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Scrapboxを使い始めました



佐々木正悟 まさにタイトルの通り、ちょうど最近になって使い始めた、という状況です。

まずは、これを知るきっかけとなった、倉下忠憲さん情報管理LOGさんにお礼を申し上げたいと思います。

もちろん、Scrapboxさんにもです。ScrapboxのRAKUSAI Isshu(@rakusai)さんには「紙copi」時代からずいぶん一方的にお世話になっております。

Scrapboxの詳細についてはいろいろと語られてきていますし、私もそういう記事を読みあさっているのが現状ですから、それをまとめることはしません。

それより、ScrapboxとEvernoteの使い分けというか棲み分けについて、この記事では述べておきたいと思います。

» Scrapbox ヘルプ – Scrapbox

Scrapboxには原稿を軸とする

私は今まさにこの記事も、Scrapboxで書いています。そして、書籍原稿も、そうですし、@人事オンラインという最近始めた連載の原稿もそうです。

これは熟慮のすえにこのようにしたというわけではなくて、なんとなく使っていたらいきなり、こういうふうに始めてしまったのです。それくらい、文章を打つ上でも無理がなくて、しかも、文章打ちによくある「脱線しようとする気分」に沿って動かせるツールだったということなのですが。

Evernoteは、そうしたいそうしたいと常々あんなに思っていたのに、ついにテキストエディタとして威力があると思える日は来ておりません。

単純に、動作がゆったりすぎます。

そのうえ、特に文章を打っていくのに適していると思える要素がたりません。参考になる資料を簡単に引き出せそうで、やってみるとそうでもない。「関連ノート」に、文章を打っているうちにいい感じのノートが登場するということも、あまりにも希にしか起こらない。

なによりずっと思っていたことですが、デジタルノートに今期待したいのは、思考を助けてくれるツールです。こういうとひどくかっこうよさげに聞こえもしますが、「思考を助けて欲しい」と切実に思うということは、悪く言えばアホだということでもあります。

書くべきことが見つからないとか、うまい言い回しが考えつかないとか、気持ちをうまく言葉にできないだとか、どれもこれも、すなわち知力の不足を露呈しています。何らかの意味で。

たとえばEvernoteに「未解決の課題」という「ノートの束」を集めておいたとします。この整理の仕方によって、「未解決の課題」が1つでも解決できるかといったら、かなり疑わしい。このまとめ方ですと、相互にさしたる関連性もない「未解決問題」が書かれたノートがリストアップされるだけであり、きわめてマメな人だけが、毎日のようにそのリストを上から順に眺め、その時になって解決できそうな糸口をひらめかせ、ノートに追記できるというのがせいぜいです。

これだけでも大したことかもしれませんが、発想はアナログ時代からほとんど変わっていません。

これがScrapboxになると、アプローチの仕方が全然違います。Scrapboxはノートを「タグでつないでいく」という方向性のみでノートを辿るようになっています。Evernoteや一般の整理ツールのように「束ねる」という発想ではないので、「相互に関連性のないリスト」というものは、意識して作りださない限り存在もしない

「原稿」というのは、こういうツールと相性がいいのです。Evernoteで「整理する」たびに残念に思っていたことですが、「原稿を束ねる」ことにほとんど意味はありません。それはせいぜい「整理されているだけ」であり、一歩間違うと「整頓されているに等しい」状態しか作り出せないのです。

A出版社に依頼されていた「原稿」とB社に依頼されてた「原稿」を「束ねた」としても、それは本当にそれだけでしかないのです。

Scrapboxで「これはタグだ」と思えるキーワードをタグに指定すると、そのタグを含む原稿やノートを横に並べだしてくれます。原稿が他の原稿とつながる。それも関係性のある原稿だけがつながってくるのです。これは、束ねておくこととは決定的な違いがあります。

原稿とライフログ

Evernoteは「束ねる」のが得意なため、圧倒的にログの蓄積に向いています。

私たち人間は、「束ねる」となるとどうしても「形式が同一であるもの」を束ねようとします。物理的世界では「整理」だけなく「整頓」にも大きな意味があるからです。

Evernoteの解説書でもサンプルとして「領収書」「請求書」「レシート」などをまとめておきましょうというアドバイスが載っているのは、そういうことなのです。

ですが、こういったものを束ねておく意味は決して大きくないという気がします。もちろん領収書が乱雑になってしまうよりずっといいのですが、Aからの領収書とBからの領収書の間には、領収書であるということ以外ほとんどなんの共通点もありません。これらが意味を持ってくるのは、漏れなく蓄積されていったケースにおいてです。

束ねるのが得意なEvernoteにはだから、やっぱりライフログが向いている気がします。たとえば日記は、形式が統一に向かいやすく、しかも形式が整っている日記であるというだけで、相互の深い関連性も存在します。昨日の日記と一昨日の日記の関係は、2枚の領収書よりもずっと深い関係があります。

今後も、Evernoteに形式的統一性を持ったデータを蓄積していき、ライフログも集めていくでしょう。Scrapboxには、内容的関連性によってつながればつながるほどよいものを集約していくことになりそうです。日記は実は両方にまたがる悩ましい存在ですが、そういうものは過去の蓄積もものを言うので、当面はEvernoteということにするつもりです。

ウェブクリップ、とかは?

しかし、いままでEvernoteに入れてきたものは、原稿とライフログばかりではありません。ウェブクリップやメモの断片などもここに集中していました。そのへんのことは、実に面倒な問題があるので、次回以後また考えていきたいと思います。