あなただけの知識のフィールドを作り出す Mac のナレッジ・アプリ

堀 E. 正岳興味深い記事を読んだり、覚えておかなければいけないアイディアをひらめいたりしたとき、そして保存しておきたい画像やファイルが手に入ったりしたときに、それを保存する場所が一意に決まっていますか?

知識やアイディアやファイルはそれ単体では単なるデータに過ぎません。しかしたくさんの知識を一つの場所に蓄積して、相互の関連性を地道に組み立ててゆくことによって錬金術のようにデータが変貌する瞬間がやってきます。それまで見えなかった関連性が急にあきらかになり、断片的な経験をつなぎ合わせる「フィールド」が生まれるのです。

こうした知識のフィールドを生み出す昔ながらの方法はノートや情報カードですが、ウェブ上にあふれている情報を記録するにはデスクトップ上ですべての情報をキャッチし、必要なときに取り出せるアプリが便利になります。

Windows では OneNote や 紙copi といったアプリが有名ですが、その代替となるアプリが Mac にもたくさんあります。ここでは私の好みで代表例5つを選んでみましたので、ぜひそれぞれの長所と短所を比べてみて、一番合ったツールを選んでみてください。

 

Evernote:新世代のナレッジ・アプリ

evernote1最近人気がうなぎ上りの Evernote は、データが「クラウド」のなかにあるという点がこれまでのナレッジ・アプリとは一線を画しています。

ウェブページであれ、ファイルであれ、メモしたアイディアであれ、Evernote に投げ込んだデータはすぐにネット上にシンクロされてウェブ上でも、Windows マシンからでも、iPhone、Windows Mobile からでも閲覧可能になります。これが Evernote を利用する最大のメリットと言えるでしょう。

発表当初「日本語ではあまり利用できない」と敬遠されていた画像からテキストを自動認識する機能も、少しずつですが対応が進んでいます。まだ完全ではないものの、名刺やスキャンした説明書からわかりやすい日本語を拾う程度のことはできるようになりました。この機能もぜひ試してみて、その威力をご覧ください。

一方で、現時点での Evernote の最大の欠点は検索が不十分な点です。Mac 版のクライアントでは英語の検索はほぼ問題ないものの、日本語となると検索にひっかからないケースが多くみられます。今後ゆっくりと改善すると思われますが、その間はノートブックの分類とタグ付けをしっかりと行い、迷子のノートがないように気をつける必要があるでしょう。

 

DevonThink:重量級の個人データベース

devonthink1Evernote があまりに便利なのでそれ以外のアプリにスポットがあたることが少ないのですが、Mac にはそれ以外にも多彩な機能をもったナレッジ・アプリがそろっています。その中でも最重量級なのが Devon Technologies の DEVONThink です。

Evernote ではノートに貼り付けることのできるのは画像や音声のみで、しかも 25 MB の上限がありますが、DEVONThink をはじめとして以下で紹介するアプリでは基本的にノートを RTF で保存していますのでそうした制限はありません。Evernote では直接視聴できないムービーファイルも、DEVONThink ならちゃんとその場で再生することが可能です。

DEVONThink の特徴は格納したノートをリストの形だけではなく、アイコンビューや3カラムビューといった5種類のビューで眺めることができる点と、類似性や関連性でノートを探してくれる検索機能です。検索フレーズを入力すると、DEVONThink は独自のアルゴリズムでそのフレーズに関連したノートを探し出し、その関連性の高い順序に並べてくれます。ノートが膨大になってきたときでも一発で検索できるという安心感がありますので、どんどんデータを入力することが可能です。

もともと DEVONThink は日本語の検索は得意ではないのですが、検索窓で “phrase” を検索するように選ぶことで今のところ Evernote よりも優れた検索が可能になっています。

DEVONThink のもう一つの特徴は、データベースをそれぞれ個別のファイルとしてセーブすることができる点です。これによって、仕事のデータ、遊びのデータという具合にデータを分割することができます。

DEVONThink 自信には複数 Mac とのシンクロ機能はありませんが、データベースファイルを DropBox に入れることで擬似的に Evernote のようなクラウド化を行うことは比較的簡単です。

現在パブリック・ベータの段階にある DEVONThink 2.0 ではやっとタグ機能が追加されますので、Evernote よりも強力で、下の Yojimbo と同じくらいフレキシブルなアプリに進化することが期待できそうです。

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Yojimbo:エレガントで高速

yojimbo1DEVONThink がパワフルすぎてかえって使えない、もっと簡単なニーズに応えてくれるものはないかという人にぴったりなのが BBEdit を作っている会社として有名な Barebones Software の Yojimbo です。

Yojimbo は軽量かつ高速なのが利点として挙げられます。DEVONThink はデータが大量になるにつれて動作が鈍くなる傾向がありますが、同じ容量なら、私の経験では Yojimbo の方が早く動作してくれます。

