『やる気ハックス』は「やる気」の専門家ともいえる佐々木正悟さんの最新刊。
中でも以下は「やる気」の正体に肉薄するクライマックスの一節。
人は「完遂しなければならない」と思えば思うほど、よりたくさんのやる気を脳に要求することになります。しかし、この要求が過剰になれば、需要と供給のバランスが合わなくなり、「やりたくない」と感じてしまうのです。(p.170)
そもそもなぜ、やる気が出ないのか。そして、やる気を出すにはどうすればいいか。
本書は全6章から成り、各章の冒頭に「プレ講義」と題された当該章の「まえがき」があります。全6講義のタイトルは次の通り。
1.「やる気」は限りある貴重なエネルギー
2.脳が「やる気」を提供する4つの条件
3.トリックを仕掛けて「やる気」を引き出せ
4.「やる気」上昇のためのアイテムはどう使われるか?
5.デッドラインを設けて脳を動かす
6.脳との正しい交渉、間違った交渉
この中で個人的に注目したのは、3の「トリックを仕掛けて〜」。
実は僕自身、同じようなことを考えていたことがありました。何が同じかというと、意図的に何かをしようとすることはその内容を事前に脳に察知させられてしまう、という構造です。
スキー初心者は転倒しないことばかりを考えているがゆえに転倒してしまいます。「うまく滑ろう」と思っても、結局「転倒しないように」という思考のループに迷い込んでしまうのです。
仕事でも同様で、「終わらせなければ!」と思えば思うほどやる気は逆噴射して、いっこうに「終わらせる」ことができなくなりがちなのです。
このように、自分の身体にも関わらず自分の意のままにならないもどかしさの中で、どうにかして脳をだませないか、と折に触れて考えていました。
その答えの一部は、「『脱線』をスケジュールに組み込んでおく」とか「『やらなきゃ意識』を変えてみる」といった項目として本書に収められています。
他にも「脳」というブラックボックスの中から、求める果実である「やる気」を引き出すための具体的な「ハック」がシチュエーション別に紹介されています。
読み終えた後も、どうにもやる気が出ないという時に改めてひもといてみると、その時々の状況に合った「やる気ハック」に出会えるでしょう。
逆にいえば、「やる気」に困っていない時に読んでも、その有用性に気づかないかもしれません。
▼関連:
・『やる気ハックス』出版&出版記念セミナー