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ノート活用のインスピレーションを得たいならば

倉下忠憲
「ノートを使う」と聞いたときに、最初のページからずらずらと書いていく事しか思い浮かばない方。ぜひとも「ノートを活用する」とはどういう事か、この一冊で確認してください。

モレスキン 「伝説のノート」活用術~記録・発想・個性を刺激する75の使い方
堀 正岳 中牟田 洋子
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 20

 
本書はモレスキンという高級ノートについての活用術がたっぷり詰め込まれている本です。しかし、それらの活用は普通のノートを使う上でも十分に参考になると思います。

 

ノートを活用する3フェイズ

ノートをうまく使えるようになるための3つのコツ」というエントリーでノートを活用する上でのポイントを紹介しました。それは、

  • メモとノートは分ける
  • ノートを見返す習慣を身につける
  • ノートを使い続ける

です。これを実践的に突っ込んだものが本書第三章で解説されています。ポイントは3つ。

  • 「ユビキタス・キャプチャー」を習慣にする
  • 「毎日レビュー」で利用しやすく情報を加える
  • 「週次レビュー」でノートの情報を永続化する

簡単にみていきましょう。

「ユビキタス・キャプチャー」を習慣にする

「まず、メモを取ろう」という事です。知的生産の達人の中にはメモ魔と呼ばれるほどよくメモを取る方がおられますが、それに通じるものがあるでしょう。人の脳の短期記憶はまったく当てになりません。ある瞬間に何かを思いついても、別の何かが頭を支配すればすぐに「思い」や「記憶」や「アイデア」はこぼれ落ちていきます。短期記憶を強化する事を心がけてもよいですが、普段持ち歩いている手帳などにささっと書き付けた方が早いでしょう。

「毎日レビュー」で利用しやすく情報を加える

メモは書いて終わりではない、という事は何度かこの連載でも述べていると思います。一日単位で、書いたメモに情報を追記したり、しかるべき場所に移動させたり、あるいはその情報について再考したりする時間を確保しておくことです。

「週次レビュー」でノートの情報を永続化する

一週間単位で書き込んだ情報に牽引を作っていく作業です。あるいは書き切れていなかった部分を補完するのもこのタイミングで行います。集めた情報の関連づけなどもこのタイミングで行えばよいでしょう。

それぞれ簡潔に紹介しましたが、具体的な方法や考え方については本書に直接当たってみて下さい。

 

情報は加工していく事で価値が出る

「情報を集めてもアウトプットが出せない」
「ノートの使い方がわからない」

という方は、情報についての考え方が少しずれているのかも知れません。情報は集めればそれだけで価値が見いだせるものではないのです。バケツ一杯に入った岩石と宝石の原石を眺めて、

「どれに価値があるのかがわからない」

と嘆いていても仕方がありません。

それらを選別し、見込みがあるのもは磨いていく必要があります。それが「毎日レビュー」であり「週次レビュー」なわけです。これは以前紹介したメタ・ノート習慣にも通じるものがあります。

そして見返すためには、情報が保管され見やすい状況になっている必要があります。情報を一冊のノートにまとめるのも、モレスキンを使うのも、Evernoteを使うのも、目的は一元化です。一元化しておかなければ情報を見返す作業は億劫で仕方がないでしょう。

情報を見返しやすいシステムを構築して、見返す習慣を付ける。これがアウトプットを生み出していくためには必要な事ではないでしょうか。

 

「自分システム」手帳という考え方

ノートのビジネス活用という点で興味深かったのが「手帳を自分で作る」という考え方です。今の季節は「来年の手帳」が文具店や書店などに並んでいることでしょう。毎年使っている手帳がどうにも使いにくいと感じている方もおられるかも知れません。

持ち運びしやすく、堅牢で、ページ数の多いモレスキンノートはカスタマイズすれば自分の手帳を作ることができると著者は述べています。もちろん創意工夫や挑戦が必要ということを前提にして、著者はこう「挑発」します。

