえば実際にトフルで使っているテキストの最初の文は次のようなものだ。

問題2
Dogs have an (  ) sense of smell. That’s why the police use them to chase criminals.

解答は acute である。この問題は acute(鋭い)の意味を覚えるための文だが、実際には smell(臭い)、chase(追う)、criminal(犯罪者)といった他の重要単語と共に、that’s why(だから~である)という表現も覚えられ、the police が集合名詞で常に定冠詞をつけ、単数形でのみ用い複数扱いされるという文法も理解できる。もちろん that’s why という表現を使ってこの文そのものを英作文に用いることも可能だ。

単語を覚える過程で、暗記しようとする単語だけでなく、それに付随するすべて───単語、語法、文法、読解、英作文───の練習をしているのだから、一石二鳥どころか一石四鳥にも五鳥にもなる。

この教えにならって、当時は以下のような単語カードを大量に作っていました。オモテ面に虫食いクイズを、ウラ面にその答えと類義語や別の用例などを書いておきます。ひまさえあればカードを繰って頭にすり込み、憶えたものはリングから外していく、という“作業”を繰り返していました。

こうすることで、リングに残っているカードがまだ憶えていない“暗記在庫”ということになるため、減っていけば達成感がありますし、増えてくると気合いが入る、というわけです。

音声から入る

かくして目指していた大学の外国語学部英語学科に無事合格することができました。そこで英語はもちろんドイツ語も学ぶことになったわけです。

『Deutsch durch Bilder』に加えて、在学中に出会った印象深い本として『科学的な外国語学習法』をはずすことができません。

そこに書かれていた学習法は斬新で鮮烈なものでした。ざっくりまとめると以下のような手順になります。

  • 教科書を見ずに、テープを何十回も聞く
  • 辞書を引かずに、テキストを音読し、その内容を探ろう
  • 品詞と機能をチェックする
  • 同じ練習問題を何回もやる
  • 書き取りをやる
  • テキストを朗読して、テープに吹き込んでみる
  • 予習は完璧にやる

特に最初の「教科書を見ずに、テープを何十回も聞く」が強烈で、以下の解説にうなずかされました。

効率の良い勉強法は、テープの外国語を聞いたら、その言葉を自分でも唱えてみることである。最初のうちは、日本語に存在しない音(たとえば、フランス語、ドイツ語の[r])が全く聞こえなかったり、話し方が早いために、よく聞き取れなかったりで、テープから流れてくる外国語の音について行けないが、聞こえた音を自分で唱えているうちに、聞こえない音も、次第に聞こえてくる。

「テープで音を覚え、その後で文字を見る」という順序は、絶対に守られなければならない。その逆に、音を聞く前に、教科書を見ると、間違った発音で、文字を読んでしまう。

また、音を聞きながら、テキストを見ているのも、実に悪い勉強法だ。これをやると、音を聞いた途端、文字を思い浮かべる、という困った条件反射が出来上がり、外国語の習得、特に、会話学習の妨げとなる。音を聞く時は、目を閉じていた方がよい。



英会話イメージリンク習得法

前置きが長くなりましたが、ようやく本題です。

今回ご紹介した、

  • イメージで学ぶ
  • その言語の視点で考える
  • コアに注目する
  • 文の中で覚える
  • 音声から入る

といった一連のトピックはいずれも僕自身が外国語を学ぶ上では欠かせない要素だと考えています。

これらのトピックが漏れなく入っているのが以下の本です。



たとえば、「イメージで学ぶ」については以下のようなイラストが随所に登場し、理解を助けてくれます。

英会話イメージリンク習得法

  1. I と言って、自分の胸に手をあてます。
  2. didn’t care と言って、手を前方へ向けていきます。
  3. for と言って、その方向に両腕を広げます。
  4. the guy’s attitude と言って、その範囲内に想像上の「その男」の態度を出現させます。
  5. すぐに who と言って、手を「その男」に向けて焦点を合わせ直します。
  6. showed と言って、手をその男から別の方向(この場合、自分の方向)に向けます。
  7. meと言って、自分の胸に手をあてます。
  8. the car と言って、手を胸の前で上にして、そこに車を出現させます。

↑実際にこのように身体を動かすことでイメージが深まるわけです。

次に「コアに注目する」については以下のような解説があります。

英単語そのものを理解するには、辞書を引いたときに出てくるような多くの意味に共通する「単語のコアとなっているイメージ」を抽出することが大切です。

という一文のあとにまさに「コア」のようなイメージイラストが付されています。例として「get」が挙げられているのですが「何かのアクションによって自分のものにする」という補足説明がついています。

ちなみにこの後に「網目」というメタファーが出てくるのですが、これが僕にとっては衝撃でした。何となく考えていたことが見事に言葉で説明されていたからです。

また、「音声から入る」については以下のような解説があります。

音のつながりに慣れるにはモデル音声をリピーティングして、つながった状態の音を自分のなかに蓄積することが大切です。話すことができれば、その言葉は聞き取ることもできます。そのため英会話を習得するにあたってリピーティングは一石二鳥の方法といえます。


このほかにも、英語を学ぶうえでの心構えや具体的なテクニック、たとえば、英会話レッスンを受ける上での注意点などについても言及があり、実用的だと感じました。

↓中でも以下は「なるほど!」と思いました。

インプットとアウトプットのバランスは、学習初期のころはインプットの10分の1程度の時間をアウトプットに当てるのが適当でしょう。1週間のインプットが120分なら、アウトプットは12分程度ということです。これでは少ないと感じるかもしれませんが、レッスンで何を言うか120分かけて考えたとしても、実際には10分間ももたなかったりするものです。

オンライン英会話が流行っていますが、時間設定をどうするかを考えるうえで参考になりますね。

個人的なところでは、この本を読んでから洋画を観るときの聴き取りがしやすくなりました。リスニング能力がアップした、ということではなく、役者が何かセリフを言うときに動詞に注意が向くようになったのです。

この動詞 opens の次に何の単語がきたか思い出してみてください…。

そう、答えは「the door」です。

Taro comes home from school and opens the door enthusiastically.

しかし、なぜ enthusiastically(元気よく)ではなく the door のほうがしっくりくるのでしょうか? それは動詞 opens がその行為を受ける the door をせっかちに要求しているからです。とくに enthusiastically を強調したいという場合でも、opens と言ってしまった以上はすぐに the door と続けなければなりません。

ネイティブは opens と言ったすぐ後に、その行為を受ける the door がこなければ、opens という行為が宙に浮いてしまうように感じるのです。

このように動詞の後ろには、その動詞が要求する単語がきます。また動詞によっては何も単語を要求しないものもあります。つまり、動詞が英文の流れを決めているのです。

当たり前のことのように思えますが、この「動詞が英文の流れを決めている」というちょっとした“補助線”を得たことで、英語に接するときに自然と動詞に注意が向くようになるわけです。

映画を観ていても、動詞が際だって聞こえてくるようになり、より物語に入り込めるようになりました。

まとめ

というわけで、『英会話イメージリンク習得法』、Kindleでも読めますので、英語学習の効率を上げたい方はぜひ読んでみてください。



参考文献



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