仕事であれ個人的なプロジェクトであれ、大きな成果を得たいと思うなら、とるべきアプローチは、「短期間に一気に」ではなく「時間をかけて少しずつ」がおすすめです。
なぜなら、「短期間に一気に」はおのずとリスクが高くなり、それゆえに取りかかる負荷も上がり、結果として難易度が上がってしまうからです。
さらに「一気に」ということは、チャンスが限られるということですから、なおさら。
ギャンブルで一回限りの勝負に手持ちのお金を全額投資するようなものです。
一方「時間をかけて少しずつ」であれば、1回あたりの時間が短くなる代わりに回数を増やすことになるため、リスクを分散することができます。ときどき勝てればOK。さらに、時間が短いために取りかかりやすさもアップします。
少額でもいいので積立貯金をコツコツ続けるイメージです。
場数が増える → 上達が早まる
回数が増えるということは、“打席”に立つ回数が増えるということです。場数を多く踏むことができるので、上達スピードもアップします。
たとえば、資格試験の合格を目指すなら、「まとまった時間のとれる土日に一気に進める」のではなく「平日の昼休みに10分ずつ毎日取り組む」ようにします。
もちろん、論述問題など10分ではキリが悪い場合もありますので、勉強の種類は選びます。
それでも週に一度まとまった時間を取るより、短い時間でも毎日その資格試験に向き合うほうが、早くなじむことができるはずです。
たまにしか会わない人より毎日会う人のほうがより早く親しくなれるのに似ています(社内恋愛や結婚が多いのはそういうことですし)。
資格試験と早く“親しく”なれれば、勉強の敷居も下がり、短い時間でも集中できるようになります。当然、成果も上がるでしょう。
例えば、「半年以内に論文を書き上げる!」というゴールを設定した場合、180日間毎日少しずつ取り組めるように180個のピースに分解することで、180回の場数を踏むことができます。
180回のトレーニングに取り組むことで、その間に技術も磨かれます。グラフでいえば、右肩上がりの曲線を描くことになります。
最初はおぼつかなくても、続けていればどんどん加速していける、ということです。
それでもギャンブルに走りたくなったら…
“打席”に立てるのは今しかない、と考えることです。いや、毎日続けるわけですから、実際には明日も明後日も立てるわけですが、そうなると「今日はいいや。明日からにしよう♪」となりがちです。
いつまでたっても始められません。
そういう意味では、最初だけは誰かと一緒にやってみるのがおすすめです。人と約束をして、場所と時間を決めて一緒に取り組めば、少なくともこの最初の回だけは特別なものになります。「今しかない」感が高まるのです。
そういえば、『スタンフォードの自分を変える教室』という本に以下のような実験が紹介されていました。
イェール大学の研究者たちは学生に脂肪ゼロのヨーグルトと〈ミセス・フィールズ〉のクッキーのどちらかを選ばせました。次の週の実験でも同じふたつの選択肢から選べると聞いた場合、83パーセントの学生はクッキーを選びました。
これに対し、お菓子が出てくる実験は1回限りだと思っていた学生の場合、クッキーを選んだのは57パーセントでした。
また、別の実験で、低俗なエンターテインメント番組と教養性の高いエンターテインメント番組のどちらを見たいかを選択させた場合も、学生たちは同じような反応を示しました(「ためになる教養番組は来週でいいや」)。そして、すぐにもらえる少額の報酬と、少し後になるけれども金額の大きな報酬のどちらかを選ばせた場合も、結果は同様でした(「いまはとにかく現金が必要だから。でも、次回はもっともらえるように、ちゃんと待つぞ」)。
「次回」があるから、自壊し、自戒するはめになるのです。
まとめ
- ゴールを設定したら、それを達成するために毎日できるアクションを1つ決めて、毎日実行する。
- 「今日は忙しいからまとまった時間のとれる土日に一気に取り組もう」という考え方は捨てる。
前者は利幅は薄くとも無理なく続けられる積立貯金であり、
後者は勝てる見込みの薄い一発勝負のギャンブルです。
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