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環境を多少でも改善すれば、やる気のアップに必ずつながる



免疫反応 あなたは鼻風邪をひいている。

問い 免疫反応を全開まで上昇させるべき適切な時期だろうか。それとももっと深刻な事態に備えて資源を節約すべきなのか。

あなたが家族と一緒に家にいて安全で、回復にかける十分な時間があると仮定してもらいたい

—すると、あなたはウィルスに対してもっているすべてを投入することができる。

しかしあなたが外国にいて、身体的なストレスのもとで未知の危険が差し迫っていると仮定してもらいたい

—すると、できるかぎり速やかによくなりたいと考えるあなたにとっては、辻褄があわないように思えるかもしれないが、すべてを考慮すると、反応を現状維持のレベルに保つのがいいということになるだろう。(p.232)

» 喪失と獲得―進化心理学から見た心と体


佐々木正悟 私はこの一節に強い印象を抱きました。やる気についても全く同じことが言えるはずだ。

だから、岡野純さんの『やる気クエスト』のもとになるような発想を抱くに至ったのです。



おそらく脳は、全体の状況を見て、必要な資源を投入するのか否かを判断できるのです。私自身、留学先のカンザスシティから日本に戻るたびに熱が出るのはどうしてなのか、不快感とともにもどかしく思っていました。

せっかく日本に戻って来ているのに、やりたいことはたくさんあるのに。

もちろん、長旅による疲れや、気候の変動が原因でなかったとは思いませんが、「戻ってくるたび」ということが無視できません。「ホッとして気が抜ける」という表現が、しばしば病気どころか「死にもつながる」と思っている人がいるのも事実でしょう。

プロ野球選手などもよく言います。たとえば投手が痛烈なピッチャーライナーなどを膝などにぶつけられても「試合が終わるまでは、あまり痛くない」と。

上記引用したニコラス・ハンフリーは「痛み」についてもきちんと述べています。痛みを感じることにメリットがあるなら、脳は痛みを知らせる信号を送るが、そうでないならその信号を抑制する、と。

私はよく「やる気が出るかどうかは、おおむね環境によって決まる」という意味のことを述べますが、あまり反応が良くありません。環境次第でやる気になったりならなかったりするような「依存的体質の自分」ではありたくない、と、人は思うからです。

しかし、環境を無視してやる気になったりすれば、アメリカで医療費や保険のことに無知なのに、免疫反応全開にして、あとで10万円もの医療費を負担する羽目になったり、試合後、足の骨が折れているのに痛みの信号を抑制したあげく、二度と歩けなくなったりするようなことに、なりかねないのです。

やる気を出すには、内的環境と外的環境の両方を整える必要がある

まず、内的環境のほうを考えましょう。

完全に寝不足であったり、熱が40度もあるのに、いつやってもいいような仕事を進める気持ちが出てくるはずがありません。

脳は、認知的であれ肉体的であれ、やる気を出すということを一種の「コスト」ととらえているからです。

一時的に痛みを止めたり、「頑張った」りすることも可能です。しかし、その報いがあとで必ずやってくるのですから、「限度を超える」ことは必要に応じて最小限度であるべきなのです(こういう意味で私には「脳をだます」という表現が無意味なものに思えます。本当に「脳がだまされて」いるなら、その脳の産物以外の何物でもない「私」も一緒にだまされているはずであり、そうでないなら脳は決してだまされなどしないでしょう)。

次に外的な環境ですが、やる気を出すことがコストであるなら、ある環境下でやる気を出すことが、どのくらいメリット(またはデメリット)のあることなのかによって、変動するのが自然です。

外的、内的どちらの環境についても言えるのは、ニコラス・ハンフリーも述べているとおり「次になにが起こるかについて、どういう予測が成り立つか」によってほとんど決定されます。

やる気を出すことが良い結果をもたらすことが100%明らかであるなら、やる気は出るでしょう。

しかし現実がそれほどシンプルなことは、あまりありません。この%は環境によって変動します。100%から遠のくほどやる気は出にくくなり、逆に、やる気を出しても100%ムダになるなら、やる気は出なくなるでしょう。

あくまで一般論として、「恵まれている」ということは、やる気を出すために大切なことなのです。同僚や上司に恵まれていたり、天候に恵まれていたり、健康に恵まれているなら、そこでエネルギーを「投入してしまった」としても、次に致命的なことは起こらないだろうと見当をつけられるからです。だからエネルギーを投入するのに前向きになれる。ということはやる気になれるということです。

逆に環境に恵まれていないか未知であるとなると、脳、またはあなた自身は、エネルギー投入に前のめりになれる理由を失うわけです。つまりやる気になれないわけです。

睡眠不足で、しかもいまの仕事を片付けても、また気まぐれな上司がいまやる必要があるとも思えない仕事を、何の説明もなく押しつけてくる。それをこなして病気にでもなっては本当にどうしようもなくなる。当分休んでいられるほど経済的に恵まれてもいない。

そういう環境下で「いまの仕事に全力で取り組む」のが合理的な戦略であるとは、とても考えられません。環境要因のせいでやる気が出ないとは、こういうことなのです。

» やる気クエスト公式サイト

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▼編集後記:
佐々木正悟



しかし、勤めている会社によっては、「環境に恵まれる」ことなど絶対不可能である、ということも残念ながらあり得るでしょう。

そういう環境下で「今の仕事に全力を投入する」のは、すでに書いたとおり合理的ではありません。この場合「やる気は出ないのに、全力を尽くす」という支離滅裂なことになってしまいます。

そういう中での戦略について書いたのが、以下の本です。

» すごい手抜き – 今よりゆるくはたらいて、今より評価される30の仕事術 -[Kindle版]


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