こうして眺めると、見えているもの、感知したものをより一般化して、うわべの情報に惑わされないようにすることが、学習において重要であることがわかります。そのために必要なことが「学習を遅くする」ということなのです。ゆっくりと覚えることによって、ものごとの表面下を共通して流れる根底的なルールに気づくことができるわけです。
つまり、勉強していて「なかなか覚えられない!」と嘆いたとしても、そもそも脳はそうやってできているわけで、こればかりは仕方ありません。子供の頃の正確で迅速な暗記力よりも、大人の柔軟性に富んだ能力のほうが、はるかに応用性があり、実用価値が高いといえるかもしれません。
この前段では、コンピュータに「あ」という文字を自動認識させる例を使って、学習プロセスの解説をしている。
- 世の中にはさまざまな形の「あ」がある
- コンピュータは「あ」に共通した特徴を抽出する必要がある
- コンピュータは「あ」と「あ」に似た文字とを識別する必要がある
- 最初に学習した「あ」だけを「あ」だと認識したり、
- 新たに現れた「あ」で以前覚えた「あ」を上書きしてはいけない
学習においても、些事にとらわれる過ぎると、本質が見えなくなる、という考え方が当てはまる。
» 脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?