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電子書籍に興味があるなら最初に読む1冊

この本を読む直前まで、私は今回ダニエル・カーネマンの電子書籍を紹介するつもりでいたのですが、急遽予定を変更します。倉園さんの新刊を紹介します。

蛇足ですが、今後私はシゴタノ!で、電子書籍で読めない本の紹介はなるべくしないつもりでいます。よほどのことがない限り、電書で読めない本の紹介は控えます。今回紹介する本はもちろんすでにKindleで読むことができます。

▼ソフトカバー

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▼Kindle版

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本書の読み方

本書は見た目どおりの「詳しいマニュアル」であると同時に、見た目以上に電子書籍の読書体験を深めてくれる本でもあります。

しかしそれが問題で、というのも「見た目以上の」部分を求めている読者にとって、いかにも「マニュアル」な外観を持った本書は「ひどく分厚く」見えるからです。「これ全部読まないと、見た目以上の話を拾っていくことができないのか…」と思うだけで積ん読されそうです。

もっと簡単に言えば、もしこれがマニュアル本だとすれば、350ページを読む気にはならないでしょう。しかしそもそも350ページ読む必要はありません。ほとんどの読者の目的は第6章まで(166ページ)読めば達せられます。

それも最初から読む必要はありません。Kindleをお持ちでなければlesson04(p18)から読めばいいでしょうし、この本のたいていの読者はKindleをお持ちでしょうから、第3章のlesson13(p72)から読み出せばいいのです。ちなみにここのレッスンは「端末をわかりやすい名前に変更しよう」です。

lesson13を読んだらすぐに第6章を読んで「ホーム画面を使いやすくカスタマイズ」し、続いて第5章に移って、Kindle最大のメリットである「読書ノートの作り方」を一通りおさえます。最後に第4章に入って「電子書籍を快適に読むための機能をマスター」すれば完璧です。

それ以外のところは一般的なマニュアルと同じように、必要に応じておいおい読んでいけばいいのです。

どうしてPaperwhiteなのか?

そもそも紙の本を買って読むのにすっかり慣れている私達にしてみれば「詳しい説明」などなくても「新しい世紀の新しい読書体験」にどっぷり浸ることができればそれでいい。わけですが、残念ながらKindleもまた言うほど「直感的に扱える」機器ではありません。

そもそも電子書籍端末自体が数多く出回っていますし、そのどれを買っても同じような体験に落ち着くと言えない現状です。本書はもちろんKindleを、その中でもPaperwhiteを「イチオシ」しています。

倉園さんがPaperwhiteをオススメしている理由を一言で言えば「電子書籍のメリットをもっとも享受できるから」です。電子書籍の難しいところは、紙では当然得られていたメリットを損なうことなく、電子書籍ならではのメリットを最大化するところにあります。

紙で得られていたメリットとは、「端末の速度」などがボトルネックにならない点と、「電気など不要」なところです。電子書籍になったとたん紙をめくるのに時間がかかったり、しょっちゅう充電しなければすぐ読めなくなるようでは、すぐ紙の本に戻ってしまいます。もちろん長時間読書すると頭が痛くなったりするのも困ります。

Paperwhiteはおそらく現時点で一番、「紙の本を読んでいればこんなことにはならなかった」と思うことがない端末なのです。

「読書ノート」を再定義する

途中、Kindle最大のメリットである「読書ノートの作り方」が第5章にあると書きました。しかし電子書籍での読書ノートには致命的と言いたくなるほどの欠点があります。私自身ブログでこの問題と憤りをぶつけてみたことがあるのですが、ハイライトや読書メモを作る数には、本によって上限値が定められているのです。

Kindle最大のメリットであるこの機能に制限をかけるのは、なんとしてもやめてほしいと切望します。(p130)

まったく同感です。それにしてもなぜこの機能が「Kindle最大のメリット」なのか、いま一度考えてみましょう。

私自身はそもそも物書きで、ブログに書評もときどき書くので、率直に言ってメモをとったり引用したりするのが「コピー&ペースト」できると楽になるからです。それだけでも十二分のメリットです。Paperwhiteはもはや高くはありませんし。

「ノートを作るからにはそのノートを活かす」という方向で考えるものです。この発想は学者さんや、その他「知的生産術」に携わるような人には自然でしょう。私のように「知的生産術コンプレックス」に取り憑かれている人間には本来以上に電子しおりや電子メモが素晴らしく見えます。

しかし、本業が学者だというならともかく、単に憧憬とコンプレックスだけですと、我に返ったときにはスクラップだとかクリッピングなど面倒くさいと思うだけです。そういうわけで私はだんだんクリッピングなどしたくなくなるくらいには歳をとってきたのですが、それでも気がつくと「ハイライト」などにうつつを抜かしてはしゃいでいるのです。

これはいったいどうしたことか?

倉園さんはこの心理的な病について、うまくまとめてくれています。

メモをとっている最中は「もしかしたら将来、貴重な資料になるかもしれない」などと色気を出しています。でも、いまにしてみれば、そういう「目に見える得」は二次的なもので、ある言葉に感動した瞬間に、それをさらに深く心に刻むための型のようなものだったことがわかりました。
つまり、言葉や文章を記録した時点でその役割は完結していたということです。私にとっての読書メモは、決して将来のためではなく、「今をキャプチャーするため」だったのです。(p144)

これは私が共著『記録するだけでうまくいく』(ディスカヴァー21)で言いたくてうまく言いえなかった事柄でした。倉園さんが言うようにハイライトを引きまっくったり「メモを残し」たとしてもそれは「2度と見ない」ことの方が多いのです。でもハイライトしまくる、のはいったいどうしたことか、と言えばそれは「そうするだけのことがある」とその刹那の自分自身に告げるためです。

とは言え、本当にそれだけであれば、「紙の本でもまったくいいのではないか?」ということになります。なぜなら紙の本でもマーキングはできます。電子書籍で「メモする」方がいいという理由はほとんどないようです。

ですが実際にPaperwhiteでハイライトしてみると、紙の本よりもはるかに「容易である」というメリットが実感されます。まずマーカーなど持っている必要はない。指でできます。次に裏写りしたりしない。本を折らなくても閉じたりもしない。本は常にどんな本でも軽い。全部あわせるとバカにならないメリットです。

さらに付けくわえると、やはりKindleの方が「ハイライトした部分に再会できる確率は飛躍的に高くなる」のです。なぜならガジェットをまたいで、ハイライトやメモが同期されるからです。iPhoneでもiPadでもKindleのアプリが入っていれば、それらの同じ本の同じ場所がマークされています。紙の本は同じ本を2冊買ってもこうはいきません。

最終的には「とにかく簡単にできるんだからハイライトしておけば良い」ということになります。もちろん「上限値」という制限が撤廃されるに越したことはありませんが、ハイライトするハードルが下がり、する意義が上がっていることは間違いありません。

▼編集後記:
佐々木正悟

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新刊です。奇しくもこの本にも取材させていただいた倉園さんのEvernote整理フローが登場します。

とは言え、出版時期が近くなったのはただの偶然です。私達の本は本当はもっとずっと早く出さなければいけなかったのですが、なかなか仕上げるのに手こずって、ついに今になってしまいました。実に2年越しの企画でした。

本書を書いて分かりました。Evernoteについて書くということは、とても大変なことです。書くことがあまりに多すぎるし、たくさん書いているうちに、機能が増えたりインターフェースが大幅に変わったりするからです。

ネズミを捕まえたと思ったら、あちこちで一斉に飛び跳ねだした、といった感じでした。

それでも何とか作り上げました。いろんな人のいろんな使い方を聞き込みながら書いた本です。