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メモ帳を装備するために必要なこと(下)

倉下忠憲

前回のエントリーでメモ帳を使う習慣__メモ帳を「装備」することについて紹介しました。自分の脳内に「頭の中に気になる事が浮かんだら、メモをとる」という仕組みが出来ていないと、いくら「メモ帳を使おう!」と考えてもうまくいかないものです。

今回は、「メモ帳」を脳になじませるためのトレーニングになりそうなトピックスを3つ紹介しておきます。

  1. 定型のデータ取り
  2. 隙間時間に観察する
  3. 「考えること」を常備する

それぞれ見ていきましょう。

0.「メモ帳」を持ち歩く

と、その前に別枠のトピックスを一つ。

あえて書くまでもないですが、それぞれのトピックスは「メモ帳」を日常的に持ち歩くというのが前提です。書き込むべき「メモ帳」が無ければ話は始まりません。

ちなみに、ここで書いている「メモ帳」はいわゆるメモ帳だけを指すのではなく、簡単に書き残せるものならばどんなツールでも対象内です。考えられる「メモ帳」としては

  • 大きめの付箋の束
  • ロディアなどの切り取りメモ
  • モレスキンなどの手帳
  • 情報カードの束

などがあります。これらのツールに加えてペンも一緒に携帯しておくことも必要です。

デジタルツールならば、携帯電話やスマートフォンなどがあるでしょう。

それぞれメモは書いた後の処理の方法が違いますが、今回はあくまでメモを習慣にするための助走のようなものなので、そのあたりには触れません。とりあえず、持ち歩きやすく、自分が書き込みしやすいものを選べば問題ないでしょう。

1.定型のデータ取り

決まり切った形のデータを毎日メモしていくという方法です。

起床時間や食事の内容、珈琲を飲んだ時間とその回数や買い物で使ったお金、会議の開始時間と終了時間、対象はなんでも結構です。できるだけ「毎日」発生するものが良いと思います。

これらのデータが後になって何かの役に立つかどうかをあまり真剣に考えないでください。そういうことを考え始めると、「メモを書かない言い訳」が次々に出てきます。もともと、書いたメモは後で使うものもあれば、使わないものもあります。事前に使うことがはっきりわかっているものもあれば、使わないと思っていたけど一応メモしたものが役立つこともあります。

これら定型のデータ取りは、重要と思うかどうかに関わらず、ある種の行動が発生(例えば起床する)→メモに書き付ける、という流れが生まれます。これはメモを習慣にする上で一つのトレーニングになるでしょう。

もちろん、それらの記録をとることを最初のうちは意識しておく必要があります。例えばメモ帳の表紙に「起床時間を書き込む」と書いておくことで、忘れるのを防ぐこともできます。

まずは定期的に発生する行動とメモ帳を取り出して記入するという行動をリンクさせることです。ちなみに、これを後で見返すと、いかに自分が自分の行動を覚えていないのかよくわかります。

2.隙間時間に観察する

次に定形外の情報についてのメモです。一人で食事しているときや電車やバスなどの待ち時間に、周りの風景を観察してみてください。そしてその時見たことや感じたことをメモに書き込みます。ここでもそのメモの有用性について事前に考えないほうが賢明です。

例えば、いま私はマクドナルドのテーブル席でこの原稿を書いています。周りを眺めると、

後ろの席には私と同じぐらいの年齢の男性がパソコンと向かい合っている。黒いのジャケットを着ており、サラリーマンには見えない。平日の朝方にマクドでパソコン。さて、職業は一体なんだろうか。そんなことをいうと、他の人から見た私の職業もどのようにみえるのだってわかったものではない。二つ先の席には、中年の夫婦。奥さんの方がよくしゃべり、旦那さんは適当に相づちを打つだけ。これからお出かけだろうか。窓の外には壁の補修をしている作業員。脚立に足をのせ、ハンドガンのような装置で壁に何かを打ち込んでいる。脚立ががくがく揺れている。脚立をもっと安全に固定できる方法はないだろうか。そもそも脚立を使わずに作業する方法はないだろうか。

