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ブロガーが集まって雑誌を作りました



倉下忠憲先月の話になりますが、「かーそる」という季刊誌を発刊しました。

» かーそる 2016年11月号[Kindle版]


上記はKindleストアですが、その他の電子書籍販売プラットフォームでも発売されております。

» 「かーそる」2016年11月号 [創刊号] – Project:かーそる

で、雑誌の内容については雑誌をご覧頂くとして、今回は二つ言いたいことがあります。

「私のため」のメディア

この「かーそる」は、どこをどう読んでも、「私が読んで面白い」雑誌です。で、私の性格が少々ねじ曲がっていることを考えると、この雑誌__つまり「私が読んで面白い」雑誌__を万人向けと言うのは少々はばかられます。かなり限られた人向けの雑誌ではあるでしょう。

もちろん、「知的生産」や「知的生産の技術」について考えることが好きな人ならば間違いなく楽しめる内容ですが、それでも「広くすべての人々に」というキャッチコピーはつけられそうにありません。でも、それこそが、つまりニッチさこそがセルフパブリッシングによる雑誌、もっと広く言えばセルフメディアの特徴です。

ある程度の利益が見込めないと運営しにくい商業雑誌では攻められないニッチさがセルフメディアでは実現できますし、それこそが存在理由であるとも言えるでしょう。

メディアというものの存在を、マスメディアの概念だけで捉えてしまうと考えてしまうと、できることは非常に限られてしまいます。メディアはもっといろいろな形がありえるのです。

むしろ、マスなメディアが埋められない場所を補完するのが、新しいメディアの役割だと言えるのではないでしょうか。

「You、メディア作っちゃいなよ」

ということを踏まえた上で言いたいのは、「You、雑誌作っちゃいなよ」ということです。

創刊にあたって」の中でも書きましたが、現代はPIY(Publish It Yourself)が簡単に実現できる時代です。今回私は「知的生産」および「知的生産の技術」をテーマにする雑誌を作りましたが、他にもまだまだ「未開の領域」は眠っているでしょう。

このシゴタノ!の読者さんならば、(知的生産の技術よりも)タスク管理や時間の効率化に興味があるかもしれません。普通なら__つまりマスメディア的発想では__それをテーマとした雑誌を作るなんて発想はみじんも出てこないでしょうが、セルフメディアであれば十分射程内です。そして、そうした雑誌を読みたがっている「潜在読者」も結構いるかもしれません。

書き手だって、ブログをいろいろ読み歩いていれば見つかるでしょうし、Twitterでやりとりしていればコミュニケーションもしやすいかもしれません。素材と書き手とツールは、そこら中に転がっているのです。あとはもう、作るだけです。

さいごに

個人的な意見では、本来その役割はブログが担うところでしたが、最近のブログは何か別のものを求める場所か、あるいは苦行の場所となっているので、別のメディアの選択肢があっていいなと考えています。

雑誌であれば、ある種の「祭り」として行えるので__少なくとも、毎日ブログを更新するような地味なことはしなくてもよいわけで__、案外参加しやすいかもしれません。

もちろん、ツールや素材があるからといって、雑誌作りが簡単になるわけではありません。祭りにだって準備は必要です。ツール等の存在は、あくまで手軽にそれを行うことを補助してくれるだけであって、何の苦労もなくそれを成し遂げさせてくれるものではないわけです。

が、そうした苦労を織り込んだ上でも、「新しいメディアを作る」という行為には本質的な面白さがあります。ちょっと想像してみてください。「私のため」のメディアが、ものすごくたくさん集まった情報空間を。きっと楽しい空間になるはずです。

▼今週の一冊:

たぶん、「今さらフランスの現代思想かよ」という声もあるように思うのですが、レヴィ=ストロースやミシェル・フーコーは現代でも十分読む価値がありますし、構造主義以降の「知的な態度」も、無視してはいけないでしょう。少なくとも、現代の知の流れはそういう文脈の上に位置づけられるわけですから。それは日本においても同じな(あるいはより強い)はずです。

» フランス現代思想史 – 構造主義からデリダ以後へ (中公新書)


▼編集後記:
倉下忠憲



本当は、ここで「新しい月くらの新刊も出ました!」と告知したかったのですが、残念ながら間に合いませんでした……。もう表紙もできていて、あとは最終チェックの段階ですので、12月の中旬までには発売できそうです。お楽しみに。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。


» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由