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ビジネス書の洪水から本当に役立つ本だけを選び抜く「読書ハックス」

READING HACKS!読書ハック!―超アウトプット生産のための「読む」技術と習慣
原尻 淳一

東洋経済新報社 2008-10
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今、ビジネス書のコーナーをのぞくと、大きな書店さんでは「何ごと?」と思ってしまうほど本の山です。装丁もおしゃれで、やや扇情的なものもありますが、いかにも「今、役に立ちそう」なタイトルが並んでいます。うっかりしていると、お金がいくらあっても足りなくなってしまいそうですし、本に相当額をつぎ込める人でも、時間がいくらあっても足りなくなりそうなことは、一目見ただけで明らかです。

こうした状況にあって、「速読術」を学びたいと思うのは、自然の心理でしょう。それも1つの方法だと思いますが、もう1つ、「選書する」という方法があるはずです。これは方法と言うほどのことはなく、誰しもが当然そう考える、ありきたりな発想に過ぎません。扱うものが多すぎるなら、処理速度を速くするか、扱うものを減らすのか、そう考えるはずです。

「選書する」というオプションを選択する際、本をよく読む人だと気になるのが、「一通り読まずして、読む価値があるかどうかを判断できるだろうか?」という点でしょう。原尻淳一さんの『READING HACKS!』は、この点に挑戦しています。

1.知的興奮を演出する

これは原尻さん独特の表現で、読書のモチベーションを高く保つということです。そのきわめて王道的なやり方として、「知的興奮を生活の中にデザインしてしまおう」と提案しています。『READING HACKS!』で進められている方法としては、「著者と直接話をする」ことです。ネットを介してというのが現実的でしょう。

こういった知的興奮をデザインするためには、そもそも「知的興奮」が得られるような本を読んでいくことが必要です。速読であれ、スロー・リーディングであれ、本を読んで知的に興奮しなければ、知的興奮が生活に組み込まれていくはずがありません。著者と話をしたくもならないでしょう。

なるべく自分にとって役に立つ本だけを買って読みたいと思うのは当然です。ただこれを実現するためには、そうでない本は直感的に排する。途中まで読んでもやめる。とりあえず読んでおこうなどと考えない。など、自然にわき上がってくる意識が重要になります。そういう意識が自然とわいてくるには、知的興奮が得られるような本だけを読むようにするべきです。そうすればそれが、当然の基準となるからです。

2.すぐ読む

買っても本をすぐに読まないと、買って満足するクセが付きます。買って満足するのも、個人的に悪いことではないと思いますが、厳しい予算の中から、あえて本代を捻出するのであれば、買った本は読みたいところ。それに、読んで「失敗した」と痛感する体験を経ないと、なかなか「選書する」意識と眼力が高められません。

また、これは購買行動の心理なのですが、書店で良く見えた本でも、自宅に持ち帰ってみると、輝きが失われてしまうこともしばしばです。ですがこれはいずれにしても、外見で本を判断している段階です。あふれる情報、あふれる書籍から、必要なものを選別するという志は、そもそも情報過多に対するものです。デザインの好みだけで本を買うクセは、情報過多に与しないという立場からいえば、抜け出してしまいたいものです。

原尻さんは「すぐ読む」ハックとして、本を自宅で読むな、書店最寄りの喫茶で読むようにせよ、といいます。これはいい方法だと思います。本を購入する際に、衝動がものを言うことは決して珍しくありません。その衝動さめやらぬうちに本を読み切ってしまえば、つんどくが増えていくという残念な状況から卒業できるでしょう。

3.読書の検索技術を高める

まず方法として、Googleブック検索を使うこと。あるいは、「書評・ブックレビュー検索エンジン」を使うこと。こうするのは、できるだけたくさんの書評に目を通してから買うことが目的です。原尻さんはamazon検索レビューを元に、反射的に本を買った、ご自身の失敗を糧としてこうしたハックに至ったようです。

amazonのレビューでもかまわないように思いますが、問題はamazonのレビューにあるのではなく、その数が不十分な場合、レビュー内容に信頼がおけないことが問題なのです。信頼できないレビューを信頼して本を買ってしまうと、結果として「外れ」を引くことになります。ここのハックスは単純なのです。ブック検索で中身をのぞいたり、たくさんのレビューを読み、冷静に「選書せよ」というだけの話です。

選書それ自体がそこまで難しいわけではないのです。難しいのは、あふれかえる本があって、限られた時間と、限られたお金をそこに注入しつつ、自分の期待しているだけの成果を得ることです。しかも原尻さんが指摘しているとおり、期待は煽られて肥大化しつつあります。そうなってくると、誰であっても、狙った標的を射ることが難しくなってしまうでしょう。

 多くの読書術の本は、「ケチになるな! 本はたくさん買え!」とけしかけています。しかし、サラリーマンの財政はこんな厳しい状況ですから、現実的にはたくさん買えないのが実情でしょう。この現状を踏まえて重要なのは、本に対する「選択眼」を高め、購入時の納得の確率を高めることだと言えます。(p54)

 
 したがって本書では、オンラインブックスよりも、リアル書店での購入を勧め、それに関するハックスが多く紹介されているわけです。ガンガン買って、ガンガン読んで、その結果取捨選択する、というのではなく、まず取捨選択し、限られた支出の中から良書を選び出し、それを確実に読んでいこう、というのが筆者のスタイルだというわけです。