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「ビッグ」にはなれなくても「好きなことをして食べていく」という選択肢もある

「デートしてください」

こう言ってみました。あなたのピュアな気持ちそのままですね。
これだと断られる確率が高いですよね。
ですが、コトバ次第で結果を変えることかができます。

「驚くほど旨いパスタの店が
あるのだけど、行かない?」

こう言ってみました。相手は行っていいかも、と思う確率がぐんと上がるコトバです。
どちらにしても、実は「デートしませんか?」という同じ内容なのです。

伝え方が9割
伝え方が9割 佐々木 圭一

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私はちがうと思うのです。


著者の佐々木圭一さんは正しいのでしょう。と言うよりも、おそらく今までは「唯一正しいとされてきた考え方」がこれでした。鮮やかでもありますし、興味深い。ただこれをどこまでも追求しているうちに、私達は息苦しくなってきたような気もするのです。

あなたはパスタが好きなのか?

佐々木圭一さんの言っているのはもちろんたとえ話です。つまりこれはマーケットにつながる話であり、読者もそれを承知の上で読むはずです。

ですが私が問題としたいのは、デートへのお誘いであれ、キャッチコピーであれ、同じなのです。つまり「驚くほどうまいパスタの店」に行きたいと思っているのはお相手であり、あなたはパスタが好きなのか?ということなのです。

「意中の相手と食事ができ(その上もしかしたらもっと楽しいことになるかも♪)るんだから、食事の好みはこの際問題じゃない。実は俺は天丼が食べたくて、パスタなんか全然好きじゃないが、それが何だというのだ?」

ということかもしれません。しかしこの「自分が好きでも何でもないものをネタに使ったり売り込む」ということに猛然とエネルギーを費やすうちに、何のために自分が生きているのか分からなくなったり、そこまで行かなくても、労働意欲が完全に失せているのに徹夜で仕事をするということになっているのではないか、とも思うのです。

デートのたとえ話でいうなら、自分の好きなものが天丼であるなら、天丼が好きな相手と一緒にデートしようとする方が、おそらく楽に楽しめるだろうと言いたいわけです。

「相手の好み(メリット)」を一切に優先させることが「唯一の解」ではない

思えば私達はずっとこう教え込まれてきました。お相手が、お客様が何が欲しいのか知れ。それを全てに優先せよ。お相手の、お客様のご不満を知れ。それを取り除くことを全てに優先せよ。

立派で優れた態度ですが、大きな問題がひとつあります。やる方がかなり疲れるところです。演技していることがばれないようにする。心から相手のことを想う。自分自身はどこまでも消耗する。なぜならそれが仕事だから

「それが仕事」になってしまうのは、多数を相手にしすぎるからだと思います。『伝え方が9割』の佐々木圭一さんもまた、多数を相手にする能力で表彰されるほどの人です。

日本人初、米国の広告賞OneShow Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。アジア初、6カ国歌姫プロジェクト(アジエンス)。カンヌ国際クリエイティブアワードでシルバー賞他計3つ獲得、AdFestでゴールド賞2つ獲得(どうぶつ救援本部)、アジアで最も成功したと評価されAIMアワードグランプリを獲得、など国内外51のアワードを獲得。
広告以外には、郷ひろみ・Chemistryの作詞家として、アルバム・オリコン1位を2度獲得。日本動物愛護協会最年少理事。雑誌「動物たち」のカバーデザイン。WarnerMusic Japanのレーベルロゴデザイン。

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実に輝かしい経歴です。「天丼」(自分の好み)を優先しているようでは、決してここまでは行けないでしょう。

しかし一般の好みを優先し、追求しようとするなら、誰にでも直感的に好きになれるような「何か」を見つけ出し、強調しなければなりませんが、自分と自分そっくりな人の好みを押し出せばいいだけなら、そんなに大変なことをせずに済みます。

米国の広告賞を取ることはできないでしょうが、その代わり情報収集(他人の好みを知る)も、情報分析(他人の本当の好みを知る)も、キャッチコピーの勉強(他人の好きなことを他人に印象づける)も、価格競争(他人が好きなものをより安く売る)もいりません。「僕ってこれが大好き。いいでしょ、これ?」で済みます。

稚拙かも知れません。安易すぎるかも知れません。だから「それが仕事だ」と見られないかも知れません。大多数の人に高い評価をいただくこともできません。でもそれで食べていくことは、けっこうできるものです。少なくとも「それが仕事」というほどのことをする多大なエネルギーを、自分の好きなことに振り向けて、それをスムーズにシェアすればいいので、軌道に乗せるのが簡単です。

なによりも「天丼」を食べていられます。「天丼が好きな人、一緒に食事に行きませんか?」というだけで「仕事」になるかも知れません。「この世に天丼が好きな人は私だけで、他の誰も興味を持ってくれなかったらどうしてくれるんですか?」と尋ねられる(詰め寄られる)ことも多いのですが、「この指とまれ」をやってみる価値くらいはあるはずです。

「驚くほどパスタがうまい店」を探しているうちに消耗しかけているくらいなら、やってみることです。少なくとも「驚くほどパスタのうまい店」が唯一の正解ではないと思います。

▼編集後記:
佐々木正悟

ライフハック心理学 | 佐々木正悟のブログです

こちらの「シゴタノ!」とは比べものにならないくらいひっそりしたブログですが、私自身も結構長い期間ブログというものをやっています。

私自身はプロブロガーでもなければ、アルファブロガーでもありません。ブログ自体からの収益はゼロに限りなく近く、コンビニで1日働く賃金にも満たないはずです。

私はブログで「自分発のライフハック」を紹介しています。「私が考えるライフハックというもの」も時としてテーマです。「人様のライフハックだけどすごく秀逸だから紹介したい」ということもあります。そして多くのライフハックは心理学に関係していると思うから、こういうブログタイトルになっています。

ブログはいいものです。何がいいのかはうまく言えません。なによりも「天丼」を食べていられるということかもしれません。少なくともパスタ好きでもないのに「パスタが一番です」などと言わなくていい。とくに私のようにブログで何を得ているかがハッキリしないならば、自己主張を自分に完全に許せる所がブログなのです。