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アウトプット元年に向けた、3つのアドバイス

倉下忠憲
あけましておめでとうございます。本年一回目の「R25世代の知的生産」です。今年もよろしくお願いします。

年の変わり目、ということで新しい決意や目標を持たれている方もおられるかと思います。この連載をチェックしているならば、「今年はもっとアウトプットするぞ」と闘志を燃やしている方も少なくはないでしょう。

人間とは基本的に惰性が好きなので、ゼロの状態から何かを始めるのは大きなエネルギーを必要とします。「今年はもっとアウトプットするぞ」という決意だけでは、実行するのは難しいでしょう。

今回は、今年を「アウトプット元年」と定めた人に3つのアドバイスを書いておきたいと思います。

  • 「メモ帳」を持つ
  • 「アイデアノート」を持つ
  • 「連載」を持つ

では、それぞれ見ていきましょう。


「メモ帳」を持つ

この連載でも似たような事は何度も書いているので、若干くどいですが「メモ」することの重要性は何度書いても書き足りません。

穴が空いた財布を使い続ける人はいないでしょう。「メモ帳」を持たない事は、アイデアをポケットからぽろぽろこぼれ落ちさせているのと同じです。

この「メモ帳」はアナログ形式のメモ帳である必要はありません。携帯のメモでも、メールでも何を使っても問題ありません。自分の好みのツールをチョイスすればよいでしょう。

どんな「メモ帳」でもOKですが、「メモ帳」を持てばそれで良いか、というとそうではありません。「メモ帳」を持つ事の意味は、

「頭の中に浮かんだアイデアを放置しない」

です。これが「メモ帳」の原理原則の一つになります。

この場合の「アイデア」というのは具体的な形になっていなくても大丈夫です。むしろ総合的に見ると漠然とした思いつきの方が多いかもしれません。

ちょっとした思いつきや疑問、あるいは何かに使えるかもしれないアイデアや、こういう方向は面白いんじゃないか、という企画の種、頭に浮かんでくるものは多種多様ですが、それら全てをメモしておく、というのが重要です。

これは、単に頭に浮かんだものを逃さない、という意味だけではなく「容れ物効果」も期待できます。

注釈:「容れ物効果」

私が勝手に考えた名前です。

よく「本を減らしたければ本棚を減らせ」というアドバイスがありますが、入れるべき本棚がある事で、本が増えるという事例は体感でも理解できます。自然が真空を嫌うように、人も空白を嫌います。メモ帳を持つことも、これに近い効果があるのではないでしょうか。

アイデアを書くべきスペースがあることでアイデアが出やすくなる。科学的根拠はありませんが、入れておける場所があるという安心感が発想を促進させる、という事なのかもしれません。

「アイデアノート」を持つ

「アイデアノート」あるいは「ネタ帳」を持つ、というのが二つ目のアドバイスです。

「メモ帳」を、飛び回る虫を捕らえる網とすると、「アイデアノート」はそれを捕獲しておく虫かごのようなものです。メモ帳の中には雑多なものが入ってくるので、そこから使えそうなものを選り分けておく必要があります。

アナログ式ならば、メモ帳に書いた物を別のノートを準備し、そこに転記するという手順です。デジタルならば、専用のテキストファイルを準備したり、ツリー形式でまとめたり、Evernoteでノートブックを作る、という事になります。

物理的に「メモ帳」をそのまま「アイデアノート」として使う事もできます。使えそうなものを赤ペンや蛍光ペンで囲ったり、メールであればスターを付けておく、Evernoteであれば、ノートブックを分けるかタグを付ける、という方法です。

「アイデアノート」を持つことの意味は、

「必要な時にアイデアにアクセスできる環境を作る」

です。

いくら良いアイデアを集めていたとしても、必要な時に参照できなければ意味はありません。アイデアを有効活用するためには、網から虫かごに移し替えておく作業が必要です。

また、その虫かごを眺めていることで新しいアイデアを発見できるかもしれません。

「連載」を持つ

最後は「連載」を持つこと。これは別に雑誌の連載とかそういう話ではなく、定期的にアウトプットする場所を持つ、という事です。

「必要は発明の母」という言葉がありますが、何か書かなければならない状況はアイデアが生み出されやすい環境になります。それ以外にも、書く事で考えが整理されたり、数を重ねる事でアウトプット力が鍛えられたりもします。

一番簡単なのは自分のBlogを持つことでしょう。もちろん単にBlogのアカウントを作っただけでは意味がありません。無理のないペースで更新する頻度を決め、その「締め切り」を守っていくことです。週一回でも年間で52個程度、毎日ならば365個のアウトプットを作る事になります。

これだけのアウトプットをやるのとやらないのとでは、実力としてのアウトプット力は大きな差がうまれることでしょう。

「連載」を持つことの意味は、

「(強制的にでも)定期的にアウトプットする環境を設定する」

です。

まとめ

今回は、これからアウトプットしていきたい人にむけて3つのアドバイスをしてきました。それぞれのアドバイスの裏に潜む原理原則は

  • 「頭の中に浮かんだアイデアを放置しない」
  • 「必要な時にアイデアにアクセスできる環境を作る」
  • 「(強制的にでも)定期的にアウトプットする環境を設定する」

この3つです。これを満たせるならば、実際にどのようなツールを使うかは個人の自由です。逆に言えばどんな便利なツールを使ってもこれが守れていなければ、アウトプットにつなげるのは難しいでしょう。

ポイントは、これらをサイクルとして捉える事です。あるいは一連のエコシステムとして考える事です。ゆっくりとでも一度その回転が始まれば、始める前に考えているよりは簡単に車輪を回していくことができます。

▼今週の一冊:

佐々木正悟さんの新著。なぜビジネス書で紹介されている仕事術がうまく使えないのかを「メンタルモデル」を使って解説されています。もちろん佐々木さんの仕事術の紹介もあり。仕事術の理解は、メンタルモデルの理解とイコールな関係にある、という事です。「メンタルモデルって何?」と興味が湧いてきてら、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

※今回の記事はこれを意識してメンタルモデルを理解しやすいように原理原則を添えて書いてみました。


▼編集後記:
倉下忠憲
 新年早々ですが、原稿の追い込み作業です。

一冊目の本を書くよりも、二冊目を書く方が難しいとは思ってもみませんでした。経験を積むことで「難しくなる」こともあるんですね。物書きとしていろいろ勉強中です。乞うご期待、と言えるような本にするようにエディタと向き合う日々です。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。