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読書習慣を根づかせるための工夫



倉下忠憲
「読書を始めてみたけれども、その習慣がなかなか続かない」

そんな状況があるかもしれません。

佐々木正悟さんのブログ「ライフハック心理学」におもしろい記事があります。

  • モチベーション
  • 外的要因にコントロールされるモチベーション

難しい課題に取り組んだり、セルフコントロールを実現するためには認知資源が必要である。しかし、その認知資源は任意に使用できるものではない、といったところでしょうか。

つまり、何かの行為を発生させるにはMPが必要だが、MPがあるからといって、それを自由自在に使えるわけではない、ということです。

ゲームの中では、「ここはメラミを使おう」と判断できたとしても、現実の世界で「ここはぐっと集中しよう」と思ってもなかなかうまくいかない場合は多いでしょう。注意資源の振り分けは、自意識のコントロール下には置かれていないわけです。

だから、読書をしようと思っても、うまく注意が振り分けられないことは十分あり得ます。特に不思議な出来事でも、落ち込む出来事でもありません。人間としてありふれた現象です。

だからといって、えいやっと匙を投げる必要もありません。環境を整えれば、ある程度の対策が可能です。

パターンを探る

自分がいつ本のページをめくっているかを振り返ると、一定のパターンがあることが見えてきました。

そのパターンはおおよそ次の3つに分類できそうです。

  • 時間
  • 場所
  • タイミング

時間

一つのパターンは時間です。

主に、昼食後と夕食後から就寝までの間によく(というか毎日)本を読みます。夕食後は難しい本は避けて、ライトな小説を手に取ることが多いです。

場所

もう一つのパターンは、場所になります。

基本的には電車や新幹線がこれに当たります。また、読書の用のカフェ(そういうカフェではなく、単に私が自分で認定しているだけです)もこのパターンに入れることができるでしょう。

タイミング

最後がタイミングです。

「時間」と似ていますが、こちらは定時ではなく、特定のスケジュールに付随する要素と言えるでしょう。ごく簡単に言えば、待ち合わせまでの時間です。また入浴中もだいたい本を読んでいます。

具体的な対策

こうしたパターンの中では、「よし、本を読もう」と強く決意しているわけではありません。むしろ、自然に本に手が伸びているような感じです。その自然な感覚のまま、ぐっと本に集中することができます。

スーツに着替えれば自然と気持ちが切り替わるように、服装、時間、場所などがトリガーとなって私たちの気分が変化することはよくあります。私たちの周りを取り囲む環境、あるいはムードといったものが、私たちに作用し、認知資源の振り分けに影響を与えているわけです。

直接的に認知資源のマネジメントができないとしても、自分を取り囲む環境をデザインすることで間接的に認知資源の振り分けを設計することができるかもしれません。

そうした発想をベースにすれば、

  • 毎回同じ時間に、本を手に取るようにする
  • 毎回同じ場所で、本を読むようにする
  • 毎回同じタイミングで、カバンから本を取り出すようにする

といったことを繰り返していくと、読書が「習慣」となっていくことが考えられます。

少なくとも一日10冊読みましょう、といったアドバイスよりは取りかかりやすいでしょうし、続けやすいのではないでしょうか。

さいごに

もちろん、上の方法にまったく問題がないわけではありません。「本を読む」という行為をいかに思い出すのか、という難しい課題が残っています。

最初の3日ぐらいは気合いとモチベーションの残り火でなんとかなるでしょうが、それ以降は何らかの仕組みが必要です。こういう時に、タスク管理やルーチン管理の仕組みを持っているとなかなか便利です。

もしそういう仕組みがないのならば、机の上の必ず目に入る位置に本を置いておくなり、スマートフォンのホーム画面に電子書籍アプリを置いておくとなりしておくとよいでしょう。泥臭いやり方かもしれませんが、視覚的効果は使い勝手がよく効果的でもあります。

なんにせよ、物事の導入部分はたいてい勢いだけで片付けられますが、それを継続していくとなると何かしらの工夫が必要になってきます。もちろん、工夫なしで進められるにこしたことはありませんが、ちょっと躓いているのならば、習慣づけの工夫を試みてみるのもよいでしょう。

▼今週の一冊:

「知的生産日記」。なかなか心惹かれる響きです。私は梅棹先生の「発見の手帳」を連想しました。

本書で紹介で紹介されている「知的生産日記」は、マトリックスを使った日記です。言い換えれば、表計算ソフトのエクセルを使った日記。「エクセルで日記?」と疑問が湧いてくるかもしれませんが、表計算ソフトは一種のデータベースなので、日記の運用ツールとしても問題はありません。

通常の日記と違い、「年」が並んでいくのがポイントです。その日の日記をつけるときに、去年の同じ日に(あるいは一昨年の同じ日に)何をしていたのかがすぐにわかるというのは、面白い特徴です。

私の場合は、デジタルで日記をつけるならばEvernoteの一択ですが、年を俯瞰するような日記をつけたい場合はこうした選択もありかもしれません。


▼編集後記:
倉下忠憲



ぼちぼち新刊の書評などをいただいて、喜んでおります。もちろん本を紹介していただけることもうれしいのですが、「面白かった」という感想をいただけるのが一番の励みになりますね。というわけで、次も面白い本にできるように、企画案を練り込んでいる最中です。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。