しかし逆にいえば、この挑戦に答え、無地のノートから自分に合った「手帳」を作り出せる人は必ず、自分の戦略を自分で考えることができる人間に成長しています。

自分に合った「手帳」を作ろうと思えば、自分がどのような仕事のスタイルで、どんな情報をどのような形で見る必要があるのかを理解しておく必要があります。そしてそれに合わせてカスタマイズしていくアイデアも必要です。それはシステム手帳のリフィルを選ぶ事以上に面倒な作業です。しかし、それに見合ったメリットはきっと得られることでしょう。

昔の「職人」と呼ばれた人は自分で使う道具は自分で作っていたという話を聞きます。自分の手のサイズに合わせた道具はどこにも売っていないからでしょう。

自分の「システム手帳」を持つのではなく、「自分システム」の手帳を持つ。そういった感覚がこれからの社会では必要になるのかもしれません。

 

まとめ

この本は「モレスキン」に対する情熱と活用法が詰め込まれた本です。専門的とかマニアックと言えなくもありません。しかし、本書からはノートの活用法についてさまざまなインスピレーションが受けられること間違い無しです。

それは単に「モレスキンってすごいんだよ」という所に留まらず、いかにすれば情報を活用できるようになるかという視点で語られているからでしょう。そこには「ノートの使い方」に関する原理というものが見え隠れしています。

専門的でありながらどこかしらに普遍的な要素が感じられるもの、というと「知的生産の技術」を思い浮かべます。これが良書の一つの条件なのかもしれません。

「モレスキン好き」「ノート好き」の方にオススメの一冊です。

▼参考文献:

ノートやカードの使い方について示唆の多い一冊です。

知的生産の技術 (岩波新書)
梅棹 忠夫
岩波書店
売り上げランキング: 4540
おすすめ度の平均: 4.5

5 普遍と型枠
5 カードは話のタネだった
5 いまでも使えるその理由は
5 これぞ現代人必読の知的生産術!
5 今でも通用する部分があります

▼関連エントリー:

ノートをうまく使えるようになるための3つのコツ 
思考を整理する「メタ・ノート」習慣を始めよう! 

▼今週の一冊:

メディア論と書かれていますが、私たち自身が情報とどのように付き合うのか、ということを考えさせられる一冊でもあります。

メディアが集中豪雨的に論じる論件については僕たち御選択的に詳しい。けれども、メディアが扱わないトピックについてはほとど何も知らない。

なかなか耳の痛いお話です。メディアのあり方、読者と電子書籍などについての考察もあります。

街場のメディア論 (光文社新書)
内田 樹
光文社 (2010-08-17)
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おすすめ度の平均: 4.5

5 読んで絶句
5 贈与
5 数多の内田本の中でも出色のできです
5 日本のサンデル教授がここにいたか!
4 本当の意味の新作

 

▼編集後記:
倉下忠憲
最近は佐々木さんと書評の本がかぶることが多いですね。

 
別に「書くネタがなから」とかではなくて、誰かが書いていても紹介したくなるほど良い本だ、と言うことです。できるだけ違う切り口で紹介しているつもりですが・・・。

さて、以前も告知さえていただきましたが、以下の本の出版記念__3刷決定しました!__ということでジュンク堂大阪本店様で9月14日にトークセッションをやらせていただきます。タイトルは「続 EVERNOTE「超」仕事術 本には書ききれなかった もっと 『脳をフリーにする』Evernote実践活用法!」となかなか長い名前です。詳しい情報は「ジュンク堂書店大阪本店さまのウェブサイト」より確認ください。大阪近辺の皆様とお会いできれば幸いです。

EVERNOTE「超」仕事術
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所
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3 クラウド時代のGTD指南本
4 GTDに使えそうです
5 EVERNOTEを利用した『知的生産の技術』指南本
5 EVERNOTE本の決定版!? 使い方というより活用方法。GTDはいいかも。

 
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。