Yojimbo にはふだん最も利用するであろうテキストノートや、画像・音声・PDF・動画などの基本的なファイルの読み込みに加えて、パスワードやシリアル番号を記録する機能があります。たくさんのパスワードを、一つのマスターバスワードを使って秘匿することができますので、シリアル番号の管理には重宝します。

もう一つの大きな魅力は、強力なタグ機能です。Evernote にもタグ機能はありますが、管理が大変で使うのが難しいという欠点があるのに対し、Yojimbo では複数のタグに関連したノートをまとめて表示する「タグコレクション」を作成できるので、タグを用いた整理整頓が楽になっています。

ネットワーク上でのシンクロは Mobile Me の iDisk を介したものが正式にサポートされていますが、コマンドラインを扱うことができる人なら Dropbox 内に Yojimbo のライブラリを移動し、シンボリックリンクを張るというハックですぐにクラウドに対応させることも可能です。

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Journler:マルチメディアの日記帳

journler1Yojimbo と機能がほとんど重なっているものの、ブログを書く人向けの機能が多いのが Journler です。Journler を開くとまず気がつくのが左上のカレンダーで、基本的には時系列順にテキストのメモや写真、動画などを投げ込むという感覚で使います。ブログを書くときのテキストの断片、画像の素材などを一元管理するような使い方に向いています。

Journler には Yojimbo や Evernote と同じようなタグ機能だけでなく、一つ一つのノートにカテゴリを設定することもできますので、Wordpress と同じような、カテゴリで「分類分け」してタグで「意味づけ」をするという二軸検索が可能になります。柔軟性の高いスマートフォルダをいくつでも設定できるという点も Journler が Yojimbo より優れている点です。

残念なのは、Journler には現時点では複数マシン間のシンクロ機能がないという点です。これも Yojimbo 同様、DropBox を使ったハックである程度は解決できますが、いくつかの問題も指摘されていますので、試す方は自己責任でお願いいたします。また日本語と英語が混じったノートでは検索に不具合がみられることもあり、ちょっと気むずかしい面もあります。

素晴らしいアプリでファンもおおぜいいるものの、作者がすでに他のプロジェクトを中心に活動されていますので、開発のペースが遅くなっているのも気にしておいた方がいいかもしれません。

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VoodooPad:その場でつくる Wiki アプリ

voodoopad1Wikipedia に代表される Wiki は手軽に知識の編み目をつくることができる便利なツールですが、たいていの Wiki サービスはネット上でしか使えないので、「いつでも、どこでも」編集するというわけにはいかないことが多くあります。

そんな悩みを解決してくれるのが VoodooPad という、普通のリッチテキストエディタに Wiki の機能を搭載した異色のソフトウェアです。

VooodooPad は普通のエディタと同じようにテキストを書いたり、情報をドラッグ & ドロップすることで情報を追加していきますが、ハイパーリンクを作りたいと思ったときは TableOfContents という具合にキャメルケースの用語を使ったり、マウスで選んだ任意の文字列にリンクを張ることであっという間に Wiki ベースのテキストを構築していけます。

テキストだけでなく、ファイルや、URL に対してリンクを作成することもできますし、PDF などを埋め込むことの可能ですので、リンクがたくさんあるドキュメントや説明書、目録を作るのに力を発揮します。

できあがった VodooPad のドキュメントは HTML に書き出したり、iPhone 用に書き出して VoodooPad の専用リーダーで閲覧することも可能です。MobileMe、あるいは任意の WebDAV サーバー上でシンクロさせることも可能ですので、いつでも使える Wiki ツールとして力を発揮します。

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まとめ

デスクトップにダウンロードしたファイルのアイコンが散在していて整理ができない! という方は、ぜひこうしたアプリを導入してひとまずすべてを投げ込んでみてください。ちょっとした検索やタグ機能を使うだけで、これまで手動で管理していた情報がすべて指先のコマンド一つで呼び出せるのはなかなか気持ちがいいものです。

さて、今回は情報管理についてでしたが、次回もテーマをきめて Mac で仕事に使えるシェアウェアを紹介していきたいとおもいます。扱ってほしいテーマや、紹介してほしいアプリなどありましたら、ぜひご連絡ください。

 

 
▼最近気になっている一冊:

日本語訳したら、「キャリアに背を向ける成功術」とでもいうべき本で、自分が好きなことをお金に変えて生活するための実践的方法という売り込みでアメリカのブロガーの間で話題になっていました。ちょうど Amazon.com から届いたところですので、明日の通勤から読み始めます。

 

▼編集後記:

実は今週から新しい職場で仕事を始めて、新卒の学生さんたちといっしょに新任研修を受けていました。背筋がピンと伸びた、若々しい人たちと席を並べて研修をうけたのですが、なんだかこちらまで若返ったような気持ちがしました。でも向こうから見たら情報カードを目の前に並べている変なおじさんだったのかも?

 
▼堀 E. 正岳:
「これからMacを始めたい人」を徹底ガイド。Lifehacking.jp主宰。