と、いうのが見えてきます。

風景を観察した結果、疑問もいくつか湧いてきました。もちろん毎回こんな風に観察から疑問が出てくるとは限りません。そして出てきた疑問が有用なものかどうかもわかりません。そういう実用的なメリットはとりあえず置いておきましょう。これは意識を何かにフォーカスする訓練のようなものです。そして、その結果を紙に書き出すという習慣作りです。

先ほどの状況ならば、紙に書き付けるのは

  • 「私は外から見て、どのような職業に見えるのか?」
  • 「脚立を安全に固定する方法は?」
  • 「高い場所にあるものを脚立を使わずに低コストで作業する方法は?」

という疑問の部分だけを抽出したものになるでしょう。

これを繰り返していると、何かについて考え、考えたことをメモにとるという行動に違和感を感じなくなると思います。

3.「考えること」を常備する

最後に、先回りして「考えること」をメモ帳にセットしておく方法があります。

例えば、来月の企画会議のアイデアが必要だったり、旅行の行き先を考える必要があったりしたら、日常的に持ち歩く「メモ帳」にそれらの「問題」を先に書いておくわけです。そして先ほどと同じように隙間時間にメモ帳を取り出して、その問題を観察しながら思いついたことを書き付けていきます。

この際「思いついたことだから、とりあえず書いておこう」と感じたなら問題ありません。

しかし、「わざわざメモに書き付けるような考えでもないしな」と思うようならば、まだ一つ一つのメモに有用性を求めすぎていると言えるでしょう。1や2のトピックスでは有用性は問題にせず、「とりあえずメモに書いておく」という感覚でメモをとっています。アイデア出しでもそれと同じようにすることが必要です。

さいごに

メモ帳が「装備」できている状態とは、何かを思いついたらぱっと「メモ帳」に手が伸びる状態のことです。

しかし、いきなりこの状態に至るのは難しいと思います。スポーツにトレーナー、芸術にお手本、自転車に補助輪があるように、メモする習慣を身につけるためには、サポートしてくれる存在が必要です。身の回りに「あっ、それメモしたほうが良いよ」と言ってくれる優しい先輩がいないようならば、自分で意識的にメモを促す仕組みを作る必要があります。

今回紹介した3つのステップは筋力養成ギプスのようなものなので、日常的にメモを使いこなしている人には必要ないでしょう。

これからメモの習慣を身につけたい人は、まず「メモ帳」を常備し、何かテーマを持ってメモに書き込みをしていくことです。それを繰り返していけば、メモすることが脳になじんでくることと思います。

▼関連エントリー:

メモ帳を装備するために必要なこと(上) 

▼今週の一冊:

ロディアーに送る一冊。ちなみに、ロディアーとはロディアをこよなく愛する人のことらしいです。

文具のブランド系の本では、「モレ本」こと『モレスキン 「伝説のノート」活用術』がすぐに思い浮かびますが、ロディアも溺愛するユーザーが多いブランドの一つです。かくいう私も、特に強い理由は思いかないままNo.11をかなり長い間使い続けています。

そのロディアがどのようなこだわりを持って作られているのか、どんな歴史があるのかについて掘り下げられた本です。加えて、ロディアーにおけるロディアの活用法やトピックスも紹介されています。

ロディアが好きな方は、私が書くまでもなく本屋でこの本を表紙を見たら、つい手にとってしまうことでしょう。表紙のデザインの中のページのデザインもロディア風です。これで、切り取り線が付いていて、読み終えたページをきれいに切り取れてそのままスキャンできたら今までになかった本になったことでしょう。

・・・という妄想は置いておいて、文具好きの方はちょっとチェックしてみはいかがでしょうか。


▼編集後記:
倉下忠憲
 ようやく、締め切りマウンテンを乗り越えて一段落の今日この頃です。

次の企画案を考える必要もあるんですが、Evernoteのアプリとかにもちょっと興味が湧いてきました。今のところインプット系は充実しつつあるんですが、取り出して使うアウトプット系がまだ少ないんですよね。その辺が開拓できたら面白いんですが。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。