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不安になれば、アイディアが出る



佐々木正悟 不安になれば、アイディアが出る、とまで言っては言いすぎかもしれませんが、自分自身の経験ではおおむねそうなのです。本を書いていると、アイディアにつまることなど日常茶飯事であり、そのたびに不安が募ってきます。するとその不安を解消したくなるので、解消するような発想を生み出す動機づけが強くなるわけです。

逆に、ポジティブな気分の時には、アイディアがいくらもわいてくる、という人もあります。私はこういうのを聞くと「自分と反対だな」と思ったりしていたんですが、実は同じなのかもしれないと最近思うようになりました。

一見、ポジティブとネガティブというのは、正反対のようですが、心理的にはそんなに違っていないという気もします。両者には少なくとも「テンションが高くなっている」という共通点があります。

テンションが高くなっているというのは、脳科学で言うならば、「大脳辺縁系付近の血流量が増えている」ということがありそうです。してみると、大脳辺縁系付近の活性レベルが上がっているとき、私自身は、ワクワクしているかもしれないし、不安にさいなまれているかもしれませんが、いずれにしても興奮はしているでしょう。

この興奮を、どう解釈し、どうしたいのかによって、前向きにも、後ろ向きにも、なり得ると思います。

私は、ネガティブな人間であり、思考が暗い発想、後ろ向きな発想に進む傾向がありますから、興奮すると不安になりますが、これは言ってみれば「解釈」です。べつに、興奮して盛り上がっても、かまわないわけです。

『まんが道』という作品があります。これは藤子不二雄コンビのいってみれば上昇物語ですが、面白いシーンがあります。

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このページに登場している「石森章太郎」の入選作品を見た2人が「手強い競争相手がうようよいる」ことに恐れをなし「対抗策」として1つのアイディアにいたっています。とても大事なシーンです。

そのアイディアというのが「コンビでまんがを描く」ということであり、要するに「藤子不二雄誕生のきっかけ」がここにあるということになっているわけです。

実際、ここに登場している高校時代の藤子不二雄コンビは、興奮し、不安になっているように見えますし、同時に何か、テンションが高く、盛り上がっているようにも、見えます。そして、コンビになるというアイディアに至っているわけです。

アイディアというのは、なんであれ、脳が作りだすものですが、少なくとも私に関して言えば、脳が平常運転で、一日一個ずつのアイディアを作りだしてくれるわけではありません。どちらかというと、不安になったり盛り上がったりというのは、私にとっては脳の異常動作であって、だから日頃は思いつかないことをひねり出してくれるようです。

だから、不安になるというのは、少なくとも発想を必要とする私にとっては、とてもいいことだと思うわけです。たとえ気分が一時的に悪くなるにせよ、そんなのはコーヒーとお菓子をあとで食べれば何とでもなります。

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