Dropbox つかっていますか?
Dropbox は SugarSync とならんでよく利用されるオンラインストレージですが、同期のスピードがとても高速で、私はデスクトップ上のほとんどのファイルを Dropbox にいれてしまっています。
しかしこの高速さを利用して、単なる自宅と職場のファイル共有といった普通の使われ方を越えた利用の仕方が最近目立っています。それは複数の Mac の環境とデータをそろえる、手軽な設定同期システムとしての利用方法です。
複数の Mac で同じアプリケーションを使っているときに、その設定やデータが共有されると、自宅にいようが職場にいようが同じ利用の仕方ができるので便利ですね。また、持ち歩くノートパソコンでも同じデータが利用できるというのは、「どこにいても作業が進められる」ということを意味していますので、ノマド・ワークスタイルを実現するのにも重要です。
OS がもともと Unix の一種である Mac OS X はちょっとコマンドラインの魔法を使うだけでふだん使っているアプリケーションをだまして Dropbox 上のファイルを利用させることが簡単にできます。
これまでブログや Twitter でちょっとずつ流していた情報をまとめてみましたので、これで Dropbox をさらに使い込んでみてください。
アプリの同期、まず覚えておくこと
これまでに紹介したアプリの中にも、 OmniFocus や Transmit といった、アプリ自身が iDisk と通信する機能をもっていて、同期にまつわるハードルに自分で対処している場合があります。
そうした機能をもっていないアプリの場合は、1) そのアプリが利用している設定ファイルやデータファイルをすべて Dropbox のなかに移動して、2) アプリケーションが騙されてそちらのファイルを利用するように細工をするという、2段階のステップをふめば同期を実現することができます。
たとえば TextExpander の場合、ユーザーが登録した短縮形はすべて ~/Library/Application Support/TextExpander というフォルダのなかにある Settings.textexpander というファイルに格納してあります。そこで、このファイルを Dropbox のなかにいれて複数の Mac からみられるようにするだけで、短縮形の同期ができるようになるわけです。
(TextExpander は Mobile Me による同期もサポートしていますが、うまくいかないことも多いですし、Mobile Me は有料なので敬遠しているユーザーでもこの方法はうまくいきます)
アプリケーションが、この Dropbox のなかのファイルを参照するようにするためには、Mac OS X の下地となっている Unix のシンボリックリンクという機能を利用する必要があります。これは Windows でいうところの「ショートカット」に似た機能ですが、このリンクを張っておくことによってファイルの実体がその場所になくても、問題なくファイルの読み書きができるようになります。
シンボリックリンクを張るには、「ターミナル」などをひらいて:
ln -s 実体 リンク先
という風にコマンドを入力します。注意したいのは Dropbox を利用した設定の共有の場合、基本的に「Library/Application Support」に存在するファイルの実体を Dropbox に移動して、元フォルダにはリンクだけをのこしておくようにすることです。
いつも使っているアプリケーションは、いつも通り設定やデータをそこから読み込みますが、その実体は Dropbox のなかにあるのです。
さまざまな実例
この方法を知っておくだけで、実にさまざまなアプリケーションの設定を Dropbox で同期させてしまうことができます。いくつかみてみましょう。
1Password
Mac OS X のパスワード管理アプリケーションとして人気のある 1Password はすべての情報を 1Password.agilekeychain というファイルに格納しています。
このファイルの置き場所は「Preference / Keychain」の欄で変更できますので、元ファイルをDropbox にコピーした上で、この置き場所を変更すればすぐに 1Password を同期させることが可能になります。
MarsEdit の「書きかけエントリー」
Ecto とならんで人気のあるブログ執筆アプリ MarsEdit の場合、書きかけのエントリーの情報がすべて Library/Application Support/MarsEdit/LocalDrafts というフォルダに入っています。
これを同期するには、まず LocalDrafts というフォルダを Dropbox に移動してしまい、この実体にむけてリンクを張っておくことをします。
このとき、共有を行う両方の Mac で MarsEdit を立ち上げずに作業をすませておかないと、若干の差異が生じてしまいます。
