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蔵書整理の苦しみから解放される4つの方法

倉下忠憲
読書好きの人は、本をよく買います。

すると、当然のように本が増えていきます。結果、増えすぎた本は物理的スペースを圧迫し、捨てるなら捨てるで、心の痛みと闘わなければいけません。

  • 本を読むのが好き → 本を買うのが好き → 本が一杯で困る → 本を捨てるのも辛い

最初「好き」という気持ちからスタートしていた行為が、やがて問題を引き起こしてしまう。こういうのは「恋愛」に少し似ているかもしれません。なんにせよ、切実な問題であることは確かです。

著者のように2万冊を超える蔵書を持つ人ならば、深刻な問題とすら言えるでしょう。



増え続けてゆくもの。汝の名は本

今のところ私の蔵書は、「蔵書の苦しみ」を感じるところまでは増えていません(ただし妻がどう感じているかはわかりませんが)。しかしながら、年々本棚が圧迫され、カラーボックスが追加され、さて次はどこに置こうかしら、と考えることが増えてきたことは確かです。

『知的生活の方法』の中で渡部昇一氏は以下のように書いています。

(前略)知的生活とは絶えず本を買いつづける生活である。したがって知的生活の重要な部分は、本の置き場の確保ということに向かわざるをえないのである。

物書きの仕事を続けていくのならば、本の置き場問題に正面から向き合う必要があることは確かでしょう。

でないと、いつの日か本書にあるように「足の踏み場もない書斎」が出来上がるのは目に見えています。本書で紹介されている「本が重すぎて床が抜けてしまった」という話も、笑い話には聞こえません。

4つの方法

さて、増え続ける本との付き合い方にはどのようなものがあるでしょうか。本書を眺めると以下の4つの対応が見えてきます。

  • 増える本に合わせて住居を拡張する
  • 一大決心をして、大量に捨てる(ないし売る)
  • <自炊>して、量を減らす
  • そもそも本を増やさない

増える本に合わせて住居を拡張する

一番理想的なのがこの方法でしょう。

本が増えるたびに本棚を増やし、本棚が増えすぎれば広い家に引っ越す。時には、本棚を設置するために最適化した家を建てる。あまりに理想的が高すぎて、現実(と年収)が追いつかないのが問題です。

置き場所を拡張する方法であれば、トランクルームを本の置き場に使う人もいるようです。こちらは(多少)お安くすみそうですね。

一大決心をして、大量に捨てる(ないし売る)

一番ありがちなのがこの方法でしょう。

本書でも、古書店に本を引き取ってもらうエピソードが数々紹介されています。また、自分で「一人古本市」を開催する方法も触れられています。

しかしながら、「一大決心」がくせ者です。何かしらのきっかけがないと「一大決心」など出来ないものです。

おそらく「引っ越し」はそれを生み出す一番よい機会でしょう。引っ越しするなら、本を捨てる。なかなか良い教訓です。が、逆に言うとそういうイベントが発生しないと、本を捨てられない、ということでもあります。

何かしら行動を起こすためのトリガーを設定しておく必要がありそうです。

<自炊>して、量を減らす

一番注目されつつあるのがこの方法でしょう。

断裁機で本を切断し、スキャナーでそれを読み取って、電子ファイルを作成する。OCRをかければ、電子書籍のように読むことができます。家を新調するほどの大金はいりませんが、少々の設備投資が必要になります。

ただし、「読む」ための本には活用できても、「集める」「保存しておく」ための本には使えません。人によっては、本もコレクションの対象になるのです。

ある部分では「残す」、別の部分では「捨てる」という、二つの要素を持っているのがこの方法です。

そもそも本を増やさない

一番合理的なのがこの方法でしょう。

本を買わなければ、本は増えません。

まあ、そんなことが簡単にできるくらいなら、初めから大量の本で悩むこともないわけですが。

ただ、本棚に本を増やさなくても本を読むことはできます。一つが図書館の利用。もう一つが電子書籍の利用。前者は古典的な方法ですが、最近では後者の方法も十分選択肢に入ります。

電子書書籍には電子書籍の悩みがありますが、「保管する物理スペースの確保」の悩みからは解放されることは間違いありません。狭い日本では、その問題は結構深刻な問題になるので、有力な選択肢ではあるでしょう。

さいごに

もちろん、この4つのどれかだけを選択しなければならない、というわけではありません。適度に組み合わせる「ハイブリッド」が一番現実的な方法でしょう。

私の場合であれば、

  • 本棚から溢れ始めたら(床に積み始めたら)、「捨てる」アクションをとる
  • 「読む」だけで構わない本は、電子書籍で買うようにする

あたりに落ち着きそうです。

本棚を増やす余地はありませんし、自分で自炊するのは面倒なので、これぐらいが現実的なラインでしょう。

ちなみに、本書の中に「売るより焼かれるほうがいいだろう」という言葉が紹介されているのですが、この気持ちはなんとなくわかります。売りに出すよりは、捨てたい気持ちがあるのです。まったくもって経済的合理性はないのですが。


▼参考文献:

本書にも「蔵書」との付き合い方が紹介されています。


▼編集後記:
倉下忠憲



今のところ1500冊~2000冊ぐらいの本があるのではないかと推測していますが、数えていないので定かではありません。このぐらいなら、普通の部屋でもなんとかなるレベルです。ただ、これが倍になったらさすがにきついでしょうね。2万冊なんて考えたら・・・。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。