どうしても手間と時間がかかりすぎる仕事があったら、徹底的に合理化してみるのも1つの考え方です。
考えつくようなことはとっくに考えている。効率化なんか、とっくにやっている。
と、私達は何かをする前から意外と考えがちです。
でも私達がやっているのは概して「常識的なやり方なら、とっくにやっている」というだけなのです。
常識的なやり方で手間と時間がかかりすぎるなら、非常識なほど効率化してみるということを試す手があるのです。
最近読んだ面白い本に、ホットドッグの早食い競争に関する逸話がありました。
なぜか国際的なホットドッグの早食い競争で、日本人が強いそうなのですが、そんなことは本を読むまでちっとも知りませんでした。
1996年以降、1999年を除いて、2006年までの優勝者は全て日本人となっている。2000年には上位3位を日本人(新井和響、藤田操、赤阪尊子)が独占した。
パッと見それほど「大柄」でもなく、大食そうに見えない日本人がどうしてこんな大会で強いのか、興味をひかれます。常識的にはレスラーのように巨漢のアメリカ人相手に(何しろ早食いの国際大会に出るくらいの人たちです)早食い競争して、ふつうの人が勝てるとは思わないでしょう。
2000年秋のこと、のちに「コービー」の名で呼ばれるようになる若者が、三重県の四日市大学で経済学を学んでいた。彼は恋人のクミと暮らしていたが、電気代が払えなくてろうそくで明かりをとっていた。二人ともあまり裕福な家の出ではなく、コービーの父は寺に勤め、寺の歴史を案内する仕事をしていた。二人は家賃にも事欠くありさまだった。
そんな折、優勝者に50万円の賞金を出す大会があると聞きつけたクミが、コービーに内緒で応募ハガキを送った。それはテレビの大食い選手権だった。
それは一見、とても名案には思えなかった。コービーはそもそも全然大食いじゃなかった。きゃしゃな体つきで身長は173センチほど。
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「コービー」(小林尊)の驚異は、説明よりも記録に表れています。
2001年、新井和響の世界記録の倍の50本を完食、自己記録を更新した新井を抑えて優勝。
その際、プラカードの数字では小林が食べた本数に足りなくなり、手書きノートの数字が掲げられた。
私達が考えたいのは「早食い」ではなく仕事の高速化ですが、それでも「コービー」がどうやって彼のタスクを高速化できたのかには興味がわきます。
彼もまた、少なくとも最初は、他の人がどうやっているのかを知ろうとしたようです。初めて経験することをおっかなびっくりやる人はみんな、他人のやり方を参考にしようとします。
コニーアイランドの出場者がみんな似たような戦略をとっていることに、コバヤシは気がついた。というか、そもそも戦略と呼べるような代物でもない。言ってみれば、普通の人が裏庭のバーベキューでホットドッグを食べるやり方を、ただ早回ししたようなものだ。ホットドッグを手にとって、ソーセージとパンを一緒くたに口に突っ込み、端から噛み砕いていって、水と一緒に流し込む。
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つまり「常識的なやり方」です。とにかく旺盛な食欲でもって急いでたくさんがんばって、食べる。私達が進まない仕事を前にしてやりがちなのもけっこうこんなものであり、にもかかわらず「できることなら全部、やっている」と言いがちなのです。
もっとうまい食べ方があるんじゃないのかと、コバヤシは考えた。
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彼は「考えた」わけです。
たとえばホットドッグを端から食べろだなんて、ルールのどこにも書いていない。そこで単純な実験から始めた。食べる前にソーセージとパンを半分に割ってみたらどうだろう? こうすると、噛んだり呑み込んだりする方法に幅が出たし、口でやっていた仕事の一部を手に任せられてラクになった。
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はっきり言ってこれは「考える」ことによって導き出される「結論」というようなものではない気がします。この程度のことなら、誰でも考えつきそうです。でも誰も考えていなかったわけです。
小林はこのようにいろいろ推論しては実験し、試行錯誤を繰り返すうちに、まるでマシンのようにホットドッグを「処理」できるようになったわけです。そして、国際大会のレコードを倍の数字で塗り替えるに至ったわけです。
仕事についてもこれと同じような可能性は、そこら辺に転がっているにちがいありません。
何もすべての仕事について、マシンのように効率的に処理するのがいいとは思えませんが、苦手な、無駄に時間がかかっているように思える仕事を「半分に割って」みたり、「水をつけて」みたりするくらいは、検討する価値があるはずです。
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