Things
GTD アプリとして OmniFocus と並ぶ人気をもっている Things ですが、これまでは複数 Mac での同期ができないことがネックでした。
しかしこのアプリの場合も、Library/Application Support/Things というフォルダの実体を Dropbox に移動した上で、リンクを張るだけで簡単に同期させることが可能です。実際の手順についてはTUAW の記事に詳細が掲載されています。
Seesmic Desktop
複数カラムで Twitter でフォローしているユーザーをグループ分けするクライアントには TweetDeck や Seesmic Desktop がありますが、TweetDeck はサーバーを介した同期機能を提供していて一日の長があるようにみえます。
しかし Seesmic の設定ファイルを Dropbox のなかに入れれば、TweetDeck のような同期機能をするに実現できますし、しかも Seesmic Desktop は Adobe Air を利用したアプリですので同様の設定を Windows でも利用可能になります。
iPhoto
ここまでくると、iPhone ライブラリのような巨大なものでも Dropbox にいれて、どこからでも写真を閲覧できたら面白いのではないかという気になってきます。
これほど大きなフォルダを共有する場合、データがすべてアップロードされるまでに2,3日もかかってしまうという難点はあるものの、これだって不可能ではありません。こちらの記事でその手順と陥りやすい問題点がまとめられていますので試してみてください。
注意点
同期は本来面倒でエラーが起きやすいものです。しかしこの Dropbox を利用した方法を使った場合、複数の Mac が利用しているのは同一のファイルなので間違いがおきにくく、いったんうまく使い始めることができると、利用していることさえ忘れてしまいます。
ただ、最初にこの設定をするときだけは別です。シンボリックリンクを張るときだけは、同期をとりたいすべての Mac で、そのアプリケーションが終了していることを確認しないと、途中でファイルが書き換わるなど取り返しのつかない形でファイルが壊れることもあり得ます。
ここで紹介した Dropbox の同期ハックを行う前に、データと設定ファイルをバックアップしておくこともおすすめします。
▼最近気になっている一冊:
10/15 には Blog Action Day という、「全世界のブログが同じ日に、同じことについてつぶやく」というイベントが行われます。今年で3度目で、Lifehacking.jp も参加していますが、今年のテーマは「気候変動」ですので特に力が入っています。私の専門が、気候学の研究だからです。
最近、日本に限らず海外の割合大きなメディアやブロガーが不勉強なまま「地球温暖化はもう止まっているのはないか」といった発言をしていて、危険だと感じています。人は数年も同じ話をきいているとこらえ性がなくなって「実は間違ってるのでは?」「実は陰謀でしょう?」と、感覚だけで反感をもってしまいがちです。
そこで正確な情報が必要になるのですが、なかなか専門の研究者は忙しすぎますのでどうしても専門外の「自称」研究者が無責任な本を出して耳目を集めてしまうことが多くあります。そんななか、おすすめしたいのがこの「地球温暖化の予測は『正しい』か?」です。
私はこの著者の方を個人的に存じてますが、この道の一流の研究者であり、いまもっとも正確な情報を手にしておられる方です。しかしこの本は、温暖化の警鐘を鳴らしまくるための本ではありません。むしろ、こうした予測を立てる上で「何が前提となっているのか」「どのような方法で予測が立てられているのか」「現時点の知識として何がいえるのか」という、私たちの知識と予測の限界について誠実に語る内容になっています。
温暖化の警鐘だけの本、あるいは根拠のない陰謀説だけを並べる本にもう飽き足らない方は、ぜひこの本で、この全人類的問題の根元に切り込んでみてください。知的な興奮が待ってますよ!
いよいよ iPhone 情報整理術の出版まで1週間となりました。でもこの本、実は「iPhone だけ」の使い方ではなくて、iPhone と今回紹介した Dropbox の連携、iPhone とさまざまなウェブサービスの連携といった、「iPhone を中心とした生活の作り方」を書いています。
共著者の佐々木さんと話していて、
iPhone 本というよりも、ライフハック本ですよね。
といわれたくらいです。
発売当初は不調と噂された iPhone ですが、すでに日本だけで 200 万台が利用されているという報告もされています。ますます手のひらのデジタル・オフィス端末として重要性が増してくる iPhone の指南書として利用していただければ幸いです。
▼堀 E. 正岳:
「これからMacを始めたい人」を徹底ガイド。Lifehacking.jp主宰。