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「終わりのない作業」ほど「小分けにする」

By: José Juan FigueroaCC BY 2.0


佐々木正悟 時間のない人のためにまず結論から。

分けて、何度も同じことを繰り返すことです。

『スピードハックス』(日本実業出版)をはじめ、これまで何度も同じような話をしてきました。「5分だけ取りかかる」「小分けにする」。

結論部だけはあちこちで紹介していただくこともありますが、それがなぜ「スピードハック」なのかはあまり語られません。

とくに経費精算などの「終わりのない作業」ほど「小分けにする」というより「小さいうちに毎日取り組む」べきものです。

そしてこれこそ究極のスピードハックなのです。

なぜなら仕事の大半は実のところ「経費精算」のようなもので「まとめてやろう」とするほど、事態を悪化させ、スピードを損ね、モチベーションを余計に必要とするうえに、スキルがアップしないからです。

一見ムダなように思える「何度もやる」やり方は、一見賢いやり方に見える「まとめてやる」やり方よりも圧倒的にメリットが大きいのです。

ロボットが急激に育つ

まず一番大きなメリットが「ロボット」が急激に育つことです。目をつぶっても車の運転ができるというわけにはいかないでしょうが、運転免許を取る以前の人に比べれば、私程度のドライバーでも運転の達人です。なぜなら「ロボット」が育っているからです。

どうして「ロボット」を育てられたかといえば、何度も何度も、それこそ数え切れないくらい運転したからです。

どんな作業でも、どんな仕事でも、繰り返し回数が相当の回数に上れば、圧倒的なレベルに達します。タッチタイピングが典型的です。

私はたとえば書籍原稿を書くのでも、全く書かない日というのはまずありません。ファイルを開いて、書き出します。時間が全然足りなかったり、気分が全然乗らないときでも、2行くらいは書きます。そしてその日に書いた文章をEvernoteに保存して、終了作業を施します。

この「作業開始」→「作業終了」という一連の行動を繰り返せば繰り返すほど、この作業に関わるロボットがブラッシュアップされ、より「達人」の域に近づけるのです。開始して終わるだけ。その間1分でもいいのです。何度も何度も「それ」を繰り返すほど、「それ」が上手になります。

あらゆることに「それ」は当てはまります。

「再起動」が不要になる

ドイツ語で研究論文を書かなければならない知人に、面白い話を伺いました。

2時間くらいずっとドイツ語で喋っていたら、そのあとでドイツ語の論文を読むのがずっと楽になっていた、というのです。

これこそが「ロボット」の強力な効果です。

「ロボット」は使われれば使われるほど、いわば「待機状態」で待機しているようになります。

パソコンが電源を落とすより、できればサスペンドさせておいた方がすぐに使い出せるのと同じです。

人間の「ロボット」は使われていないと電源が落ちてしまいますので、そうなると「再起動」が面倒になるのです。

つまり繰り返し回数は多いほどいいと言えます。

私が毎日1円単位で家計簿をつけたり、ムダとしか言えないのに原稿ファイルを開いたり、必要がない日でもEvertenoteの整理をするのは、それが労力という意味ではもっとも効率的だからなのです。

まとめてやるとなると、余計な作業と時間とやる気を要する

結論は、以上の逆をやってスピードハックになることはほとんどないということです。

以上の逆とはできるだけまとめてやるというやり方です。

人がまとめてやりたくなるのはもちろんわけがあります。

効率の観点から二度手間を厭うのと、記憶が途切れにくいから一時にやってしまいたいわけです。

それに達成感を実感するためにもまとめてやりたくなります。

しかし他にメリットはほとんどありません。二度手間はすでに述べた理由で厭うべきではありません。

「ロボット」のブラッシュアップという意味ではむしろ二度手間を好むべきです。

「ロボット」の成長など何ほどのものかと思うなら、最初に自転車に乗ろうとした日、運転しようとした日、一本指打法でキーボードを入力していた日、日本語を読めもしなかった頃のことを思い起こしてみましょう。

9×8はいくつですか? それだって「ロボット」が計算してくれるからそんなにすばやく答えが出るのです。

記憶が途切れるというのなら、簡単なタスク管理と記録を補助にするだけで、記憶をつなぐことはできます。

それに「ロボット」が洗練されれば、記憶が途切れることなど問題ではなくなります。

最後に「達成感」ですが、確かに仕事をまとめてやっつけたときには達成感を感じます。

しかし達成感を感じるのは、やる気を多く使っているからです。

時間も気力もより多く、いってみれば無駄に使っているからこそ達成感を感じるのです。

2行しか文章を書かなかった日にはなにも達成感などありません。

それどころか私はほとんどの日に、文章をちょびっとしか書かないので、たいていの日は達成感を感じません。

でもそれだからこそやる気なしに毎日仕事に取りかかることができ、結局のとこそすばやく終わらせることができるのです。