本との「出会い方」について、意識したことはありますか?
- 「人から勧められた」
- 「タイトルが気になった」
- 「装丁にひかれた」
私が本を手にするのは、だいたい、この3つの理由によるところが大きいです。
ただ、買ってすぐに読むかといえばそういうわけでもなく、一度にまとめて買うことが多いので、すぐには読まないこともあります。
そんな風に、積ん読になっていた本の内の1冊が、『ハーバード流 自分の限界を超える思考法』(マリオ・アロンソ・ブッチ著)でした。
タイトルにひかれて買った本です。
本の内容自体に、感銘を受けたことは確かで、私がいつもブックレビューを書いているCNET Japanに、そのレビューを執筆しました([ブックレビュー]可能性を無限に広げるために「ハーバード流 自分の限界を超える思考法」)。
しかしながら、私が衝撃を受けたのは、この本を「最も必要な時」に読んだ、という事実です。
手術を控えていたからこそ必要な本だった
この本を私が読んだのは、2日後に腹腔鏡下胆嚢摘出術(胆嚢を取り除くための手術)を控えた病室でした。
手術を受ける前ですから、元気ですし、入院中とはいえ、暇な時間の多い時期です。
まだ読んでいなかったこの本を、荷物に入れてきていたのです。
驚いたのは、「第6章 最高の自分と最低の自分」の「人生を切り開くには、自分が知らないことを認めて、苦しい学習曲線をまた一からやり直さなくてはいけない。」(95ページ)という節です。
そこには、著者が、腹腔鏡手術が普及した始めたときに、それまでとはまったく異なる手術法を、苦労して一から習得し直したというエピソードが書かれていました。
そこで初めて、著者の経歴を巻末で確認し、「消化器系の執刀医」であったことを知りました。
そして、「第10章 すべては態度しだい」には、自分の症状をポジティブに考える患者さんと、ネガティブに考える患者さんとで、傷の治り具合に違いが出たというエピソードが書かれていました(当然、ポジティブに考える患者さんの方が、回復が早かった)。
この手術の2ヵ月前に、同じ先生に盲腸で緊急手術をしてもらっていたので、不安は少ない方でしたが、やはり外科手術を受ける身としては、多少の不安はあります。
「なんとベストタイミングで、必要な本を読んだのだろう、自分は」
と、感動しきりでした。
この2箇所は、自分に手術の予定がなかったら、それほど印象に残るエピソードではなかったかもしれません。
しかし、この本を手術前に読んだことで、手術に対する信頼感というか安心感が増し、手術後も多少の具合悪さはポジティブに受け止めて、自分の体を信じて早期回復に向けて集中しよう、という気持ちになれました。
ただ、自分では無意識で選んだ本のつもりでも、気づかなかっただけで意識して選んでいた可能性もあります。
それにしても、こういう本との出会い方は、誰にでも経験あることかもしれませんね。
▼海老名久美:
フィーリング重視のガジェッターでライターで翻訳者。「SPEAQ」の中の人。