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不安をしずめるためのタスク管理

By: Spirit-FireCC BY 2.0


佐々木正悟 子供は基本的に親を頼りにしていますが、同時に多少とも反発しています。

困ったときは確かに親に助けてもらう必要があるのですが、だからといって何もかも親の指図を受けたくはありません。

これは家族の中の話ですが、私達の内部にもこの比喩が適用できます。私達の中には子供っぽい部分と大人っぽい部分があって、私の中の子供な部分は大人を頼りにしていますが、だからといって全部が全部大人の決めたとおりにしたくはないのです。

大人が計画し、子供が実行する

私の中の大人の部分は、何かと「計画」を立てたがります。例えばタスク管理ツール・TaskChute2を使って時間を見積もり、向こう一週間、編集さんとのうち合わせや、原稿の執筆や、日経ウーマンオンラインの連載を計画します。〆切を考慮し、無理のないように時間を割り当て、結果がはかばかしいかどうかのイメージまで想像しなければなりません。

しかし、打ち合わせや取材や執筆を、実際に実行するのは「子供の部分の私」です。全てではないにせよ、半分以上はそうです。「子供の部分の私」は計画や難しいことを考えるのは苦手ですが、単純な繰り返し作業や、直観的に行動するのが得意です。

例えば運転するのは「子供の部分の私」が半分以上を担います。運転中「大人の私」が必要になるのは、ルートを決めたり、危険なことが起こらないように無理を慎んだり、休憩するサービス・エリアを選択することだけです。ハンドリングや車線変更やとっさにブレーキを踏んだりするのは全部「子供の私」なのです。

ここにせめぎ合いがあります。「大人の私」からしてみれば、「子供の私」のやることには一貫性がなく、世話が焼けます。運転中に「眠い」といってみたり、サービス・エリアでお菓子を食べたがったり、やたらとトイレに行きたがったり、おしゃべりに夢中になったりと、余計なことばかりしたがります。「大人の私」にいわせれば「計画通り運転に集中」していれば良いのです。

しかし「子供の私」からすれば、そもそも運転していないくせに「大人の私」は出しゃばりすぎです。トイレに行きたくなるのは当然だし、お腹も空いて当然だし、車線変更ぐらいでいちいち目を光らせないで欲しいものです。「そんなに計画通りに生きていて、人生楽しい?」と反発するのがこの「子供の私」なのです。

「子供の私」だけでは不安と闘えない

しかし「子供の私」には極めて重大な弱点があります。何かうまくいかないことがあると、強烈な不安に襲われるだけで、対処できないのです。そのことをうすうす知っていますから、不安に襲われても対処できないという不安を抱えています。事態が難しそうだと常にそうなります。

「子供の私」はそのときどきの現実に対応し続けているのです。クルマに乗れば運転し、サービスエリアではお菓子を食べ、といった調子です。そのときどきでとっさに最適な行動をとるのですが、最終的にどうなるのかは知りません。その知らないということ自体が不安なのです。

「子供の私」は不安につけ込まれやすいところもあります。というより、サービスというのはこの「子供の私の不安」につけ込みながら対価を得ていくところがあります。「気分が晴れないならこのガムをどうぞ」とか「行き先が分からないならこのマップをどうぞ」とか「人生の先行きが不安ならこちらの占いをどうぞ」といったやり方は、いかにも子供向けのやり方です。

そういった不安に対処するために「大人の私」がいるのですが、「大人の私」は決して全能ではありません。人生を最終的にどうしたらいいかなど、実のところ「大人の私」にも分かってはいません。それどころか、場合によってはどのサービスエリアに寄って、どういうルートを選択すると、目的地まで楽に、早く着けるのかさえ「よく分からない」ケースも多いのです。

「タスク管理」とか「計画」というのは、この「大人の私」を補助するためのものです。「大人の私」は記憶力、想像力、判断力を駆使してどうにか「子供の私」に最後まで行動を完了させたいのですが、「大人の私」とは言え記憶力も想像力も判断力も、そんなにたくさんはないのです。「子供の私よりはまし」といった程度です。

実際、首都高速のマップを完全に記憶できて、渋滞情報から最適ルートを一瞬で判断できるようなら、カーナビなど不要です。できないから、カーナビに補助してもらうのです。タスク管理というものも同じで、これまで判断してきたことや、その結果が芳しかったかどうかを記憶できていて、今後の予定について常に「子供の私」を完全に納得させられるなら、タスク管理など不要です。

しかし私のなかの「大人の私」には、今日やろうとしていることが終わるまでに「子供の私」が「疲れたからもうやめる」とならないようにすら、できません。だからこそTaskchute2を使っているのです。

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