「考える」とは、問いを立てることです。
つまり、有効かつ良質な疑問を、複数個立てることができれば、思考を深めていくことができます。
さて、2014年の「ほぼ日手帳」をパラパラとめくっていたら、4月15日のページに『なにかを考えるための10カ条』を発見しました。ほぼ日刊イトイ新聞に伝わるものらしいです。
考えることは疑問を立てることですから、この10カ条も全て疑問文になっています。
なにかを考えるための10カ条
- そのことの隣りになにがあるか?
- そのことのうしろ(過去)になにがあったか?
- そのことの逆になにがあるか?
- そのことの向かい側になにがあるか?
- そのことの周囲になにがあるか?
- そのことの裏になにがあるか?
- それを発表したら、どういう声が聞こえてくるか?
- そのことでなにか冗談は言えるか?
- その敵はなにか?
- 要するにそれはなにか?
※ほぼ日手帳 日々の言葉4月15日で確認できます。
シンプルな疑問文なので、特に解説は必要ないかとは思いますが、蛇足を承知で書いておきます。
具体例として「手帳」について考えてみましょう。
そのことの隣りになにがあるか?
→一緒に使う道具。たとえばボールペンや付箋など。
そのことのうしろ(過去)になにがあったか?
→一昔前の手帳、あるいはノート。
そのことの逆になにがあるか?
→手帳をいっさい使わない状態。
そのことの向かい側になにがあるか?
→ライバル社の手帳、あるいはPDAやスマートフォン。
そのことの周囲になにがあるか?
→手帳を使う人、手帳を売る人、手帳の使い方を考える人。
そのことの裏になにがあるか?
→手帳を使うことの不便、あるいは使うことで失われるもの。
それを発表したら、どういう声が聞こえてくるか?
→利便性への反響。あるいはそれ以外の感想。
そのことでなにか冗談は言えるか?
→(保留)
その敵はなにか?
→記録は面倒で、価値がないという考え
要するにそれはなにか?
→人生のログ
本当にざっくりとでしたが、思考は広がりました。「手帳」だけに焦点を当てていたら見過ごしていたようなこともあるでしょう。マインドマップで描いてみれば、おおいにノードが伸びたにちがいありません。
ドラッカーの5つの質問
疑問と言えば、ドラッカーがすぐに思い出されます。彼の「5つの質問」は有名ですね。
- われわれのミッションは何か?
- われわれの顧客は誰か?
- 顧客にとっての価値は何か?
- われわれにとっての成果は何か?
- われわれの計画は何か?
これは「当たり前」だと思っていながら、実は全然明確になっていなかったものをあぶり出す効果があります。
「われわれの顧客は誰か?」や「顧客にとっての価値は何か?」という疑問は、たとえば一人の物書きにおいても非常に重要な要素を含んでいて、これに答えられなければ企画や表現に関するジャッジメントを行うことが難しくなります。最悪、その場その場で流されて一貫性のない状態になってしまうでしょう。成長による変化は大切ですが、軸がぶれるのはいただけません。
折に触れて、この質問を自分にぶつけてみるのは自分の軸を確認する意味もありそうです。
自作の問い
こうした問いをストックしておき、何かを「考える」際に引っ張り出して活用するのは、思考力をアップさせる効果があります。
が、それとはまた別に、ある種の思考経路をシンプルな問いの形に落とし込むことも有効だと感じます。言い換えれば、自分で上のような問いを作り出す、ということです。
たとえば、本の企画を考える際は、
- この本の目的は何か?
- この本の読者は誰か?
- この本が読者に与える価値は何か?
- この本の段取りは何か?
- 私はこの本に何を期待するか?
というような問いが有効です。そして、この問いは、新しく本の企画を考える際はいつだって有効です。つまり、使い回せるのです。
こうした「問い」の作成は少し手間ではありますが、プログラマがよく使うコードをサブルーチン化するのと同じような効果が期待できるでしょう。
さいごに
疑問について敏感になってみましょう。
自分が普段どんな疑問を持っているのか。他の人はどんな視点で疑問を立てているのか。
問いに対してエレガントな解答を返すことも大切ですが、そもそも問いがなければ始まらないのですから。
▼今週の一冊:
4月18日発売の、村上春樹さんの新刊。
えっと、原稿書いている今日が発売日です。というか、これ書き終わったら即座に買いに行って、そそくさと読み始める予定です。感想はまた後ほど。
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「アリスの物語」の改稿が終わり、改稿の改稿も終わりました。あとは、細かい修正を残すばかりです。具体的な発売日はまだわかりませんが、5月の頭に初めての小説が発売になりますので、よろしくお願いいたします。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。