- 2013/01/23追記:Amazonでの予約がスタートしました!
本書は、2006年頃からずっと一緒に仕事をさせていただいている大橋悦夫さんとの、意外にも久々の共著になります。
多くの人に振り返っていただきたいと思うことがあります。iPhoneのように新機種が登場する度に性能が「2倍」になると言われているものが何度も登場しているのに、ストレスは決して2006年代の半分にもなっていないという事実です。
シニカルな人たちにいわせれば「そんなのはあたりまえのことじゃないか」ということになるでしょう。でもシニカルな人たちでさえストレスが少しでも減れば気持ちはいいでしょうし、毎日終電まで残業するよりたまには早く帰りたいと思いますし、心を病む人が1人でも増えた方がうれしいなんてことはないはずです。
技術の進歩のわりにストレス・フリーが遠いのは、何もiPhoneや仕事術やライフハックのせいではありません。世にiPhoneがなく、仕事術も一切なく、ライフハックという言葉がなくても、ストレスはやっぱりあるはずです。
ストレス・コーピングや仕事を仕上げるのに効果的なのは、効果的な方法だけは手放さず、着実に、気長に実行することです。
『スピードハックス』の時から変わったこと
私が大橋さんと仕事をするようになったきっかけは、日経ビジネスオンラインの連載です。この話はあちこちでしてきましたし、本書刊行と直接関係はないのでここでは割愛しますが、当時「ハックスシリーズ」として走り出していた頃には、自分がライフハック好きということもあって、とにかく「知っていることを出しまくろう」という熱気で突き進んでいました。
▼文庫版
300ページ近いボリュームという事もあるが、普段からlifehacksや仕事術をチェックしてる事を前提に書いてるからかなぁ。
手応えありです。
1冊の本でU3規格のUSBメモリーから腹側被蓋野、即座核まで幅広い。仕事術の仕組みづくりに長けてる大橋氏と心理学が専門の佐々木氏が共著である事でお互いの専門性がうまく引き出された感じですね。
このようにありがたい書評をいただいたのは2007年の1月。面白い内容だったという自負もありながら、いかにも「知っていることを出しまくろう」という、処女作的な本でした。当時としては重宝したU3企画のUSBメモリなど、今となっては「懐かしい」以外の何ものでもありませんね。
いまなら、こういう「明らかに古くなる技術」を前面に押し出すことには、結局書くにせよ抵抗を感じます。おじさんくさい感想ですが、当時はやっぱり「若かった」のです。
◆U3メモリは、通常のメモリと違い、アプリケーションのインストールが可能。
つまり、パソコンでの作業環境を丸ごと持ち歩くことができるワケです。
私のように家族に隠れてブログをやっている人には、必須かもしれませんね。
「クラウド」などという発想に技術が追いついていなかった時代でも、「仕事術」に関心のある人たちがやりたかったことは同じでした。「パソコンの作業環境を丸ごと持ち歩きたかった」のです。「設定移行」の煩わしさに悩んでいたので、まだない「クラウド」によって生産性が向上し、ストレスもグッと減るだろうと信じ切っていたものです。
少し振り返るなら、この当時にはクラウドのみならずiPhoneだってありません。Facebookはもちろん、Twitterのような「マイクロブログ」も全く一般的ではなく、それどころかGmailすら十分広まっていなかったのです。Evernoteもないのです。(どうやって仕事していたんだ?)
ある意味では「工夫の余地の大きな時代」だったとも言えるでしょう。
そう思えば、今は恵まれています。もう少し「ストレスフリー」とまでは言わなくても「ストレスレス」を本当の意味で実現したいところです。
『スピードハックス』の時から変わらないこと
効果的な方法だけは手放さず、着実に、気長に実行すること、と冒頭で書きました。そのためには、新しいテクニックを盛り込んで交通整理するだけでは不十分です。
そもそも事態が良くなるどころか、問題がよりいっそう深刻に悪化しているということすらあります。技術が進歩するにつれ、事態が良くなるどころかますます悪くなるということもあるのです。
メールやSNSなどに必要以上の時間を投入してしまうなどはその典型です。2006年からすでに大橋さんは次のように指摘しています。
しなければならないことを抱えているにもかかわらず、意味もなくじっくりとメールを読みふけったり、えんえんとmixiを徘徊してしまうようなことがあります。
数分おきに自動巡回しているにも関わらず受信ボタンをクリックして新しいメールが届いていないかを確かめたり、mixiでは頻繁に更新ボタンを押して新しいコメントがついていないかをチェックしたり。
そして「新着メッセージはありません」と言われてげんなり。そんな時間があったら少しでも仕事を進めればいいのに、わかってはいるのに、なぜか仕事そっちのけでリロードを繰り返してしまいます。
このような中毒症状から逃れるためには、どうすればよいでしょうか。
このmixiのところをTwitterやFacebookに置き換えれば、今は何も良くなっていないどころかずっと悪くなっていることがすぐに分かります。パソコンからリロードせずとも、iPhoneがプッシュ通知してくれるようになったのです。
全てとは言わないまでも「プッシュ」や「サウンド」をオフにして、必要なタイミングが来るまで「今まさに取り組むべきこと」に没頭するというやり方が、ますます有意味になってきています。
それに今は恐ろしくたくさんのことが、ワンクリックもしくは「数タップ」で終わってしまうため、どれほどのことをしたかについて、現実と感覚がたぶん恐ろしく乖離しています。脳として記憶しやすいのはインパクトの強い体験ですが、そんな印象基準に頼っていたら、何一つ頭に残らずに日々が過ぎ去りかねません。
この問題も2006年から指摘されてきました。そしてその「解」となるであろう「ログをレビューする」ということについてもすでに当時書いてあります。
ちなみに、各レビューでやっているのは以下の通り。
- 日次:一日の仕事を振り返り、今後に活かせる教訓を必ず1つ抜き出す
- 週次:作業記録をざっと振り返り、仕事の山谷の原因と対策を書き出す
- 月次:プロジェクト別稼働時間を算出して、今後の稼働指針を引き出す
まず、日次レビュー。毎日欠かさず教訓を抜き出すためは、どんなに“平坦”な一日であっても、昨日の自分とは異なる方法論や考え方を試してみる必要があります。ただし、抜き出す教訓は1日に最大で1つ。時間と同様、教訓も先取りや持ち越しができないと考え、とにかく毎日1つ抜き出すことを課しています。
こうすることで、今日という一日の希少性が高まります。
今はログも残しやすくなっています。当時「ライフログ」をやるのはよほどマメな変人という印象でしたが、今ではもっと一般的です。問題とやるべきことは、そう変わっていないのです。
ただ、その必要性と効果を確信できない。そこのところこそが問題です。私達は『スピードハックス』からなお5年以上、この問題にずっとどっぷりはまり込んできました。必要性と効果も日々再認識し続けています。それを多くの方に共有していただきたいと思います。
そう思って書いたのが『スマホ時代のタスク管理「超」入門』です。